はなびらひらく2


 すっかりと姿が変わった幼なじみを前にして、リンハルトは困惑すると同時に深い興味を抱いていた。
 ぴっちりとした肌着を押し上げる豊満な乳房と、引き締まった腰回り。張りのあるお尻はきゅっと持ち上がっていて、そこから伸びる脚には筋肉と脂肪がほどよく乗っている。
 出るところは出て締まるところは締まった、健康的な色香がある肢体だった。
「うん。とっても魅力的だと思うよ、カスパル」
「いや、魅力のあるなしはどうでもいいんだけどよ……」
 賞賛の言葉を述べるリンハルトとは裏腹に、カスパルは辟易した表情を浮かべる。
 元来は男性であるカスパルがこのような姿になったのはコンスタンツェの魔法が原因だった。彼女自身は「一瞬で髪型を変える魔法」を研究していたようなのだが、何の手違いなのか髪型ではなく性別が変化してしまったのである。
「こんな姿じゃあ、鍛錬しにくくて困るぜ。胸が揺れて邪魔だし、重いんだよなこれ」
 カスパルは苛立たしげに両腕を胸の下で組む。豊満な胸が腕に押されてゆさっと揺れ、その違和感にカスパルは眉間の皺をますます深くした。
「お前はあんま変わらねえな」
「まあ、そうだね」
 女性の体になってしまったのはリンハルトも同じだった。
 とはいえ、もともと肉付きの薄いリンハルトは胸や尻の膨らみも控えめである。その上にゆったりとした法衣を纏っているのだから、着位の状態では肉体的な変化はほとんど見受けられない。
 更には元来の中性的な顔立ちも相俟って、リンハルトの体が女性に変化していることに気づく者は皆無だった。
「それにしても、柔らかそうだよねえカスパルの体。ちょっと触ってみてもいいかな?」
「……お前、女の体にも興味あったんだな」
「カスパルだからだよ」
 臆面もなくそう言ってのけたリンハルトに、カスパルは苦笑して「まあいいけどよ」と肩を竦める。
 そもそもリンハルトは男性にしか性的な興味を抱かないわけではないのだが――どちらにせよ、カスパルだからこそ触れたいと感じるのは確かだった。
「じゃあ、遠慮なく」
 承諾を得たリンハルトは、寝台に腰をかけていたカスパルの横に座ってさっそくその体に手を伸ばす。
「……あ、柔らかいね」
 両の手で触れた豊満な乳房は、想像していた以上に柔らかな弾力を返してきた。薄い布越しに触れたその感触は、若々しい果実のような張りと瑞々しさに溢れている。
「うん、すごく気持ちいいよ」
 リンハルトは感嘆のため息とともに、両手でやわやわと乳房の感触を確かめていく。手からあまるほどの質量を持った乳房に指が深く沈み込み、動かすたびにふにふにと形を変えた。
「はあ……すごいね、これ」
「……そんなにいいもんなのか?」
 うっとりとした声を漏らすリンハルトに、カスパルは好奇心に満ちた瞳を向ける。
 あまり女性の体に感心を示さないカスパルではあるが、楽しそうに乳房を揉むリンハルトの姿に興味が湧いたらしい。
「なあ、お前のも触らせてくれよ」
「僕の? 別に構わないけど、あまりおもしろくないかもしれないよ」
 カスパルにせがまれたリンハルトは法衣を寛げて薄手の中衣だけの姿になる。
 法衣の上からではわからなかった膨らみをカスパルはまじまじと眺め、それからおそるおそるといった様子で手を伸ばした。
「……んっ」
 カスパルの温かい手で包まれる感覚に、リンハルトは思わず鼻にかかった吐息を漏らす。それはいつもの肉刺だらけの硬い掌ではなく、細く柔らかな女性の手だった。
「わっ……結構やわらけえな」
 カスパルは感心したように呟きながら、指を動かして胸の感触を確かめてゆく。
 指先に少し力を入れて揉んだり、下から持ち上げるように揺らしてみたりと、カスパルの手は興味の赴くままリンハルトに触れてきた。ふにゅりとした感触とともに指が乳房へと沈み込み、包み込んだ掌の中で柔らかい膨らみがゆるゆると形を変える。
