無雪期登山 2015年10月22日
奥秩父・御岳昇仙峡
仙娥滝上から覚円峰頂上往復/登山
昇仙峡グリーンライン市営滝上駐車場〜昇仙峡渓谷道〜覚円峰頂稜〜覚円峰頂上

僧侶覚円が頂上で修行したと伝えられる覚円峰。数回のルート探索と地区住民への聞き取りで覚円峰に登山道が存在する 事が確認できた。登山記録やネット上に情報がないことから、数十年は人が立ち入っていないようである。事前探索と貴重な 体験談を手がかりに、あとは自分の足で踏査するだけである。結果 は、、、驚くべきものであった。

■往路交通 甲府〜県道7号〜和田峠〜県道7号(昇仙峡グリーンライン)〜滝上駐車場
■山域 奥秩父、山梨
■メンバー 単独
■天候 晴れ

8:37 市営滝上駐車場発。足前はステルスラバーの万能靴。登山道は朽ちているからピッケルを持って出る。今日は覚円 峰の高度差しかあがらない。


8:42 静観橋の手前から望む覚円峰。渓谷道から見れば巨大なオブジェもここからだと小さく見える。土産物店街は営業前 で通行人はゼロ。


岩壁の基部を伝って


8:49 花崗岩のスラブに錆びたボルトラダーが目立つ。かつての人工登攀のゲレンデのようだ。


8:52 沢地形となり凹角の下を通過する。この岩壁帯は弥三郎岳の尾根沿いに伸びていてルート探索時にトラバースをブ ロックされた。岩は渓谷側の尾根へも派生しているが、そのミックス壁に登山道らしきが確認される。見た目がイヤらしい。


下は渓谷道、この先落石厳禁


8:57 錆び切った道標。ここから前半の核心。


土、岩ミックスをジグで上へ。バンド状に足幅程度の登山道が存在するが土で斜面化していてピッケルで足場を切りながら進 む。下からでは登山道がある様にはとても見えない。上部の岩に赤ペンキの文字とフィックスロープがある。右手のVはハシ ゴの残骸。落石誘発厳重注意


9:13 ペンキのある岩を乗り越えたところ。岩は被っているが首くらいの高さ。古過ぎるフィックスロープは使わない。


9:14 すぐに尾根を巻く、このあたりは穏やかな地形。


登山道の痕跡、錆びた針金。


9:16 旧羅漢寺周辺に点在しているのと同じ炭焼き窯跡?を通過する。こんな場所で効率よく炭の製造と搬送が出来てい たのだろうか。


大きな沢を横切る。下は渓谷道。


9:31 沢渡って先のミックス壁のジグザグ登行中。ピッケルが活躍する。ここを登り終えるまで落石厳禁


9:33 再び尾根巻き上げ。

尾根を巻き上げると三度目の沢。今度は横断せずに(出来ない)上へ向かう。後半の核心。下は荒川で渓谷道への配慮は 要らない。

9:37 岩溝の底に沿う右の急斜面を直線的に上へ。土壁のステップカットは延々で辛いが下り用にも必要だ。頂稜への最 後の登りになる。唯一の赤い風化したビニール紐を発見。


9:59 鞍部に登りあげる。陰鬱な沢から開放されるが妙な緊張感が漂う。右手は羅漢寺方向だが踏み跡はなさそう?


10:00 頂稜を進むと小岩峰の頭に出る。


背後に弥三郎岳。岩頭は数畳の広さ。


10:07 小岩峰は戻って北側を巻く。


10:11 ハングする岩の下を巻く。覚円峰岩頭下のくびれかと思ったが違った。

頂稜から覚円峰
10:15 前方に段差のある大きな岩峰が見える、覚円峰らしい。岩頭下の数畳の平坦部も確認できる。周りはどこも垂直に 落ち込んでいるが28mm相当の画角では入りきらない。


10:18 覚円峰手前の痩せた個所。幅1.5mくらい ・ ・

虚空に突き出る巨大な岩、、
段差は左側がズレさがって生成したようだ。境界に隙間が見 える。

> 覚円峰頂上拡大
岩に刻まれた階段を登れば
クリック拡大 同高度の弥三郎岳仙ヶ滝上登山道からの写 真(10月15日撮影)

