二人で一緒に


 士官学校に通うその男には、前々から気になっている学友たちがいた。
 一人目は、色白の肌と艶のある長い黒髪が目を引くリンハルトだ。長身だが体つきは華奢で、垂れ気味の大きな目と小さな目鼻が乗った顔立ちは美少女のようである。声もまた愛らしく、身長が高くなければ女の子と間違えてしまうだろう。
 もう一人が、その親友のカスパルだ。硬質な髪と強気そうな顔立ちは、おっとりとした風貌のリンハルトとは真逆の印象を受ける。同年代の少年たちと比べるとかなり小柄ではあるが、鍛え上げられた体が健康的な色気となって彼を彩っていた。
 彼らを組み敷いて、自分のものを咥えさせて、思うがままに泣かせたい。卑猥な言葉を口にさせ、自ら脚を開かせ、自分なしではいられない体にしてしまいたい。それが男の野望だった。
 幸か不幸か、男の野望は当人の予想もしなかった形で叶うこととなる。
 男は数人の生徒たちと共に『闇に蠢くもの』に拉致され、おぞましい人体実験の被検体にされたのだ。そして、『成功例』となった彼はある特殊能力を手に入れた。そう――他人に変身する力である。
 あれから五年が経ち、男はリンハルトとカスパルに会うために、彼らが活動拠点としている修道院へと赴いた。
 ……彼らの敬愛するベレトの姿となって。

 このベレトという元教師とリンハルトが恋仲であることを男は知っていた。だから、男はこの体を使ってうまいことリンハルトを抱いてしまおうと画策したのである。
 本物のベレトは何をしているかと言うと、山賊の討伐やら魔獣の討伐やらでしばらくは戻らないようだった。予定よりも早く、しかも単身での帰還を怪しまれはしたが、伝令を任されたなどの口八丁を使ってなんとかごまかした。
 さて、自然な形でリンハルトと性行為に及ぶにはどうすればいいのか。なにも強姦したいわけではないのだ。むしろ、相手から求められたい。だからこそベレトの体を借りたのである。
 しかし、男がそんな計画を考えるまでもなくそれは起こった。
 ベレトの自室の寝台で男が目を覚ますと、リンハルトが男の性器を咥えていたのである。
「……あ、先生、目が覚めました? 先生のこれ、朝からすごく元気ですね。つい咥えちゃいましたよ」
 リンハルトは男の性器に手を添えたまま上目遣いで微笑む。
 もともと下心があったとはいえ、あまりに自分にとって都合のいい状況が唐突に訪れたため、男は事態が飲み込めずに絶句してしまった。
「久しぶりなんだからもっと喜んでくださいよ。僕だって先生がいないあいだ我慢してたんですから」
 リンハルトは男の性器を扱きながら矢継ぎ早に不満を漏らす。長い髪が口淫をするのに邪魔なのだろう、落ちてきた横髪を指で掬って耳にかけ直している。その仕種が、男にはやけに色っぽく見えた。
「先生のこれ、やっぱりすごく大きいですよね。咥え続けてると顎が外れちゃいそうだ」
 リンハルトは性器の裏筋から先端にかけてゆっくりとなぞるように舐め上げたかと思うと、尿道に舌を差し込んでぐりぐりと動かす。手馴れたその愛撫は、彼にとってこの行為が初めてではないことを物語っていた。
「こっちの準備もしてありますから、すぐにでも入れられますよ。でも、前戯も楽しみたいですよね。ね、先生?」
 リンハルトは悪戯っぽい笑みを浮かべながら、下衣をゆっくりと下ろしてゆく。
 男が士官学校で見たことのあるリンハルトは、いつだって気怠げで何をするのもめんどうといった様子の少年だった。それがまさか、寝台の中ではこんなに積極的になるとは。
 五年間の月日がそうさせたのか、もともとリンハルトが持っていた性質なのか、それともベレトが彼をそうさせるのだろうか。
