あい、らしい


 戦を終えてしばらくぶりに修道院へと戻ったリンハルトとカスパルは、酒を持ち寄ってカスパルの私室で雑談にふけっていた。
 昔は生徒たちで溢れていた学生寮は、いまは兵舎として利用されている。カスパルの私室は二階にあるため、一階にあるリンハルトの私室よりはまだ周囲に人が少なく、こうして二人でのんびりしたい場合は自然とここに集まるようになっていた。
「……カスパル、顔が赤いけれど大丈夫かい? 熱、あるんじゃないの」
 会話中にふとカスパルの様子がおかしいことに気がつき、リンハルトは机を挟んだ向かい側にあるその顔を覗き込む。
 カスパルはもともと日焼けによって肌が色付いているため、多少紅潮したところでは変化がわからない。それがいまは明らかに赤くなっていた。
「わかんねえ……だるくはねえんだけど、妙に熱くてよ……」
 カスパルはいつになく覇気のない声で答える。
 カスパルの吐息は熱く、呼吸の間隔も短くなっていた。
 酒に酔っただけなのであれば、呼吸が乱れたりはしないだろう。リンハルトは心配になり、診察のつもりでカスパルの身体に視線を走らせる。
 そこで、彼の身体のある部分が変化していることに気がついた。股間が下衣越しにもわかるほど膨らんでいるのだ。
「なんだ、そういうことか。待ってるから厠で抜いてきなよ」
 心配して損をした、とでも言わんばかりにリンハルトは大きく溜め息をつく。
 リンハルトが女性であったならば張り手のひとつでも飛ぶところなのかもしれないが、そこはまあ男同士だ。
 疲労などで意図せず勃起してしまう場合もあるだろうし、酒に精力剤のような成分が含まれている場合もある。そう考え、原因については問い出さないことにした。
「抜く? 抜くってなにをだよ」
「だから、それをだよ」
 リンハルトはカスパルの股間を指で示す。
 カスパルはその指を目で追い、自分の股間を指していることを確認すると、眉根を寄せて首を傾げた。
「わけわかんねえ冗談はやめろよ」
「いや、冗談じゃなくて……自慰してこいって言ってるんだけど」
 回りくどい言い方ではカスパルには通じない。そう判断したリンハルトは直接的な言葉に言い改めた。
「じい……?」
 カスパルはますます困惑した様子を見せる。
「まさか、知らないわけじゃないよね?」
「いや、ほんとにわからねえ……すまねえリンハルト、めんどうだと思うけど教えてくれよ」
 リンハルトの態度から自慰というものが「常識的な知識である」と察したのだろう。カスパルは眉尻を下げて心底申し訳なさそうにリンハルトに訊ねた。
 わからないことをわからないと素直に言える点や、他人に教えを乞うことを恥だと思わない点はカスパルの美点と言える。
 ……が、さすがにここまで無知だとは思わなかった。よく言えば純粋無垢だが、それで喜ぶのは幼児趣味の輩くらいだろう。
「自慰っていうのは自分の手で性器を慰めることだよ」
「性器を……慰め……? なんで慰めなきゃならねえんだ?」
「うーん……どこから説明すればいいのかな」
 リンハルトはどうしたものかと溜め息をつく。
 カスパルが性的な知識に疎いことは知っていたが、この年齢になってまさか勃起や自慰を知らないとは思わなかった。
 カスパルは同年代の少年たちより発育が遅かったし、ガルグ=マクの戦い以降は実家とも絶縁していたため、誰かからそういった話を聞く機会がなかったのかもしれない。
 とはいえ、知識がなくとも身体が成熟している以上溜まるものは溜まるだろう。いったい、いままでどうやって処理をしてきたのだろうか。
「まず、君のいまの状態が勃起状態ってことはわかるかい? その状態だと集中力が欠如したり、判断力が鈍ったりといろいろ弊害があるんだよ。現にいまも苦しそうだしね。勃起状態は射精すれば収まるから、手で性器を擦って刺激して射精を促すんだ。その行為のことを自慰って言うんだよ」
「なるほど……?」
