「戦争ではなく平和の準備を」平和構想会議提言 安保3文書対案
毎日新聞 - 12月15日
政府・与党による防衛力の抜本的な強化の検討が大詰めを迎える中、NGO関係者や研究者らでつくる「平和構想提言会議」は15日、「戦争ではなく平和の準備を」と題する提言を発表した。政府が16日にも閣議決定する国家安全保障戦略など安保関連3文書の対案と位置付け、軍事力に頼り過ぎずに平和を築く道筋を描いている。
同会議は政府・与党の検討をにらみながら、10月29日に発足。青井未帆・学習院大教授(憲法)とピースボート共同代表の川崎哲さんを共同座長に、計15人がメンバーに名を連ねる。
岸田文雄政権は2023~27年度の防衛費として43兆円を確保する方針だが、提言は「コロナ禍や物価高とそれにともなう貧困・格差が拡大する中で、なぜ軍事が聖域とされるのか。社会保障、医療、教育など、人々の命と権利のための施策がますます犠牲にされていくことは必至だ」と疑問を投げかける。
相手国のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)については、ミサイルの撃ち合いによる戦争に発展する恐れがあると指摘。反撃能力の保有などは憲法9条の下で「専守防衛」を基本にしてきた日本の防衛・安全保障政策の大きな転換となるが、提言は「憲法の実質が勝手に上書きされようとしている」と批判する。
提言は「平和の準備」を進めるための課題として、中国への「敵視」政策の停止、「攻撃的兵器の不保持」の原則の厳格化、核兵器禁止条約への批准などを挙げた。国境を越えた市民社会の連携が極めて重要だとして、今回の提言を各国語に翻訳して対話や議論を促すことにしている。
同会議はこの日、参院議員会館で提言を発表し、オンラインで参加した青井教授は「議論が圧倒的に足りない。平和の問題を自分たちの手に取り戻さなければいけないのではないか。この文書がきっかけとなり、平和の構築に歩んでいければと強く念じている」と語った。【木村健二】
「戦争ではなく平和の準備を」の骨子
1.いま何が起きているのか
・政府が勝手に憲法を上書きしようとしている
2.「国家安全保障戦略」改定のどこが問題なのか
・敵基地攻撃能力/反撃能力
・防衛費倍増
・武器輸出の全面解禁
・軍事が経済・社会・学術を支配する
3.考え方をどう転換すべきなのか
・軍事力中心主義と「抑止力神話」からの脱却
・日本国憲法の基本原則に立ち返れ
4.平和のために何をすべきか――今後の課題
・日本の「専守防衛」の堅持と強化
・緊張緩和と信頼醸成
・核・ミサイルの軍縮の促進
※MSNニュースによる。写真は毎日新聞から同ニュースに提供。