覚円峰頂上は20畳敷き
10:20 覚円峰頂上着。天空の座禅場。展望は十分過ぎて恐ろしい。頂頭部は平坦で広さは畳20帖分くらい、5〜10度位 の傾斜がある。

覚円峰頂上 > 覚円峰頂上俯瞰
東側に一段低い岩峰は端に近寄らないと見えない。先に深 いギャップがある。
クリック拡大 滝上登山道からの俯瞰写真。割れている岩頭 部(10月18日撮影)


岩頭にある加工の跡と思われる個所。頂上はやや傾いている為、水平に削り、何かを設置した跡のように見える。見える範 囲に文字などの打刻、設置物等はなかった。埋め込みボルトなどクライミング関係の残置物もなかった。

覚円峰頂上から弥三郎岳
西〜北側の景色。弥三郎岳東峰に仙ヶ滝に向かう尾根。


頂稜にはいくつか小岩峰がある。

覚円峰頂上からの下り
10:23 頂上を堪能したら帰ります。階段は下の岩が大きいので思っていたほど怖くない。滑ったり転んだりは厳禁。

覚円峰頂上段差の階段
地衣類がきれいに着いて何十年も手付かずでいたらしい。鎖の支点の穴、アイゼンの跡などもない。専門家でないから言い 切れないが、打刻跡の風化の程度(花崗岩の粒子落ち)から覚円の時代に彫られたとしてもおかしくない。


10:41 帰りのくびれ岩峰


帰りのトラバースバンド。錆びた針金。


11:02 鞍部に帰着。ここから弥三郎岳へ尾根を空身で偵察に上がろうとするが、標高差が大きくキリがないので止めた。 この登りは尾根上に岩が出てくるし、探索では稜線直下にスラブ帯を確認している。


岩溝脇急斜面、ピッケルを支えにバックステップで急降下。


ミックス壁の電光下り中。登りのステップでルーファイと足場の確保が出来て楽に下れる。 


渓谷道に近づく。下は仙ヶ滝の観瀑台と思われる。(望遠)

11:39 帰りのフィックスロープ設置個所。素手でいけそうだが、こういうところでやられると戒めて面倒がらずにロープを出 す。


木のハシゴの残骸。錆びた針金。


11:48 帰りの凹角下。沢を渡れば緊張から解放される。ここまで落石厳重注意。

静観橋を渡って弥三郎岳と覚円峰を振り返る。


12:03 ご帰還。

*)本コースの下半は下に渓谷道(遊歩道)があり落石を起こすと大事故になる。安易な入山を抑制する為、登山道起点の写 真、説明は掲載していない。現状ではバリ経験者以外は立ち入ってはいけないコースである。

後記)
 登山道は斜面化しており、最近人が歩いた痕跡(足跡、枝折れ、マーキング、コケ、岩の削れなど)が一切なく、長きにわた り人跡未踏であったらしい。
 覚円峰岩頭の広さは祐に20畳敷き、人により見る目が違うとしても”数畳”というのはあり得ない。
 修験道を後世で登山道としたのかは出展や伝承を見ないので何も言えない。江戸期においても(岩頭の階段有りとして)踏 み跡やハシゴの補助、カギつきの金剛杖のようなものがあれば登れていただろう。旧羅漢寺が起点なら弥三郎岳山頂から ヶ滝上登山道を使い、往復でも6〜7時間の行程である。
 県内有数の観光地の中心部にありながら、観光客が見上げるその先に、どこにも記録や報告のない登山道が隠れていた ことは大きな驚きである。


DATA)
山域 奥秩父
所在地 山梨県
日時 2015年10月22日
メンバー 単独
主要装備 20Lザック、キャラバン大峰(沢靴)、30m補助ザイル、シュリンゲ、半袖ポロ、ピッケル45cm、スリーブ、長 ズボン、雨具上下、長袖下着、0.5Lペットボトル(水筒)、ヘッドランプ、エスケープヴィヴィ、カメラ、GPS
天候 晴れ
コース
県道7号(滝上)市営駐車場〜昇仙峡渓谷道仙ヶ滝上〜覚円峰頂稜〜覚円峰〜往路下山

所要時間)
登り(駐車場〜覚円峰頂上)=2:43
下り(覚円峰頂上〜駐車場)=1:40

コース概要)
登山コース

GPSによるトラッキング。