 カスパルはわかったようなわかっていないような曖昧な表情をしている。たぶん、ほとんどわかっていない。
「よくわかんねえから、手本を見せてくれねえか?」
「ええ……? いやそれはちょっと……というか、自慰は入浴や排泄と同じで人に見せるようなものじゃないんだよ」
「そ、そうなのか? でも、それならなおさらリンハルトにしか聞けねえし……」
 カスパルは心底困ったという様子で、少し高い位置にあるリンハルトの目を見つめてくる。
 カスパルが犬であったならいまごろ耳は縮んで垂れ下がり、尻尾は丸まって股のあいだに挟まっているのだろう。
 そんな姿を想像してしまったせいか、リンハルトの中に「どうにかしてあげなければ」という庇護欲のようなものがふつふつと湧いてきた。
 カスパルも男なのだし、これから先も自慰は必要になる。それに、彼には自分以外に頼れる人間がいないのだ。ここで自分が突き放すわけにはいかない。
 大の男に対してそんな気持ちを抱いてしまうのは、幼なじみの情のせいか、それとも別の感情のせいだろうか。
 なにはともあれ覚悟を決めたリンハルトは大きく深呼吸をした。
「……わかったよ。今日は僕が手伝ってあげるから、次からそれを真似して自分でやるんだよ」
「おう!」
 元気良く返事をするカスパルを見て、リンハルトは再び大きな溜め息をつく。
 めんどうだとは思うものの、この幼なじみのお願いはなぜか受け入れてしまうのが常だった。
「じゃあ、とりあえずそこに座って性器を出してくれないかな」
 リンハルトはカスパルに寝台に座るように指示して自分もその隣に腰を掛けた。
 カスパルは多少ためらう素振りは見せたものの、大人しく言われた通りに下衣を寛げて陰茎を取り出す。
 カスパルの性器は大きさこそそれなりだったが、まだ皮を被っており亀頭の半分以上が隠れている。竿の色もほかの部位の肌とほとんど変わらず、カスパルが性的に未熟であることが見て取れた。
「触るけど、必要なことだから騒がないでよ」
 なんだか幼い少女を言いくるめて強姦に及ぼうとする男のようだな……と、リンハルトは自分が口走った言葉に辟易しつつ、カスパルの性器に手を伸ばす。
「……うわ、これって仮性かな? めんどくさいなぁ」
 ぶつくさと愚痴りながらカスパルの亀頭に触れ、包皮の先端を摘んで下に降ろす。ろくに使用したことがないのだろう、露になったカスパルの亀頭は初々しい桜色をしていた。
「いっ……!」
 痛みを感じたのか、カスパルが小さく声を上げる。
「君、本当にほとんどここを触らないんだね。だから刺激に慣れてなくて痛むんだ。こんなことで痛がってたら本番のとき困るよ」
「本番……?」
「ああもう……今度ゆっくり説明するから、今は僕の言う通りにして」
「お、おう」
 すべてを説明していたらまったく話が進まない。リンハルトはカスパルを強引に納得させたところで、改めてカスパルの性器を掌で包み込んだ。
「ん……っ……ふぅ……ッ……」
 カスパルの陰茎はすでに熱を持ち始めており、少し扱くだけで硬さを増していく。カスパルは目を瞑り、荒くなっていく吐息を抑えようと口元に片手を当てていた。
「気持ちいい?」
「わかん……ねえ……なんか……変な感じだ……くすぐったいみてえで……ぞくぞくする」
 カスパルは頬をますます紅潮させながら答える。
 いまの心境を適切に伝える言葉が見当たらないのだろう。カスパルが紡ぐ言葉は語彙が幼いうえに、呼吸の乱れによって舌っ足らずになっている。
 そんなカスパルに対して、リンハルトは背徳感にも似た高揚感を覚えていた。
 もっといろいろな表情を見たい。いろんな声を聞いてみたい。そんな衝動に駆られ、リンハルトはカスパルの性器の鈴口に軽く爪を立てる。
「あッ!?」
 カスパルは突然走った鋭い快感に身体を大きく震わせた。カスパルの性器がふるっと震え、先端からじわりと透明な液体が滲み出る。
「これが先走りと呼ばれるものだね。これで滑りが良くなって摩擦しやすくなるよ」
