MIKAの『TRUE WEST』(2004 5/2〜5/4 東京グローブ座)


兄   リー(松岡昌宏)
弟   オースティン(大野智)
母   (木内みどり)
プロデューサー (手塚とおる)

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ストーリーはシンプルで簡単
(一幕)
アラスカへ旅行に行った母親の家で、映画の企画を書いているオースティン。その家に放浪していた兄のリーが帰って来る。オースティンは一流大学を出て、結婚して子供もいる、映画の脚本を書いている脚本家。リーは砂漠を放浪しながら、街でコソドロを働いているならず者。正反対の兄弟の久しぶりの再会。やっと書き上げた企画をオースティンは、プロデューサーに見せる。プロデューサーは気に入って、話がうまく運んだところで、席を外してたリーが帰って来てしまう。リーはプロデューサーに「自分も面白い話を持っている」と上手く持ちかけ、次の日、一緒にゴルフをする約束をする。字の書けないリーは、オースティンに代わりに物語りのあらすじを書いてもらう。オースティンはイヤでたまらないけど、ケンカになるのが面倒だから、仕方なく付きあって、リーの話書くことになる。色々な話をしているうちに、お互いがお互いの生き方に憧れていた事を知る。リーは自分の人生を変えるため、お父さんを救いたい。オースティンはどうせ採用されない企画だからと早く終らせたい。そんな二人の夜は続く。(約45分)
(二幕)
オースティンの書いたリーのあらすじをプロデューサーが気に入って、採用になってしまう。初めは喜んでたオースティン。でも、ゴルフの賭けで、自分の作品をボツにされて、リーの作品が選ばれ、リーの脚本を書く役目に決まったと聞いて、怒って切れてしまう。プロデューサーともケンカをし、リーの作品の脚本を書くのもイヤだと怒るオースティン。そして、お酒に溺れてしまい理性を無くして行く。字の書けないリーは、何とかオースティンに手伝って欲しいと説得するんだけど、オースティンは受入れない。自分の職業を取った兄のマネをして、トースターを盗んで来たりする。そんな中、一歩進むために「砂漠に連れて行って欲しい」と切り出すオースティンに、「自分の言う通りに脚本を書いたら、連れて行く」と約束するリー。それから、時間も忘れて脚本を書く二人。その時、母親が旅行から帰って来る。見る影もなく荒れた家に驚く母親。「これから一人で砂漠へ帰る」と言って出ていこうとするリーを「約束が違う」と引き止めるオースティン。母親は出て行き、狂気に満ちた兄弟の戦いの始まりはこれからだった。(約60分)
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初日に会場に入った時は、緊張で声も出なかった。舞台には中央に家の中のセットが組まれて、中には、右手にキッチン。左手にテーブルと椅子。そのテーブルの上にこのお芝居の象徴のタイプライターが置かれているの。大野くんはどうやって、どこから出て来るのか。どんなお芝居が始まるのか、ドキドキして、会場はシーンとしてた。始まりは会場が真っ暗になって、ローソクの炎が灯り、その横にタイプライター。そしてその前に座ってる大野くんが浮かび上がるの。とにかくこの舞台は、ほとんど大野くんと松岡くんの2人だけ。特に大野くんは最初から最後まで出ずっぱり。その大野くんの表情を追って、膨大なセリフを聞きもらさないようにして、話の進行を読み取るだけが精一杯で、色んな事を考える余裕がなかったの。初日が終わって、ほっとして、「大野くんってすごいな〜」と思って、涙が出たけど、「センゴクプー」の時のような分かりやすい感動とか、わくわく感はなかったの。外国の作品だから、普段耳慣れないセリフがあるし、セリフも早口のものが多いから、ついて行くのに必死で、わからないところも沢山あった。ただ、最後のリーとオースティンの迫力がすごい事と、私が見たことのない、新しい大野くんを知って、それに感動してたのね。だから、1度しか観れない人は、先にあらすじを読んでおいた方がいいと思う。

2回目、3回目を観ていくうちに、どんどんこのお芝居に引き込まれて行くの。大野くんと松岡くんの二人の演技もどんどん良くなって、わかりにくかった言い回しも簡単になって行った気がする。