「ふふっ、くすぐったいね」
 むにゅむにゅと胸を揉みしだかれる感覚にリンハルトは身を捩った。
 二人は互いに乳房を揉み合い、その感触と体温を楽しんだ。そうしているうちにその先への好奇心がむくむくと湧き上がり、興味に促されるまま二人は同時に口を開く。
「なあ」
「ねえ」
 声が重なり、リンハルトとカスパルは顔を見合わせて小さく吹き出した。
「リンハルトから言えよ」
「ええ……? ずるいなあ」
 カスパルに続きを促され、リンハルトは文句を言いながらも再び口を開く。
「じゃあ……もっとすごいことしてみない?」
 リンハルトは中衣の合わせを緩めると、薄手の肌着をずらして胸の膨らみを露出させる。ぷるんと揺れて飛び出した二つの白い膨らみに、カスパルは思わず目を奪われたようだった。
「カスパルの服も脱がせていい?」
「お、おう」
 リンハルトはカスパルが着ていた肌着をたくし上げ、胸を覆っていたさらしも外してしまう。
 カスパルの乳房はなかなかの大きさを誇っているが、自重で垂れ下がることはなく張りのある丸みを形成している。その頂点にある桃色の蕾もツンと上を向き、吸い付きたくなるほど瑞々しい色と形をしていた。
「わ……すごく綺麗だね。下も脱がせていい?」
「……好きにしろよ」
 リンハルトはカスパルを寝台に横たえて下衣の中に手を突っ込み、秘所を覆う薄い布もするりと脱がせてしまう。
 ぴっちりと閉じた花弁が外気に晒され、その刺激によってひくんと震えた。秘所を隠す茂みは薄く柔らかく、豊満な肢体とは裏腹の未熟さがリンハルトを背徳的な気分にさせる。
「やっぱりここも女の子になってるんだね」
 カスパルの恥丘を指先でそろりとなぞり、リンハルトは感嘆のため息を漏らした。剥き出しになった割れ目を指先で軽くつついてみると、ぷにっとした柔らかな弾力が返ってくる。
 リンハルトも法衣と下衣を脱ぎ去り、一糸纏わぬ姿となった。最後に残った薄い布切れを指でずらし、焦らすようにしながら自らも秘部を露にする。カスパルの視線がちらちらとそこに向けられているのを感じ、リンハルトはくすりと小さく笑った。
「いつもと違うからなんだかどきどきするね」
「おう……なんか、変な感じだな」
 柔らかくなった肌や滑らかな肌を堪能するように二人は体を擦り付け合う。お互いの体に触れるのは初めてではないが、女性の体同士での触れ合いは当然ながら未経験だ。
「あ……っ」
 触れ合ったカスパルの肌が熱を帯びてきたのを確かめてから、リンハルトはそっと彼の股間に手を伸ばした。
 しっかりと閉じた割れ目を指で押し開くと、湿った粘膜の感触がする。浅い部分に指を潜り込ませて肉襞を広げれば、くちゅりと粘着質な音がして蜜のような粘液が溢れ出してきた。
「気持ちいい?」
「ん……わからねえ……」
「じゃあ、これは?」
 リンハルトはカスパルの花弁の上にある小さな膨らみを軽く摘む。まだ直接的な愛撫を受けていなかったそこは、しかし触れ合いによって硬さを増しているようだ。
「ひっ……!」
 突然の刺激にカスパルは小さく悲鳴を上げて身を竦ませた。
 リンハルトは指先で肉芽を転がすようにして優しく擦り、ときおりきゅっと強く引っ張ってみる。その度にカスパルの体がびくんと跳ね、蜜壺からはとろりとした愛液が溢れてきた。
「ん……っ、あ……リンハルトぉ……!」
 カスパルはもじもじと太腿を摺り合わせながら切なげな声を漏らす。
 その声に応えるように指先でくりくりと執拗にそこを弄ると、カスパルは耐えられないといった様子でリンハルトの腕をぎゅっと掴んだ。
「気持ちいい?」
「んっ、なんか……ぞわぞわする」
 初めて感じる強い快感に戸惑いながらも、カスパルはリンハルトの問いかけに素直に答える。その表情はすっかり蕩けてしまっていて、瞳の奥は快感への期待に染まっていた。
