憲法審査会での改憲策動 - 条文原案作業部会の設置に反対します

2024.01.26  「九条の会」事務局

 第213通常国会が始まりました。昨年末から派閥パーティ券に絡む裏金問題を機とした自民党の腐敗が次々と明るみに出て、また元日に発生した能登半島地震の対応でも志賀原発事故の重大性の隠蔽など岸田自公政権の問題が露呈しています。その中で開かれる今国会は、自公政権の腐敗と問題点を厳しく追及する国会とせねばなりません。ところが、こうした問題から国民の目を逸らし自らの政権の延命を図る思惑も含め、岸田首相は、任期中の改憲強行を目指し今国会で新たな策動を進めようとしています。元日の年頭所感で首相は、「憲法改正」を「重要課題」とし、1月4日の記者会見では、自民党総裁任期中の改憲実現の思いに変わりはなく、条文案の具体化を進め、議論を加速したいと述べました。
 岸田政権に入ってから、未曾有の軍拡強行と並んで改憲策動が活発化しています。2016年の市民と立憲野党との結束の成立以降、その実働を許してこなかった憲法審査会では、2022年には、緊急時の「オンライン国会」開催と憲法56条の「定足数」との関係が論じられ、改憲派は、短期間の審議で「憲法解釈でオンライン国会の開催は可能」との報告書の採決を強行しました。しかし、この論点は「明文改憲」に必ずしもつながりません。
 そこで、改憲派は、2023年には、「緊急事態時の国会議員の任期延長」を主要なテーマに押し出してきました。①大規模な自然災害、②感染症の大規模なまん延、③内乱等の社会秩序の混乱、④外部からの武力攻撃などの場合で、選挙の一体性が害されるほどに衆院・参院の選挙の実施が困難な時に、国会議員の任期を延長するというものです。
 しかし、自然災害や感染症の場合では、国政選挙が全国一斉に不可能となるような状況は想定されません。国民の主権者としての大切な選挙権行使を先送りして、現職議員と政権の「居座り」を許す理由もありません。「緊急事態時の任期延長」の主たる想定は、武力攻撃事態すなわち戦時であり、それは、憲法を戦時対応のものに改変する9条否定の企みです。ロシアによる侵略を受け戒厳令を発したウクライナでは、昨年秋予定の国会議員選挙が、戒厳令解除後まで延期されました。憲法審査会で改憲派の議員たち自身が、これを外国憲法の例として持ち出しており、「任期延長」論のねらいと本質をいみじくも示しています。これを許せば、緊急事態時の政府への権力集中や9条改憲へと行き着くことは明らかです。
 いま衆議院の憲法審査会では、与党筆頭幹事の中谷元議員らが、緊急事態条項や9条への自衛隊の明記についてほぼ合意があるとして、「具体的な条文作成のための機関を設け、条文作成のステージに入る」ことを提案しています。しかし、各会派の意見の違いは決して小さくなく、中谷提案は、「密室」で強引に条文案作りを進めようという危険な企みです。
 こうした企みを許さず、憲法9条の平和主義と議会制民主主義を守るためには、 九条の会をはじめとした国会外の声が、立憲野党の憲法審査会での頑張りを力強く支えることが、是非とも必要です。そのためにも、国会の開会に合わせて、全国各地で、各分野で九条の会の運動を旺盛に強めていきましょう。