(朝日新聞・和歌山 2022.05.07)



「『戦争起こすな』求め続ける」
和歌山 防衛ジャーナリスト講演

 元東京新聞記者で防衛ジャーナリストの半田滋さんが4月に和歌山市で講演した。「平和憲法を持つ日本の役割」を基底にした語りに、「平和憲法は不安」という質問が会場から出た。
 講演後に参加者の女性が聞いた。「ウクライナをあすは我が身と見ている。平和憲法を持っているから戦争はしないと言っても、理屈が通じない人がトップにいる国が目の前にある。どうしたらいいのか心配だ」
 半田さんの答えは「心配ない」だった。半田さんによると、戦争をするには①意思と②能力とのふたつが欠かせない。①については、平時の日本にミサイルを撃ちこんだり占領したりすることに利点があると考えている周辺国はないし②の軍事力は中国などよりも米国の方がよほど怖いという。
 なぜか。日本にとっての戦争の危機とは特に台湾をめぐる米国と中国の戦争に巻き込まれることだからという。戦争になれば米軍基地が集中としている沖縄の住民は逃げようがない。だから「巻き込まれないためにも日本は各国と連携して『戦争を起こすな』と米国に求めつづけないといけない」――こうしたことを半田さんは質問への答えや講演で説いた。
 「それが日本の役割」なのに政府は逆のことをしているとも指摘した。安倍政権以降、防衛用とはとてもいえない兵器をそろえ、安保関連法を制定し、武器を「爆買い」して自衛隊と米軍の一体化をすすめてきたとし、「異常なほど米軍に傾いて巻きこまれざるをえない状態にある」とも語った。
 今回の講演「敵基地攻撃と日米一体化」は青年法律家協会和歌山支部が主催した。半田さんは、ウクライナに侵攻したプーチン大統領の考え方、中国の近年のふるまい、日米関係をくわしく語った。長年の取材にもとづくものだった。
(下地毅)