 リンハルトの艶めかしさに男がごくりと唾を飲み込んだとき、雰囲気を壊すように部屋の外からばたばたと騒がしい声と足音が聞こえてきた。
「リンハルトオオォォ!」
 けたたましい音と共にベレトの自室の扉が勢いよく開かれる。確認するまでもない、この声は間違いなくカスパルのものだ。
「やっぱり先生の部屋にいた!」
 カスパルはずかずかとベレトの自室に入ってくると、大股で男の元に歩み寄ってきた。
 修道院に潜入してからというもの、すれ違いによって男はカスパルの姿を見ていなかった。だから、再会したカスパルの成長した姿に男はひどく衝撃を受けた。
 綺麗だ、とまず思った。
 少年の頃の面影こそ残しているものの、鼻や頬からはすっかり丸みが抜けて精悍な顔立ちになっている。身長もかなり伸びたようで、ベレトとほとんど変わらない高さにカスパルの目線があった。
「お前だけ先生に構ってもらおうなんて卑怯じゃねえか!」
 怒りの形相で叫ぶカスパルに対し、リンハルトは呆れたような表情を見せる。容姿こそかなり大人びたものの、内面はあまり変わっていないようだった。
「空気ってものを読みなよカスパル。せっかくこれからっていうときにさぁ……」
「うっせー! だいたいお前、先生のこと独り占めしすぎなんだよ!」
 カスパルはリンハルトと口論をしながら上着を脱ぎ捨て、下に着ていたぴっちりとした肌着も脱ぎ捨ててしまう。ほどよく筋肉の乗った胸が露になり、男は思わず視線を奪われた。
 リンハルトの華奢な体も魅力的だが、カスパルの健康的で肉感のある体にもそそられるものがある。あの体を好きにしてみたい――そう考えただけで男の下半身に熱が集まった。
「君が混ざっても僕は構わないけどさ……でも、お子様のカスパルにはまだ早いんじゃないの?」
「お……オレだってちんこくらいしゃぶれる!」
 リンハルトの挑発に乗ったカスパルは寝台の横に膝をつくと、男の下半身に顔を埋めて立ち上がった性器をぱくりと咥えた。
「ふ……んぅ……ッ」
 カスパルは亀頭を口いっぱいに頬張り、先端を舌先で刺激しながら頭を上下させる。拙いながらも懸命に奉仕するその姿は男の欲情をさらに掻き立てた。
「まったく、カスパルったら」
 リンハルトは咎めるように言いつつも、その表情は弟を見守るような穏やかなものだった。
 男としてはこのまま続けてほしいところだが、これは「ベレトという青年」として止めるべきなのだろうか――困惑した男がリンハルトに視線を向けると、リンハルトはやわらかな笑みを浮かべた。
「僕、先生のことも大好きですけどカスパルのことも大好きなので……だから、二人一緒に愛してくださいって約束しましたよね?」
 もちろんそんな約束をした覚えは男にはない。
 リンハルトは同性も性愛の対象に含めているようだが、愛情と性欲を注ぐ相手を一人に固定しない質でもあるのかもしれない。帝国の人間らしい自由な価値観というかなんというか、型にはまった恋愛観の持ち主ではないようである。
「カスパル、先っぽばかりじゃだめだよ。ほら、ここも舐めてあげないと……」
 リンハルトはカスパルの横に並んで膝をつくと、男の陰嚢を揉みながら竿の裏側に舌を這わせた。カスパルの拙い口淫とは異なり、リンハルトのそれは手慣れていて的確に快楽を与えてくる。
 男はあっという間に果ててしまいそうになるのを堪えながら、二人がもたらす快感に酔いしれていた。ベレトはいつもこんないい思いをしていたのか――そんな嫉妬と羨望が男の中で入り交じる。
「ふぇんふぇえ、ひもちいーか?」
