朝日新聞和歌山版 2022年9月14日付



法的根拠・旧統一教会との関係指摘・・・
国葬反対で集会 弁護士が語る 和歌山

 安倍晋三元首相の国葬に反対する市民団体が今月、和歌山市で集会を開いた。弁護士2人に問題点を語ってもらった。
 藤井幹雄弁護士は、国葬にはふたつの問題があると語った。ひとつは「法的根拠がない」。岸田文雄首相があげた内閣府設置法は分担する事務を定めているだけで、国葬という事務をするための国葬法といった根拠が欠けていると指摘した。
 もうひとつが「安倍さんは本当に国葬に値する人物なのか」だ。そもそも藤井氏は、国民主権を徹底するべき日本で特定の人物を国葬とすることは法の下の平等に反すると考えている。さらに安倍氏の問題として、2015年の安保法制は違憲の疑いが濃い▽アベノミクスは格差をひろげた▽モリカケ桜で政権の私物化が明らかになった――などと列挙した。
 また、由良登信弁護士は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の霊感商法問題をふりかえった。由良氏が、和歌山弁護士会所属の弁護士20人と被害者弁護団をつくったのは1987年6月。このとき、48件・1億9千万円の被害相談があったという。
 70代女性は、印鑑15個・つぼや多宝塔・高麗ニンジンなど計2066万円分を買わされていたという。由良氏は物を売った信者との示談交渉でお金の一部を取りもどした。
 教団は、7月の会見で日本教会の田中富広会長が「2009年以降のトラブルは起こっていない」との発言について「コンプライアンス遵守の結果が大きく表れているという趣旨で、トラブルがゼロになったという意味ではない」と声明文をだした。全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、昨年末までの約35年で弁護士や消費生活センターが受けた旧統一教会に関する相談は3万4537件、被害総額は約1237億円という。
 由良氏は、独特の教義を掲げて不安につけこむ手法だとして「集団詐欺・集団脅迫だ」と批判。こうした教団との関係が指摘されている安倍氏の国葬を疑問視した。    (下地毅)