朝日新聞和歌山版 2022年10月2日付



憲法守るため 声上げ続ける
17日「ランチTIMEデモ」100回目
呼びかけ文起草・金原さんに聞く
安倍政権の既成事実化「アカンやろ」

 2014年6月23日に和歌山市ではじまった毎月1回昼どきの「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」が17日に100回目をむかえる。呼びかけ文を起草した弁護士の金原徹雄さん(67)に話を聞いた。
 ―はじめたきっかけを教えてください。
 憲法9条を無効化する集団的自衛権を安倍晋三元首相が「できる」としたことです。これは放置できない、できることを今やろうと呼びかけました。立憲主義の大切さを訴えて、市民が参加しやすいように昼休みデモとして1回目は160人が参加しました。
 ―立憲主義という言葉が広がったのはこのころだと記憶しています。
 政府の暴走を国民が抑えるために憲法はある。これが立憲主義です。国民主権・基本的人権の尊重・平和主義という憲法の基本原理を根底で支えているものです。その憲法を為政者の都合で変えるのはとんでもないことです。
 私が立憲主義を強く意識したのは、自民党が12年に公表した「改憲草案」を読んだときです。いまの憲法は第99条で、天皇からはじまって政治家ら公務員に憲法尊重擁護義務を負わせている。草案は逆に国民に守れと説いている。これはないとびっくりしました。
 立憲主義の歴史をさかのぼると1789年のフランス人権宣言があります。国民の権利が保障されず国家の権力を制限できないのであれば憲法を持つものではないと書いている。それから100年後に大日本帝国憲法ができます。制定過程で伊藤博文が同趣旨のことを言っています。政府の権限を制限しない憲法ならば「設くるの必要なし」と。
 ―安倍政権をどう評価しますか。
 集団的自衛権の行使容認を一内閣の独断でできることにして既成事実化したことなど「これはアカンやろ」は数えきれません。個人的には2020年の東京高検検事長の定年延長の閣議決定です。法律家からすればあり得ないものでした。
 ―なぜデモなのですか。
 やらないよりましだとか、自分を納得させる自己満足の側面もあるでしょう。私には後悔と悔恨があります。11年3月11日の東日本大震災・東京電力福島第一原発事故があるまではデモに1回も行ったことがありませんでしたから。
 再稼働反対とみんなで声をあげながら歩いたのは新鮮な体験でしたが、それまでは反原発集会に誘われても忙しいからと行かなかった。原発推進派だったからではありません。原発は危ないからやめた方がいいと思っていた。それなのに何もしないまま3・11をむかえたわけです。
 憲法の第12条に「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」とあります。憲法を破壊させないためには、ひとりひとりが声をあげるという「不断の努力」で憲法を支えないといけない。傍観しているだけならば憲法はただの空文です。
 ◇
 100回目は10月17日午後0時20分に和歌山市役所まえを出発する。主催の「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」は多くの参加を呼びかけている。
(下地毅)