 カスパルは亀頭を口に含んだまま男を見上げた。
 褒めるように頭を撫でてやるとカスパルは嬉しそうに目を細め、男の性器を喉の奥まで深く飲み込んだ。そして顔を激しく動かし、じゅぽじゅぽといやらしい水音を響かせながら吸い上げる。
「先生、もうイキそうなんですか? 早くないですか? 先生の早漏」
 リンハルトはくすっと笑うと、男の陰嚢をぱくりと口に含んでぬめった舌で転がした。そのまま舌を滑らせていき、戸渡りをつうっとなぞり上げる。
 男は堪らずカスパルの口から性器を引き抜き、二人の顔に向けて精液を吐き出した。粘ついた体液を顔面や前髪に受けてしまった二人の姿に、男の征服欲が満たされてゆく。
「たくさん出ましたね先生。戦闘続きで溜まってたんじゃないんですか?」
 リンハルトは男の放った白濁を指で掬って見せつけるようにそれを舐める。
「出すなら口の中に出せばいいのによ……」
 カスパルのほうはと言うと、不満げに口の端を手の甲で拭っていた。
「カスパル、ここにもついてるよ」
「ん……ありがとな」
 リンハルトはカスパルの顔に付着した精液をぺろぺろと舐め取る。すると、カスパルもそれを真似るようにリンハルトの額や頬に付着した精液を舐め取り始めた。
 まるで子猫同士が毛繕いをしているような愛らしい姿を見せつけられ、出したばかりの男の性器がふたたび硬さを取り戻していく。
「先生のこれ、また大きくなってますね。そろそろ入れますか?」
 それに気づいたリンハルトは寝台に乗り上げると、男の太腿を跨いで自ら後孔を広げてみせた。くぱっと開いた入口から赤い肉が覗く扇情的な光景に、男はたまらず喉を鳴らす。
 「あっちの準備もしてある」という言葉の通りに、リンハルトのそこはすでに解れており、ひくんひくんと疼いて挿入を待っているかのようだった。男のものを舐めて興奮したのか、長身に見合った立派な性器はすでに勃起して天を向いている。
「なんだよリンハルト、ずりぃぞ!」
 カスパルも負けじと寝台に乗り上げ、下着を取り払って秘部を露にした。
 軽く立ち上がったカスパルの性器の奥には、きゅっと締まった肛門が覗いている。いやらしく縦に割れたリンハルトの後孔は異なり、色味の薄いそこはまだ初々しさを感じさせた。
 男は急かす二人を宥めるように尻を撫でる。
 母親譲りだというリンハルトのきめ細やかな肌は、触り心地もなめらかだった。鍛錬を好まない彼は筋肉があまり発達していないため、尻も薄くて掌にすっぽりと収まってしまう。
 対して、筋肉量の多いカスパルの尻には良質な筋肉ならではの弾力があった。力を込めると指が尻の肉に食い込むようなやわらかさがあり、元の形に戻ろうとする筋肉が指を押し上げてくる。
「あっ……先生っ」
 ひとしきり二人の尻を撫でた男は、手を滑らせて後孔に指を差し込む。驚いたような声を出したのはカスパルのほうで、リンハルトは小さく震えてほうっと息を吐いていた。
 リンハルトのそこは苦もなく男の指を咥え込んだ。そればかりか、さらに奥へ誘うように内壁が絡みついてくる。入口の膨らみはぷりぷりとしておいしそうなのに、中はすっかりと蕩けていて男を悦ばせるための穴という感じだ。
 カスパルのそこは、まだきつい。男を受け入れ慣れていないのか、入口は硬く窄まっていて力を込めないと指が入らない。しかも、なんとか先端を挿入しても発達した括約筋がそれを押し出そうとしてくる。
「あ、あぁ……ん、せんせぇっ……」
「あっ……もう、焦らさないでくださいよ……」
 異なる感触を楽しみながら、男は二人の穴を指で執拗に愛撫した。指を体内でぐるりと回したり、数本の指をばらばらに動かしたりするたびに、二人は甲高い声を上げて体をびくつかせる。