一幕はとても静かな話の運びで、あまり動いたりもしないの。大野くんも机の前に座って、リーの話に受け答えする事の方が多いの。私が印象に残っているのは大野くんの手のしなやかさ。それに、今回は妻帯者と言うことで、薬指に結婚指輪をしてるの。初回、一番最初に見たところが、大野くんの指輪だった。その次は大野くんのメガネ。メガネをかけて、タイプライターに向かい、コーヒーを飲んでいる大野くんがすごくステキで、大人に見えた。シャツに水色のセーター、ベージュのスラックス。足元はスニーカーを履いてる、とても品のいいスタイルで、コンサートの大野智とは全く別の顔を見せてくれたの。一幕は、やっかい者の兄が仕事が大事な時に帰って来たというイライラしてる押さえた表現が多かった。大野くんが何度もコーヒーを入れにキッチンへ行くのがとても好きで、個人的にコーヒーが大好きな私は、「大野くんがいれてくれたコーヒーが飲みたい〜〜〜〜〜っっっっ」とジタバタしてました(邪念)一幕は、この『TRUE WEST』の序章みたいな感じが私はしてしまうので、なかなか動き出さない二人にちょっと退屈する若い人もいるかもしれないけど、この一幕を頭に入れておくと、二幕で泣けるから、しっかり観てください!大野くんの指輪とメガネとコーヒーカップを抱えてるところと、一番はじめに食べてる“つまみ”にも注目です!

二幕の始まりは、リーがゴルフから帰って、企画が採用になった話をしてるところから。オースティンはキッチンでお皿を洗って拭きながら話をしています。皿を拭いてる大野くんっっっっっ!!!!!!!!! ここは何度見ても胸がきゅーっとなるの。お皿洗ってるなんて・・・。なんてステキなんでしょう。おおのく〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっっ。。はっ、いけないっ。企画が採用になった事が信じられなかったオースティンだけど、前金ももらえる、大きな話になったという事で、シャンパンでお祝いしようとするのね。リーは自分の企画がどんな風に採用されたか、そのゴルフ場での駆け引きをオースティンに話して行くの。そして、最後に賭けをして、自分の企画が通り、自分の企画の脚本をオースティンに書かせるために、オースティンの企画がボツになったと話すの。そんな話は聞いてないと驚くオースティン。だいたい、リーが企画した、「本物の西部劇」の話はありえないし、その脚本を書くのは、どんなにお金をもらってもイヤだと言い始めるの。プロデューサーもオースティンを説得するんだけど、絶対イヤだと切れてしまうの。この二幕から大野くんのセリフが極端に多くなって、動きも出て来るの。自分の企画が完全にボツになってしまったオースティンは、お酒におぼれるようになって行くの。この舞台は円形の回り舞台になっていて、場面が変わって行くごとに、回ったり、位置が変わったりするの。舞台が一回転して戻って来た時は、大野くんは上の水色のセーターを脱いで、シャツのボタンも1つか2つしてるだけで(肌に光る汗が眩しいっっっっっっっっ)、お酒の瓶を持って、キッチンのカウンターの前に座っています。ここで思わぬ事がっっっっっっ!!!!!!!!!大野くんが鼻歌を歌うの〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっっ!!!!!!!!そ、それも英語の歌っ!うつろな瞳で歌う歌がすごくステキなの〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!! も、もっとちゃんと聴かせて〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっ!!!と毎回心の中で叫んでました。は、いけない。またまた脱線・・・。そんな酔っ払いのオースティンに今度はリーがイライラしてくるの。脚本を書かなきゃいけないんだけど、自分はタイプライターも打てないから、話しかけてくるオースティンをとても疎ましく思うのね。オースティンはすっかり酔って、リーと話がしたいから色々話かけるんだけど、リーは、それよりも脚本を書くのを手伝うようにオースティンに頼むの。でも、オースティンは聞かない。このあたりの大野くんと松岡くんのやり取りが絶妙〜!大野くんの「可愛い弟」に笑えます!

その中でお父さんの話が出て来るの。お父さんの話。リーは貧乏で砂漠を彷徨ってるお父さんを救いたいと思ってる。オースティンは、それを絶対認めない。リーが知らないお父さんの話を始めるの。酒飲みのお父さんの歯が一本一本抜けてしまう。それなら全部抜こうとするんだけど、お金がない。それで、年金を少しもらって、メキシコで、全部歯を抜く話。その歯医者で歯を全部抜かれて有り金を全部取られてしまったから、自分が迎えに行った話。その後、美味しい中華料理屋へ行ったのに、お父さんは食べ物を食べずに、八宝菜を頼んで袋に入れて、その中に自分の入れ歯を一緒に入れて、その後、二人でお酒を飲みに行くの。その途中で、入れ歯入りの八宝菜をどこかに置き忘れてしまうの。「これが真実の話だよ」とつぶやくオースティン。私は、そのお父さんの話をする時の場面に涙が出てしまう。リーが企画した「本物の西部劇」。「本物」「真実」というけれど、本当の真実はこんなに哀しくつまらないものなんだ。。という気持ちが表れてるような気がして。原作も読んでないので、この場面にどんな意図が隠されているのか、本当にはわからないし、最初は、一番わからないシーンだったし、「入れ歯入りの八宝菜」というのは、別の何かを象徴しているのかもしれない。でも私は、オースティンがリーに「オヤジはどうしたって救えない」と真実とはこんなもの。というのを語りかけている気がする。この時の大野くんの表情がすごく好きで、この場面は気持ちが入ってしまって泣いてしまう、好きな場面なの。

