(朝日新聞・和歌山 2022.05.26)



武力衝突回避「9条は有効」
一橋大名誉教授 渡辺さんが講演

 憲法の視点から戦争と平和や天皇制について考えてきた渡辺治・一橋大学名誉教授が和歌山市で、「世界平和の危機の中、9条の役割を改めて考える」と題して講演した。
 渡辺さんは、ロシアのウクライナ侵攻を機に活発になっている敵基地攻撃論を「便乗」と断じた。安倍政権から菅政権を経て岸田政権までの10年間もふりかえり、政権ごとにいくつかの違いはあるけれども、憲法9条による制約を取り払って日米軍事同盟を強化してきたと指摘した。
 それから「9条は無力なのか」と問いかけた。力に対抗する力を持たなければ日本は危ないのか。 9条によって形づくられ てきた「戦争を知らない国」は無意味だったのか、と。
   渡辺さんの答えは否だ。ウクライナ侵攻も踏まえ、「戦争はある日突然に起こるものではない」「ある朝突然に日本にミサイルが降 ってくるものでもない」と語った。武力衝突となるまえに武力によらずに解決することは可能であり、その取り決めをつくる際の「イニシアチブ (主導権)をとれるのは9条をもつ日本だけだ」。 また「9条は、有事を引きおこさない日本とアジアをつくることを政府に義務づけている」とも語った。
 渡辺さんの講演会は、憲法九条を守るわかやま県民の会が主催した。
(下地毅)