朝日新聞和歌山版 7月28日付



障害者と戦争歴史振り返る
和歌山で講演会

 盲学校教諭が長く、いまは日本盲教育史研究会事務局長の岸博美さん=京都府宇治市=の講演「障害者と戦争」が24日、和歌山市であった。障害者を「ごくつぶし」とさげすみながら戦争に動員していった戦時下の日本をふりかえった。
 岸さんは冒頭、1937(昭和12)年の小学1年生が中国戦線のヘイタイサンにと書いた作文を紹介した。「シナジンヲ タクサンコロシテ、ヨイヒトニ シテアゲテ、クダサイ」。こうした教育が普通だったあの時代、岸さんによると、障害者は兵隊になれない「役立たず」だった。
 また岸さんは、劣等感を植えつけられて戦争に協力していく障害者の姿を、当時の県内の新聞記事をひきながら示した。農村へ「按摩(あんま)慰問」に行ったり、「聾唖(ろうあ)乙女」が軍服工場で働いたりなどだ。兵隊にはりを施す海軍技療手や、飛来音を聞きとる防空監視員となった視覚障害者の歴史も紹介した。こうした戦争協力を当時の新聞は美談として報じ、政府・軍部・自治体・教育者らと競うようにしてあおった。
 岸さんは最後に、改憲の動きや、ロシアのウクライナ侵攻を奇貨とした敵基地攻撃能力の保有論などを批判して「新たな戦争を食いとめて平和を守るために歴史を学ぼう」と呼びかけた。
 講演は、和歌山障害者・患者九条の会の結成16周年の集会であった。
(下地毅)