「ふ、ぅ……ッ」
 カスパルは男の首に腕を回してぎゅっと抱きつくと、耳元で呻くような声を上げながら肩口に顔を埋めてきた。快感に耐えているのだろう、体は小刻みに震えていて、触れた肌からそれが伝わってくる。
「はあっ、あぁ……」
 後ろだけの刺激では足りなくなったのか、そのうちカスパルは自分の性器を手で扱き始めた。リンハルトも自分の乳首を指先で摘み、くにくにと押し潰すように弄っている。
「ねえ先生、そろそろいいですよね? 僕もう我慢できません」
 リンハルトに急かされて男は二人の後孔から指を引き抜く。そしてリンハルトを寝台へ仰向けに押し倒すと、すらりとした両脚を掴んで大きく開かせた。
 慣らすときに潤滑油をたっぷりと使用したのだろう。リンハルトの後孔を指で軽く開いてやると、奥からとぷりと粘り気のある液体が溢れてくる。
「ああっ……先生っ……!」
 男はすでにやわらかくなっているそこに性器の先端をあてがい、一気に腰を打ち付けた。リンハルトのそこはぐちゅんと濡れた音を立てて口を開き、男の性器を何の抵抗もなく根元まで飲み込んだ。
 いままで何度ベレトと情を交わしているのか、リンハルトのそこはすっかりとベレトの形を覚えており、性急な挿入にも関わらず男の性器をすっぽりと咥えこんでしまう。
「ふふっ、生徒にこんなことしてるなんていけない先生ですね? ……なーんて、いまはもう先生じゃないから関係ないんですけど」
 リンハルトはくすくすと笑いながら男に抱きついて唇を合わせてきた。舌を絡め、唾液を交換する濃厚な口付けを交わしながら、男の手を取って自らの胸へと導く。
 男は導かれるまま平らな胸に手を這わせ、肉付きの薄いそこを揉みしだいた。白い肌の上に浮かぶ薄紅色の突起が妙に艶めかしく、そんな男の視線に気づいたのかリンハルトは口角を上げる。
「先生、僕のおっぱい気持ちいいですか?」
 問いかけに応えるように乳首を強く捻ってやると、リンハルトは「あんっ」と鳴いて悦んだ。先ほど自分でも弄っていたリンハルトの乳首はツンと立ち上がり、充血してぷっくりと膨らんでいる。
 リンハルトの体は後孔も乳首もすっかり開発済みといった様子だ。このベレトという男はいったいどれだけ彼を抱き潰していたのか――そう思うと、男の中に理不尽な嫉妬が込み上げる。それをぶつけるように激しくリンハルトを突き上げた。
「んあっ! あっ、せんせっ、はげしっ……!」
 リンハルトの腰を両手でがっちりと掴み、薄い腹が亀頭の形に膨らむほど奥まで突き入れる。そのまま抽挿を繰り返すと、リンハルトはびくびくと体を痙攣させながら空イキしてしまった。
「リンハルトばっかずりいよ……」
 荒い息をつくリンハルトのそばに、お預け状態にされていたカスパルが近づく。カスパルの性器は可哀想なくらい膨張しており、それでも自慰をするのは我慢していたようだ。
「ほら、カスパル。僕がちゅーしてあげるからいい子で待ってて?」
 リンハルトはあやすようにカスパルの髪を撫でると、カスパルに口付けて軽く唇を吸い上げた。二人はお互いの唇を啄むような口付けを何度か繰り返し、ちゅっちゅっと可愛らしい音を響かせている。
 まだ達していなかった男はその光景を眺めながらふたたび腰を動かし、絶頂の余韻で収縮するリンハルトの中に精液を放った。萎えたそれをリンハルトの中から引き抜くと、入口が名残惜しそうに亀頭に吸い付いてくる。
「先生、約束通りカスパルも可愛がってくださいね?」
 リンハルトはカスパルの脚を抱え上げ、挿入を手助けするように後孔を開かせる。色素の沈殿が少ないそこは経験の浅さを物語っており、容易に挿入はできないだろうと男は察した。