また舞台が一回転すると、今度はキッチンでトースターを手に取ってる大野くんが登場するの。松岡くんは、間違えた原稿を燃やし、タイプライターをゴルフクラブでガンガン叩いて八つ当たりしてるの。オースティンは、兄のリーのマネをして、盗んで来たトースターを何台もキッチンのカウンターに並べるの。あの英語の鼻歌を歌いながら!「お前にはできない」と言われたコソドロをオースティンも見事にやって帰って来たのね。それも1台じゃなくて何台もトースターばかり!それを全部並べてるオースティンが楽しそうで、笑える場面。大野くんの動きもコミカルで、大野くんにピッタリ!そして今度はそのトースター全部にパンを入れて行くの!この時の大野くん、最高に可愛い〜!はじけちゃったオースティンそのままです。脚本が書けなくてイラ付くリーは、女のところへ電話しようとするんだけど、うまくいかなくて、イライラも最高潮。お母さんの大切な植木も全部壊してしまうの。そんな時にオースティンのパンがいっせいに“チン”と焼き上がって飛び出して来るの!この、パンの場面はこんとに面白い。ほんとにパンがこんがり焼けてるし。バスケットに乗せると、ものすごい量だし。

リーのイライラも限界に来た時に、オースティンは言うの。「僕も砂漠について行く」と。

「おまえに砂漠の生活なんてできるわけないだろう!」とリーが言うの。オースティンは本気で「砂漠が見てみたい」とリーに頼むの。「本物の砂漠はボーイスカウトとワケが違うんだぞ!」と言うリー。「じゃあ、どこで習うんだ?教えてくれ!!」と頼むの。この時、オースティンが必死にリーに砂漠へ連れて行ってくれと頼むんだけど、その大野くんの勢いはすごいの〜〜〜〜!!!見るものを圧倒させちゃう。特にこの時の「いつもここ(田舎)に帰って来る時は昔のままの記憶で帰って来るのに、現実は昔、遊んだ風景はどこにもない。いつも“偽物の街”に帰って来る。ここには本物なんてどこにもない。一番の“偽物”はオレなんだ!」と、リーに詰め寄る時の大野くんを見るとすごく泣ける。“大野くん”じゃなくて“オースティン”なんだよね。オースティンがずっと抱いていた、心の奥の叫びを初めて聞いた気がしたの。一幕の“静”のオースティンからこの二幕の“動”のオースティンの、さらけ出した心は、ほんとは兄のリーにそっくりで、ずっと優等生だったオースティンの憧れは、兄のリーだったんじゃないかな。そして、リーも本当の心をオースティンにぶつけるの。「お前、オレがあんな何にもないところで、好きで暮らしてると思ってるのか?オレはここ(社会)ではモノにはならないからだよ!」と。エリートで成功した弟のオースティン。結婚して、子供も、家も持っているオースティンを、リーは羨ましかったんだと思う。それでも砂漠に行きたいと頼むオースティンが差し出した大量のパンを、リーはたたき落としてしまうの!!!!!!!!そのトーストを、一枚一枚拾おうとするオースティン。その、拾おうとするパンを、リーが足で踏んでいくの。この時の、床に散らかったパンをしゃがんで一枚一枚拾う大野くんの姿に涙が止まらなくて!肩の辺りから哀愁が漂って、この時はすごく小さくなる大野くん。(でもその指は綺麗〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!)一枚一枚拾う姿が健気で、泣いているように思えるの。そのパンを拾い集めた時、リーは交換条件でオースティンを砂漠に連れて行くと提案するの。その条件は「オレの物語りを脚本を全て書き終えたら」オースティンは、拾ったパンをまたリーに差し出して「乗った」と宣言。

