(朝日新聞・和歌山 2021.02.09)



戦争体験 映像でつなぐ
和大・木川教授の作品上映

 映像を通して戦争や空襲について理解を深めるイベントが和歌山市西高松1丁目の県立図書館であった。和歌山大学の木川剛志教授(44)が戦争をテーマに制作した映像作品が一般向けに初めて上映され、和歌山大空襲の経験者から小学生まで約60人が参加した。  和歌山のまちを歩き歴史や人情を描くエッセー「ウラマチぶらり」を朝日新聞和歌山版で連載している同大観光学部の木川教授の研究室の主催。「戦争と空襲、そして戦後混乱期のこと」と題した。
 6日のイベントでは、木川教授が制作したドキュメンタリー作品「Yokosuka 1953」が映画祭を除いて初めて上映された。太平洋戦争後、アメリカに養子縁組で渡った日系女性が実の母親を探す姿を追った作品だ。
 このほか、木川教授が七曲市場などを舞台に撮影した「七曲ブルース」や、空襲の様子や被災者のインタビューなどをまとめた映像(和歌山市制作)なども上映された。
 木川教授は戦争をテーマに映像を制作すると新しい学びがあると話す。「親と僕とでも戦争についての認識にギャップがある。僕たちの時代や後世に伝えていきたい」
 参加した和歌山市の小学3年、榎本和香子さん(9)は「戦争で住むところが無くなり、お父さんとお母さんと離ればなれになる子どもがいて、かわいそうだった。いまが幸せなんだとわかった」と話した。
 木川教授は現在、和歌山大空襲を経験した人や戦争孤児から話を聞き、映像に記録する活動を進めている。「映像に残すことで、表情や話す間(ま)も伝えることができ、見た人の追体験につながる。学問的にも重要」と語る。  (西岡矩毅)