「カスパルはたぶん初めてだと思うから、僕のときみたいに一気に入れちゃだめですよ?」
 リンハルトも同じ考えらしく、ふたたび性器を硬くさせている男に釘を刺す。
「本当は僕がカスパルの初めてを貰いたかったんだけど……カスパルは先生のほうがいいもんね?」
「ふあっ、リンハルト、それ、やめっ……あっ!」
 リンハルトは放置されて閉じてしまったカスパルの穴を指でくちゅくちゅと弄る。白くて細いリンハルトの指がカスパルの後孔を出入りする様子は、自分で行うときとはまた違う視覚的興奮を男にもたらした。
「僕も先生のことは大好きだし、カスパルが先生のほうがいいって言うならそれでいいとは思うんですけど……でも、僕の預かり知らぬところでカスパルが誰かに抱かれるのかと思うと、いくら先生が相手でも嫉妬してしまうんですよね。だから三人一緒のときならいいかなって……ねえ先生?」
 リンハルトはたっぷりと慣らしたカスパルの後孔に二本の指を挿入し、それを左右に広げて赤く熟れた内壁を見せつける。
 リンハルトの理屈は男には理解しがたいものだったが、ベレトとカスパルのことが大好きなのだということはわかった。そして、男はベレトがいつか爆発することを祈った。
 リンハルトに誘われるまま男はカスパルの後孔に先端を潜り込ませる。カスパルは怯えたように腰を引こうとするが、リンハルトに抱えられているため意味をなさなかった。
「あうっ……!」
 男はゆっくりと腰を進めてカスパルの中に自身を埋める。
 拡げられたカスパルの肛門がみちみちと裂けそうな音を立て、健気に男の性器を受け入れてゆく。異物を拒んで抵抗するそこを強引に割り開きながら挿入を続けると、カスパルの額に脂汗が浮かんだ。
「カスパル、先生のおちんちん気持ちいいね?」
「んんっ、ふぁあっ……」
 リンハルトはカスパルの耳を甘噛みしたり、乳首を指で転がしたりして痛みを紛らわせてあげている。リンハルトが膨らんだ乳首を指先で弾くたびに、カスパルの体内がぴくぴくと収縮した。
「うう、あうぅっ……」
 カスパルの中を傷つけないようにゆっくりと性器を引き抜くと、雁が内壁の襞にひっかかって入口が捲れそうになってしまう。これ以上はまずいと判断してもう一度押し込めば、カスパルの口からくぐもった悲鳴が漏れた。
 浅く挿入しては抜き、次はもう少し深く挿入してまた抜く。それを繰り返して徐々に奥まで挿入していった。
「ふうっ、ふうっ……」
 男の性器がすべて収まる頃には、カスパルの顔は涙と涎でぐしゃぐしゃになっていた。リンハルトはそんなカスパルの頬を優しく撫で、「よくがんばったね」と微笑みかける。
「じゃあ、僕はこっちを可愛がってあげるから」
 リンハルトはすっかりと萎えてしまったカスパルの性器を片手で握り、亀頭を親指の腹でぐりぐりと擦り始めた。
「やっ、やだっ、そこ、やめろよぉ……!」
「どうして? カスパルのここ気持ちいいって言ってるよ? ほら、こんなにいやらしい汁を出しちゃって……可愛いね」
「ひゃうんっ!」
 敏感な裏筋を爪で引っ掻かれ、カスパルは悲鳴のような喘ぎを上げた。その愛撫のおかげで後孔の締め付けがゆるんだため、男は隙をついて律動を開始する。
「あっ、あっ、あっ、だめっ……!」
 筋肉質なカスパルは括約筋も発達しているらしく、初めてなことを差し置いても締まりがいい。引き抜くときの抵抗の強さは筆舌に尽くし難く、リンハルトのやわらかな後孔とはまた別の良さがあった。
「あんっ、あっ、やっ、あああっ……!」
