(朝日新聞・和歌山 2021.03.05)



「国際女性デー」和歌山市集会 6日に紙芝居リレーなど

 国連が定める国際女性デー(8日)に合わせて平和を訴える「和歌山市集会」が6日午後1時半、和歌山市九番丁の市教育会館である。平和紙芝居を上演したり治安維持法の歴史を振りかえったりし、平和と自由と平等とを考える。
 地域の子どもたちと紙芝居や折り紙をしている「ぽぽんた文庫」の池田光子さん(73)=和歌山市=らが紙芝居をリレー上演する。広島と長崎への原爆を取りあげた「二度と」、ネコが語る「ちっちゃいこえ」、ベトナムの紙芝居「象牙の櫛(くし)」などを予定している。
 池田さんは「おかあさんのうた」を読む。この紙芝居は、1945年7月の海南空襲を生きぬいた田中和子さんの体験がもとになっている。父親を戦死で、母親を病死で失った田中さんは、生後すぐに母親の知人夫婦に引き取られて海南市で暮らしていた。空襲時は3歳。米軍機の爆弾の直撃を受けた防空壕(ごう)の中から、すでに息絶えていた養母に抱かれた姿で見つけられたという。
 20年以上前から「おかあさんのうた」を和歌山弁で演じている池田さんは、子どもの幼心を侵略戦争に動員した「国策紙芝居」を今は平和の道具として読む大切さと、戦争の愚かさを語りかける。
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 治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟県本部会長の鶴田至弘さん(82)=和歌山市=は「治安維持法下での和歌山の女性たちのたたかい」と題して語る。
 1925年にできた治安維持法は、敗戦までの20年間、戦争反対の声を弾圧した。県本部は2007年、県内犠牲者の名簿をまとめた。紀の川市出身の北林トモさんは、米国から帰郷後の41年に検挙された。獄中で発病し、45年2月7日に和歌山刑務所から仮出所した2日後に58歳で死亡。県本部の名簿は「獄死に等しい状況であった」と記す。北林さんら戦時下の女性の抵抗を中心に語るという鶴田さんは「これは昔の話なのか」とも問う。
 治安維持法は当初の目的を逸脱し、拡大解釈・適用を重ねた。当局のさじ加減ひとつで逮捕できる戦時治安体制を構築した。
 鶴田さんは、治安維持法の担い手だった特高官僚らが戦後に政官財の要職に就いていたことや、政府の見解は今なお治安維持法を「適法だった」としていることを説明しつつ、「現在の政治情勢の怖さ」を語る。
 和歌山市集会は資料代200円。(下地毅)