「カスパルのここ、とろとろになってるね。ねえ、口でしてもいいかな?」
「ん……いいけどよ。変な味がしても知らねえぞ」
 カスパルは恥ずかしそうに視線を泳がせながらも、リンハルトを招くようにおずおずと脚を開く。リンハルトはその間に自分の体を割り込ませ、露わになったカスパルの秘部に顔を近付けた。
「ひゃうっ」
 濡れた花弁をぺろりと舐め上げると、カスパルはそれだけで甲高い声を上げる。
 リンハルトは包皮を被ったままの肉芽を舌先でちろちろと擽ってから、ぷっくりと膨らんだそれを口に含んだ。そのままちゅうっと軽く吸い上げ、舌先で飴玉を転がすように弄ぶ。
「ん……っ、ふ……あぁッ!」
 小さな突起を吸い上げられ、舌先で転がされる感覚にカスパルはびくびくと腰を跳ねさせる。カスパルの秘裂からはとめどなく蜜が溢れ出し、それを舌で掬って飲み下すたびにリンハルトの体の奥にも熱が生まれていった。
「や……っ、あ……んんっ」
 カスパルは太腿でリンハルトの頭を挟み込み、体の奥から湧き上がる未知の感覚に戸惑いの声を上げ続ける。
 それでも抵抗することなく身を任せてくれていることに愛おしさを覚えながら、リンハルトは夢中でカスパルのそこを味わった。
「ふぁっ! あっ、そこ……変だ……っ」
 指先でくにくにとカスパルの肉芽を捏ねながら、襞の裏側を舌でねっとりと舐め上げる。秘裂からは絶え間なく愛液が溢れ出しており、花弁がひくひくと痙攣して限界が近いことを知らせていた。
「や……なんか、くる……!」
 カスパルは未知の感覚に怯えた声を上げながら、リンハルトの頭を掴んだ手に力を込める。
 絶頂が間近であることを悟ったリンハルトは指先に力を込め、充血して敏感になった肉芽を擦りながら舌で膣内を掻き回した。
「ふぁ……あっ、も、無理……っ」
 カスパルが泣きそうな声で限界を訴えた瞬間、リンハルトの舌を押し返すかのように膣穴がきゅっと収縮する。それとほぼ同時にぷしゃっと透明な飛沫が吹き出し、さらさらとした体液がリンハルトの顔に降りかかった。
「うぁっ……はあ、はあ……」
 カスパルは脱力した体を寝台に投げ出して荒く呼吸を繰り返す。
 リンハルトは絶頂でぐったりと脱力したカスパルの体を労わるように太腿を撫でつつ、名残惜しげにひくつくそこから顔を離した。粘ついた体液がリンハルトの口と膣の間で糸を引き、その様子を見たカスパルはかあっと顔を赤くする。
「え……あ、オレ、もしかして漏らし……?」
 失禁してしまったと勘違いしたらしい。カスパルは自分の股間とリンハルトの顔を交互に見つめ、赤く染った顔をますます紅潮させていく。
「違うよ。これは尿じゃなくて潮ってやつだね。気持ちよくなったら出るんだよ」
 リンハルトは安心させるようにカスパルの頬を撫で、寝台の上に横たわった彼の髪をそっと梳いてやった。
「しお……?」
 聞き慣れない単語にカスパルは首を傾げる。
「カスパルも気持ちよくなってくれたんだね、嬉しいな」
 リンハルトは笑みを浮かべ、カスパルの頬を両手で包んでそっと口付けをした。それが心地よかったのか、カスパルは涙の膜に覆われた瞳をそっと閉じる。
「ねえ、僕も一緒に気持ちよくなってもいい?」
 リンハルトはカスパルの脚の間に片脚を割り込ませた。そして自分の恥丘をカスパルのそれに押しつけるようにしながら、熱く濡れた花弁を重ね合わせる。くちゅりと湿った音を立てて二つの花弁が触れ合った瞬間、二人は小さく声を上げた。
「あ……リンハルトの、熱いな……」
「うん……ね、ここを擦り合わせると気持ちいいんだって。試していいかな?」
 カスパルはこくりと首を縦に振ってリンハルトのお願いを受け入れる。
 リンハルトはカスパルの腰を抱くようにして浮かせ、お互いの秘所をぴたりと重ね合わせた。先程の絶頂によって溢れ出した蜜が潤滑油となり、秘裂同士が擦れる度にくちゅくちゅと淫猥な水音が響く。