「カスパル、すごく可愛いよ」
 リンハルトは姿勢を変え、二人の腹の間で揺れていたカスパルの性器を口に含んだ。舌で亀頭を刺激しながら竿を扱き、空いた手で膨らんだ陰嚢を揉みしだいてやる。
「やっ、りんは、るとっ、も、出るからっ……! はなせって、はなっ……!」
 リンハルトの口内でカスパルの性器がびくびくと震えて限界を訴えた。カスパルは口を離すよう要求するが、リンハルトは口を離すどころかさらに強く吸い上げて絶頂を促す。
「ひあっ……! あ、ああぁっ!」
 カスパルは一際高い声で叫ぶと、そのままリンハルトの喉の奥に精液を放つ。射精に伴う体内の強烈な締め付けに耐えられず、男もまたカスパルの体内に白濁をぶちまけた。
「んんっ……いっぱい出たね」
 リンハルトはうっとりとした表情でカスパルの精液を飲み下す。そのまま尿道に残った精液も吸い取ると、カスパルの頬に軽く口付けをした。
「先生とカスパルがしてるのを見てたら僕もまたやりたくなっちゃった」
 リンハルトはカスパルに跨る形で四つん這いになると、尻を割り開いて男を誘った。リンハルトのそこは物欲しそうに収縮を繰り返し、先ほど男が放った白濁を溢れさせている。
「先生、まだいけますよね? だめならライブをかけてでもやってもらいますが……」
 治癒の魔法を使おうとするリンハルトを制し、男はふたたびリンハルトの中に性器を埋め込んだ。
「ああっ……せんせっ、すご、いっ……」
 二度目ということもあり、男は挿入した直後から遠慮なく腰を打ち付ける。激しい抽挿によって中に出した精液が入口で泡立ち、ぐちゃぐちゃと派手な水音を立てた。
「はあっ……あっ、ううんっ……」
 リンハルトは悩ましい嬌声を上げながら、そそり立った自身の性器をカスパルの性器に擦り付けている。わざわざカスパルを跨ぐという不自由な体勢を選んだのは、どうやらこれが目的だったようだ。
「あっ……先生、僕もうっ……」
 絶頂が近いのか、リンハルトが腰を揺らして更なる刺激をねだってくる。それを察した男はいったん性器を引き抜くと、リンハルトの下でぐったりしていたカスパルの後孔に突き立てた。
「ひゃああっ!?」
 突然の挿入にカスパルは驚きの声をあげ、男の性器をきゅうきゅうと締め付ける。
「せんせ、まって……おれ、まだ……ひいっ!」
 まだ先ほどの絶頂の余韻が抜けていないのだろう。制止しようとする声を気にせず奥を突き上げてやれば、カスパルはひんひんと泣き声のような嬌声を上げた。
 男の目の前では白濁を溢れさせるリンハルトの後孔が揺れている。その光景があまりにも淫靡で、男はカスパルを責め立てながら手でそこをぐぱっと開かせてその眺めを楽しんだ。
 カスパルが達しそうになればリンハルトの中に入れ、リンハルトが達しそうになればまたカスパルの中に入れる。そうやって二人を焦らしながら、異なる反応と穴の感触を楽しんだ。

 数時間後、男はやっと二人――というか主にリンハルト――のおねだりから解放された。
 カスパルはとっくに気を失っていて、そのカスパルをリンハルトが抱き枕のように抱えている。二人の体はお互いの出した精液にまみれ、後孔からは男が放った精液を溢れさせていた。
 明日はどうやって二人を可愛がってやろうか。そう男が画策していると、ふいに部屋の扉が開かれる。
 驚いた男が振り返る間もなく、男の体には剣の刃がめり込んでいた。
 蛇腹のように伸びる独特の形状をしたその剣は、間違いなくこの部屋の主であるベレトの愛剣であった。



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