 カスパルの初々しい反応にリンハルトの口角はますます上がるが、それを悟られないようあえて淡々と説明をした。
「さきばしり……?」
 カスパルはぼんやりとした様子でリンハルトの言葉を繰り返す。既にだいぶ熱に侵されているようだ。行為のあとまできちんと記憶が残っているのかいささか不安ではある。
「次は竿を扱いてみようか。人によって好みがあるけど、こうやって上下に動かしたり、裏筋を刺激したりするのが一般的かな」
「あっ……! はぁ……っ、くぅ……!」
 親指と人差し指で輪を作って根元から雁首までを往復させれば、カスパルは面白いように反応した。陰茎は既に腹につきそうなほど反り返っており、陰嚢もパンパンに張り詰めている。
「性器と一緒に陰嚢を弄る人もいるけど、これはけっこう好みが分かれるみたいだね。カスパルはどうだい?」
「ひっ……!?」
 陰嚢を下から持ち上げるように揉んでみると、カスパルはビクッと腰を引いた。だが、彼の性器が萎えることはなく、それどころか止めどなく蜜を溢れさせている。
 カスパルは陰嚢を弄られるのは好きなほうなのかもしれない。そう判断したリンハルトは、陰嚢を揉む手はそのままに竿を扱く手をますます激しくしていく。
「う……んぅ……ッ……! はぁ、んっ……」
 カスパルは押し寄せてくる快楽に耐えかねたのか、両手で口を塞ぎ始めた。それでも声が抑えきれないらしく、喘ぎ声が隙間から漏れ出してくる。
 普段の快活な彼からは想像できない姿だった。自分の手で幼なじみが乱れていく様に自身が高揚していくのを感じ、リンハルトは思わず喉を鳴らす。
「やべぇ……なんか……ちんこが熱い……。頭がくらくらしてきた……なあ、こういうときはどうすりゃいいんだ?」
 カスパルは苦しそうに身を捩り、興奮と困惑が入り交じったような表情を浮かべた。性器への直接的な刺激によって射精が近付いているのだろう。
「射精しそうなだけだろうから、そんなに泣きそうな顔しなくてもいいよ」
「なっ……泣いてねぇ……うぁっ!?」
 リンハルトは寝台から降りて床に膝立ちになり、カスパルの性器に顔を近づけて亀頭をぱくりと咥え込んだ。
「な、なにして……!?」
「なにって、口淫だけど。これも知らないのかい?」
 亀頭をねっとりと舐められる感覚にカスパルの腰がびくんと跳ね上がる。舌先で尿道口をつつき、そのままぐりっと押し込むと、カスパルは悲鳴にも似た声を上げた。
「ひっ……! あ、あ……!」
 リンハルトを引き剥がそうとしたのだろう、カスパルの手がリンハルトの後頭部に添えられる。
 しかし、髪をひっぱるわけにはいかないと思い改めたのか、カスパルはすぐに手を離して敷き布を掴み、快感に耐えるような仕草を見せた。
 リンハルトは陰茎を深く飲み込み、喉奥を使ってカスパルの亀頭を刺激する。喉を窄めて先端を粘膜で包み込むと、カスパルはぶるりと腰を震わせてリンハルトの頭を太腿で挟み込んだ。
「やめっ……だめだ、それ、やべえから……!」
 カスパルの制止の声を無視して、リンハルトは性急な愛撫を続けた。
 亀頭を責める舌はそのままに、根元から先端にかけて搾るように手を動かし、陰嚢をやわやわと揉みしだく。
「~~ッ!」
 とどめとばかりに尿道を吸い上げると、カスパルは背中をしならせて声にならない声を上げた。
 それと同時に口の中でカスパルの性器が大きく脈打ち、次の瞬間には苦味のある液体がリンハルトの口腔に流れ込んでくる。
「ん……ぷぁっ……」
 カスパルの射精が終わったのを確認したリンハルトは性器から口を離し、自分の掌に精液を吐き出した。カスパルの精液はかなり濃く、どろどろの白濁がリンハルトの口腔を満たしている。
「うわ、すごく濃いね。量も多いし……本当に溜まってたんだ」
「す、すまねえ! 汚ねえよなそれ……」
 カスパルは慌ててリンハルトに謝ったが、リンハルトは気にしていないというふうに首を横に振った。