それからオースティンはリーの言う言葉を紙に書き起こして行くの。なんせタイプライターは壊れちゃったから、鉛筆で紙に書くから大変なの。この時、オースティンもシャツのボタンを外して、シャツの前が全開!うっき〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!二人の協同作業も男同士のぶつかり合いっていう感じで、ビールをお互いに掛け合ったりするの。そんな異常な盛り上がりの中、突然母親が旅行から帰って来るの。この、お母さんがとてもいい感じ。天然ボケを演じる木内さんが、本当は一番狂気なのかも。って思う。家の中の荒れように嘆くお母さん。リーは「砂漠へ一人で帰る」と言って出て行こうとするの。「約束が違う!」と逆上したオースティンは、床にあった、電話のコードを、リーの首に巻き付けるの!! 「何処へも行かせない。キーを返せ」って叫ぶオースティン。リーが持ってる自分の車の鍵を取り戻そうとするの。この迫力はものすごい!大野くん、ぐいぐい松岡くんの首を絞めるの。松岡くんが床に伏せて、大野くんがその上を靴で踏むの!演技とは思えない迫力で、大野くんが松岡くんよりぐ〜〜〜〜〜〜〜んと大きく見える瞬間なの。リーが取りだした車のキーを、お母さんに拾ってもらうオースティン。お母さんは二人にあきれて出ていくと言うの。「母さんは出ていかないで。母さんの住む家はここだよ」と言うんだけど、出ていってしまうの。この時もなんだか切ないの。。。母親にも出て行かれて、二人きりになってしまった兄弟。オースティンは、首を絞めながら

「オレはここを出ていく。一歩先に行かせてくれ!」と叫ぶの。

ふと気がつくと、ぐったりして床に伏してるリー。我に返ったオースティンが「リー?」と覗き込もうとすると「すくっ!」と立ち上がって、またオースティンの前に立ちふさがるリー。オースティンはメガネを外し、兄弟は向かい合った。(終)

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これで会場が暗転になって、物語りは終るの。最後の二人の気迫がすごくて舞台から目が離せない。オースティンが「ここから一歩先に行かせてくれ」と言うセリフが今も耳に残って離れないの。それに、あの大野くんが松岡くんの首を本気で絞めちゃうんだからねっ(涙)。一番はじめは驚いた。こんなに役に没頭できるんだな〜って。それが大野くんなんだな〜って。感動した。舞台人として着実に歩きはじめてる大野くんの姿に。そして、この「オースティン」から「大野智」に戻る時の顔が最高にステキなんだよね。舞台が暗転して、すぐに明るくなるんだけど、その時に出演者と並んで立ってる姿は、もう「大野智」の戻っているの。そのほっとした何とも言えない顔が今までそこで首を締めてた人なの?っていうくらい爽やか。そして、ほっとして見せる笑顔がステキなの〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!「やり遂げた」って安心と自信に満ちた笑顔。この人を応援してきて良かった。と毎回思う。

初日は演出家のアリさんもカーテンコールで舞台に上がって、嬉しそうな笑顔を見せてくれました。初日はカーテンコールも多くて、最後に松岡くんが大野くんをお姫さま抱っこして、くるくる回ってくれました!その後も二人は仲良しで、私が見た限りでは、顔を見合わせておじぎしたりしてました。松岡くんは、体も大きくて、ほんとにお兄ちゃんみたいだった。兄弟の違いの特徴を強調するように、浅黒く焼けてて、すごい筋肉!「オレはここではモノにならないんだよ!」と自分の持っていたコンプレックスを吐き出す所で泣いてしまいます。手塚さんは「さすが!役者さん」。その時々で、プロデューサーのキャラクターまで変えちゃうの。すごいな〜と思った。唯一遊べるキャラクターだからかも。木内さんも、最後の数分しか出て来ないんだけど、インパクトのある役で、飄々とした演技が、殺伐とした中にすごく光るの!ほんとうに二人のお母さんなんだっていうくらい、役にはまってました。そうそう、ちょうど、嵐のメンバーと赤坂くん、アツヒロくんが観に来た時に、入る事ができたんだけど、すごく嬉しかった。そのすごいメンバーと一緒に観劇できた事も嬉しかったけど、何より、嵐が全員で観に来てくれたって事が嬉しくて。全員で来るなんて、そんなに簡単にできるものじゃないもんね。メンバーの暖かさを感じたの。大野くんは照れくさかっただろうな〜。でも、きっと嬉しかったと思うんだ。メンバーがどんな感想を持ったのか、とても知りたい。雑誌やラジオなんかで言ってくれるかな?

とりあえず、最初の三日間を観ての私の感想でした。私はそんなにお芝居の事を知らないので、あくまで私の感じた『TRUE WEST』です。これって、きっと何度も観ていくうちに、感じ方も変わって来るんだろうな〜って思う。大野くんや松岡くんもどんどん進化していくだろうし。お芝居って不思議で、その時の、自分の置かれている環境で、感じ方や見方が違って来るんだろうな。私が感じた事なんてすごく浅くて、ほんとはもっと深いメッセージが隠れているのかもしれない。そのメッセージには、正解がないのかもしれないけど、大野くんが演じるオースティンの心を、精一杯受け止めていきたいと思うの。

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