「あ……これ、気持ちいいね……」
「ん……っ、あぁっ……オレもっ、いいっ……」
 愛液で濡れた粘膜同士が擦れ合う快感に、リンハルトとカスパルは熱い吐息を漏らした。すっかりと充血した肉芽同士が擦れるたびに痺れるような快感が生まれ、もっと強い刺激を求めて二人の腰の動きが激しくなっていく。
「ん……っ、カスパル……っ」
「ふあっ、あ……リンハルトぉ……ッ!」
 お互いの名を呼ぶ声すらも興奮の材料になり、二人は夢中になって秘所を重ね合わせ続けた。溢れ出した蜜によって滑りがよくなり、腰を動かす度にぐちゅぐちゅと粘ついた音が響き渡る。
「リンハルト……おれ、また……っ」
「んっ……いいよ、僕もそろそろだから……」
 カスパルの絶頂が近いことを察したリンハルトは、自身の肉芽をカスパルのそれに押し当てた。そしてそのままぐりぐりと乱暴に押し付け、敏感な裏筋同士が強く擦れ合うように腰を動かす。
「ひゃ……ッ! あっ、なんか……くる……!」
「んっ、あぁっ……! カスパル……!」
 二人は同時に達し、秘部を押しつけ合った状態でびくびくと体を震わせた。密着した花弁からは熱い飛沫が迸り、互いの股間を濡らしてゆく。
「はあ……すごいね、これ……」
「ん……すげえ、よかった……」
 絶頂の余韻に浸りつつ、二人は蕩けた瞳で見つめ合う。そしてどちらからともなく唇を重ねると、再びお互いの体に触れ合った。
 リンハルトはカスパルの乳房を揉みしだき、カスパルもリンハルトの秘所を指先で弄る。絶頂を迎えた後だというのに、二人の体は更なる快感を求めていた。
「リンハルトのここ、硬くなってるな……」
 カスパルはリンハルトの花芯の形を確かめるように指先でなぞる。達したばかりで敏感になっているそこに触れられる感触に、リンハルトは小さく吐息を漏らした。
「んっ……君もね」
 リンハルトもお返しとばかりにカスパルの肉芽を押し潰す。お互いに硬く張り詰めた花芯に触れ合いながら、二人は相手の反応を確かめるように手を動かし続けた。
「んっ、は……なんか、これすげえな……」
「うん……気持ちいいね……」
 敏感な部分への触れ合いで生まれる甘い刺激に、二人は夢中で相手の花芯を刺激し続ける。一度絶頂を味わったことで二人の感度は高まっており、少し触れるだけでも腰が跳ねるほどの快感を生み出していた。
「んぅっ……リンハルト、すげえ濡れてるな」
 カスパルはリンハルトの花弁から溢れ出す蜜を指先で掬い取って弄ぶ。くちゅくちゅと音を立てて弄られるたびに、リンハルトのそこはひくついて新たな蜜を滴らせた。
「ふふ……カスパルだって、ほら……」
 リンハルトはカスパルの耳朶を甘噛みしつつ花弁を割り開き、内側にある粘膜を露にする。初々しい色をした襞は濡れそぼり、ひくひくと物欲しげに震えていた。
 互いの一番感じる部分に刺激を探りながら、二人はお互いの花芽を弄り続ける。その行為はまるで二人でひとつの快感を共有しているような感覚に陥らせ、深い快楽と共に幸福感を呼び起こした。
「あっ……イくっ……!」
「んっ、僕も……」
 びくんと背を仰け反らせ、カスパルとリンハルトは絶頂を迎える。ぷしゃっと勢いよく噴き出した潮が互いの秘部を濡らし合い、二人の脚を伝い落ちて寝台を汚していった。
 長い時間をかけて迎えた絶頂の後、二人はそのまま重なり合ったまま呼吸を整える。少し動くだけで触れ合った肌からじんわりとした快感が広がり、静まるはずの体が再び熱を持つ予兆を感じさせた。
「はあ……すごかったな……」
「うん……僕も、気持ち良かったよ……」
 リンハルトはカスパルの首筋に顔を埋めて深呼吸する。汗ばんだ肌からは甘い匂いが立ち込めていて、その香りを吸い込むだけで下腹部が再び熱を帯びていくのを感じた。
 ――まだ足りない。
 そんな思いが自然と湧き上がるが、流石にこれ以上続けるのは明日に響くだろう。