「別にいいよ、勝手に口でしたのは僕だし。むしろ、こんなに溜め込んでてよく今まで平気だったね」
 リンハルトは手の甲で口元を拭いながらカスパルの股間に視線を向ける。
 体力旺盛な若者であるカスパルの性器は一度の射精では物足りないらしく、射精直後であるにも関わらず既に半勃ちになっていた。
「まだ足りないよね……ねえ、挿れてみるかい?」
「えっ?」
 唐突な提案にカスパルは驚いた表情を浮かべる。
 リンハルトは寝台に乗り上げ、自らの下衣も脱ぎ捨てて両脚を開いてみせた。カスパルへの口淫によってリンハルトの性器もすっかり硬くなっており、先端からは透明な雫が溢れている。
「ここに君の性器を挿入して、僕の中で摩擦するんだよ」
 リンハルトはぷくっと膨らんだ自分の後孔に指を差し込み、軽く開いて中を見せてやった。
「んっ……潤滑油は持ってきてないけど、まあいけるでしょ」
 カスパルに前戯の知識があるとは思えないため、リンハルトはカスパルの精液を指に絡ませて自分の後孔へと埋めてゆく。
 第二関節まで埋めたあたりで軽く抜き差しをすると、くちゃくちゃと粘着質な音が室内に響いた。
 その光景と音に興奮したのか、カスパルがごくりと唾を飲み込む音がリンハルトの耳にも届く。
「初めてだから最初は痛いかもしれないね。君の性器は刺激に慣れていないようだし……でも、すぐに気持ちよくなるはずだよ」
「え……いや、でもそれはまずいんじゃないのか? こういうのは恋人とやるもんじゃねえの?」
 リンハルトの提案にカスパルは戸惑いの表情を浮かべた。疎いなりに「これは性行為である」「性行為は恋人とするものである」ということは判断できたらしい。
「まあ、一般的にはそういうものだけど……戦場にいれば男同士で処理をすることも少なからずあると思うよ。いい機会だし、慣れておくといいんじゃないかな」
「そ、そういうもんなのか……?」
 カスパルは戸惑いながらも自分の性器を握り、リンハルトに覆い被さって後孔に亀頭を宛がう。そして、誘われるままゆっくりと腰を前に突き出していった。
「痛ッ……」
「大丈夫かい?」
 小さな悲鳴を上げたのはカスパルのほうだった。
 普段は包皮に覆われているカスパルの亀頭は刺激に対して過敏になっており、挿入時の摩擦で痛みを感じるらしい。
「いや、オレは平気だ……リンハルトこそ痛くねぇか?」
「別に……ああいや、ちょっと苦しいかな。でも大丈夫だよ」
 「大したことはない」と言いかけたリンハルトは、そこで思い改めて言葉を正した。
 カスパルに気を使ったつもりだったが、それではまるで「お前の性器が小さい」と言っているように聞こえかねないと気づいたのである。
「ゆっくり動けばそのうち馴染むはずだから……うん、そんな感じ……上手だよ、カスパル」
 リンハルトに促されるままカスパルは慎重に腰を進めていく。
 カスパルの緊張を解すように後頭部を軽く撫でると、安心したのか少しだけ身体の力を抜いたようだ。
「はっ……ふぅ……」
 根元まで完全に埋め込んだところでカスパルはいったん動きを止めた。快感に耐えるように目をきつく瞑り、荒くなった呼吸を整えようとしている。
 リンハルトはそんなカスパルの背中をさすってやりながら、自分の中に埋め込まれた熱の質量を感じていた。
 カスパルの性器はリンハルトの直腸内でどくんどくんと脈打ち、ときおり思い出したかのようにびくりと震えている。
「どう、カスパル?」
「なんか……すげぇ熱い……ちんこ溶けそうだ……」
「はは……君らしい表現だね」
 カスパルは熱に浮かされた様子で、とろんと蕩けた顔をしている。いつもの凛々しい表情とはかけ離れたその姿に、リンハルトは思わず笑みを漏らしてしまった。
「じゃあ、動いてみて。僕のことは気にしなくていいから、好きなようにしていいよ」
「わ、わかった……!」
 カスパルはリンハルトの両脚を抱え込み、意を決したように抽送を始めた。