 そう思い直したリンハルトはカスパルから身を離そうとしたが、腰に回された腕によってそれは阻止されてしまった。
「カスパル?」
「ん……もう少しこうしてようぜ」
 カスパルはリンハルトの体を引き寄せ、脚を絡めて密着してくる。肌と肌が密着する感触に再び興奮を呼び起こされそうになるが、これ以上は歯止めが利かなくなる気がしてリンハルトは躊躇った。
 そんな気持ちを知ってか知らずか、カスパルは更に強く体を押し付けてくる。
「ねえ、カスパル……ちょっと、まずいかも」
「ん?  なんでだよ」
「いや、その……このままだと我慢できなくなりそうで……」
 リンハルトは正直に自分の気持ちを伝える。それを聞いたカスパルは一瞬きょとんとしたが、すぐに笑みを浮かべてリンハルトの頭を抱えるようにして引き寄せた。
「我慢なんかしなくてもいいだろ?  オレはもっとお前とくっついてたいし……」
 そう言ってなおのこと強く体を押し付けてくるものだからたまらない。肌はぴっとりと密着して互いの体温が直接伝わり合い、触れ合う乳首や太腿の感触が快感となって駆け巡る。
「もう、だめだよ……君だって明日は調練があるでしょ? いまは体力も落ちてるんだから、無理をしたら体に障る……」
「もうちょっとだけだって……」
 カスパルはリンハルトの制止も聞かずに再び腰を動かし始めた。蜜に濡れた花弁が擦れ合い、くちゅくちゅと淫らな水音が響く。
 一度絶頂を迎えたことにより感度が増しているリンハルトは、たったそれだけのことで甘い吐息を漏らしてしまった。
「んっ……ふ……もう……」
「へへ……いいだろ?」
 カスパルはリンハルトの顔を覗き込んで悪戯っぽく笑う。
「まったく……」
 リンハルトは観念したように溜息を吐く。
 カスパルが望むのなら、自分だってそれに応えたい。それに自分もまだまだカスパルと触れ合っていたいし、もっと彼の温もりを感じたかった。
「そう、だね……僕も、もっと君に触れたいな」
 リンハルトは微笑みを返すと、自らカスパルに唇を重ねる。
 そうして二人は互いの体温を感じ合いながら、何度も何度も絶頂を迎えたのだった。

 翌朝、リンハルトは寝息を立てるカスパルの隣で目を覚ました。どうやら行為の後そのまま眠ってしまったらしく、服も着ないまま熟睡していたようだ。
「ん……朝か……?」
「おはよう、カスパル」
 眠そうに目を擦るカスパルに微笑みかけると、彼もまた笑顔を浮かべてリンハルトの胸に顔を埋めた。甘えるような仕草が可愛らしくて頭を撫でれば、カスパルは嬉しそうに顔を擦り寄せてくる。
 平時であればカスパルがリンハルトより後に目覚めることはほぼないが、行為の後に限っては寝起きが悪いことが多い。今回も例に漏れず、リンハルトの胸の中でうとうととしている。
「朝飯……食わねえとな……」
 カスパルはもそもそと寝台から這い出ようとするが、すぐに力尽きたように脱力してしまう。どうやらまだ完全には目覚めていないようだ。
「まだ眠いんでしょ? もう少しだけ休んでいこうよ」
「んー……けどよぉ……」
 カスパルは不満げに頬を膨らませながらリンハルトを見上げる。
 眠気のせいでとろんとした眼差しからはいつもの凛々しさが欠片も感じられず、その可愛らしさにリンハルトは思わず笑みを零した。
「調練は昼からだよね? それまで一緒にゆっくりしようよ」
 リンハルトは乳房を押し当てるようにしてカスパルを抱き寄せる。
 カスパルは素直にされるがままに、リンハルトに体を預けてきた。
「ん……そうだな……」
 小さく頷いて瞼を閉じる恋人の髪を優しく撫でると、カスパルは気持ちよさそうに目を細めてリンハルトの胸に顔を埋める。
 程なくして規則正しい寝息が聞こえ始め、リンハルトはゆっくりと彼の体を寝台に横たえた。そして自分もまた毛布を被ると、幸せそうに眠るカスパルの隣で目を閉じた。



 作品一覧に戻る