 奥まで挿入された性器がゆっくりと引き抜かれ、亀頭が抜ける寸前で再び押し込まれる。
 カスパルの動作はたどたどしく、いつになく必死なその様子とも相俟って、まるで少年のような幼さを感じさせた。
「あっ……! んん……!」
 カスパルの性器が動くたびに、結合部からぐちゅぐちゅと卑猥な水音が響く。
 不慣れだからなのか、リンハルトに気を使っているのか、カスパルの動きは緩慢であまり激しくはない。
 しかし、それでもカスパルの性器が前立腺を刺激するたびにリンハルトの口からは甘い声が漏れた。
「んっ……!」
「だ、大丈夫か? やっぱり痛いか……?」
 リンハルトの高い声に驚いたらしく、カスパルが慌てて動きを止める。
 こちらを覗き込むカスパルの表情は不安げで、それが妙に愛らしく見えてリンハルトはまた小さく笑った。
「ああ、ごめんね。別に痛いわけじゃないんだ。むしろ、その逆というか……」
「ぎゃ、逆?」
「つまり、すごく気持ちいいってことだね。だからもっと動いてもいいよ」
「そ、そうなのか……?」
 リンハルトの言葉にカスパルは安堵の息をつき、抽挿を再開する。
 初めは遠慮がちだったカスパルの律動は徐々に激しさを増していった。肌と肌が激しくぶつかり合う乾いた音と、粘液が泡立つ湿った音が室内に響き渡る。
「はぁ、はぁ、リンハルト、すげえ、気持ちいい……」
 カスパルは一心不乱に腰を振り続け、額に玉のような汗を浮かべていた。
 リンハルトはカスパルの額にちゅっと口付け、頬を伝う汗の雫をぺろりと舐め取る。そのまま唇を合わせてもカスパルは嫌がる素振りを見せなかった。
 カスパルの口腔に舌を潜り込ませ、奥で縮こまっている舌を絡め取って吸い上げる。その行為にすら快感を覚えたらしく、リンハルトは体内にある性器が更に膨らむのを感じた。
「僕も気持ちいいよ、カスパル……ねえ、もう出そうなんじゃない?」
 固く尖ったカスパルの乳首を指の腹で転がしながら囁くと、カスパルはびくりと身体を震わせてこくこくと首肯する。
 あどけないその仕草が可愛くて、リンハルトはカスパルの耳元に唇を寄せて甘くねだるように呟いてやった。
「我慢しなくていいよ……ほら、こうやったらもっと気持ちいいでしょ?」
「あ、馬鹿、やべえ、あ、あ、あッ……!」
 膨らんだカスパルの乳首をきゅっと摘み上げ、同時に性器を強く締め付けてやる。するとカスパルは身体を仰け反らせ、掠れた悲鳴を上げながら達した。
 リンハルトの体内でカスパルの性器がびくびくと痙攣する。
 カスパルは何度か腰を動かして射精の余韻に浸っていたが、やがて力尽きたようにリンハルトの上に覆い被さってきた。
「はぁ……はぁ……」
「ん……疲れちゃったかな? 後始末は僕がしておくから、カスパルは寝ちゃってもいいよ」
 背中をぽんぽんと叩いて労ると、カスパルは甘えるようにリンハルトの首筋に顔を埋めて頬を擦り付けてくる。
 あまりの愛らしさにリンハルトはカスパルを襲ってしまいたい衝動に駆られたが、なんとかそれを押さえ込んで筋肉質な身体を優しく摩り続けた。
「……カスパル? 眠っちゃったのかい?」
 数分後、返事の代わりに聞こえてきたのは穏やかな寝息だった。どうやら本当に疲れ果ててしまったらしい。
 戦争が始まってからというもの、カスパルはいつもどこか張り詰めたような雰囲気を纏っており、こうして無防備に眠る姿を見るのは久しぶりだった。
 ヘヴリング家は文官の家系なので戦場で親族と鉢合わせる可能性は低いが、武官であるベルグリーズ家はそうもいかないのだろう。現に、伯父とは既に交戦したと以前話していた。
「おやすみ、カスパル」
 リンハルトはカスパルの頭を撫でながら穏やかに語りかける。
 いつもより幼く見えるその寝顔を眺めながら、リンハルトもまどろみの中に落ちていった。



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