MIKAの『TRUE WEST』(2004 5/30 大阪千秋楽 大阪NHKホール)


兄   リー(松岡昌宏)
弟   オースティン(大野智)
母   (木内みどり)
プロデューサー ソウル・キマー(手塚とおる)

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「リー、一歩先に、一歩だけ先に行かせてくれ!」

そう言ってリーの首を夢中で絞めるオースティン。
そのオースティンの言葉が、私の耳から離れなくて、その言葉を思い出すと涙が出る。
今まで色々な舞台を観てきたけど、この『TRUE WEST』ほど考えさせられた舞台はなかった。舞台を観た感想や思った事を、友人と話してると、色々な発見がある。このリーとオースティンの兄弟の子供の頃はどうだったのかと考えたりする。とても仲良しだった兄弟だったのに、頭の良い弟と、その弟にコンプレックスを抱く兄が自分の生き方を見つけた時点で、生き方が違って来たんだろうな。都会で生きられなくなった兄は、放浪に出てしまう。残された弟は、一流大学を出て、仕事も家庭も持って、エリートで生きて来たんだろう。兄が砂漠で犬と一緒に孤独に暮らしている時も、弟は温かい家の中で幸せに暮らして来たのだと思う。その弟の初めての挫折は、字も書けない、学校も出ていない兄の作品が自分よりも認められたという事実。その時、冷静だったオースティンの心の歯車が狂い出したのかもしれない。兄が出て行ってしまったために、家族や社会に縛られて生きてきたオースティンが、その世界から抜け出したいために、兄のリーの首を絞めてでも、外の世界へ行きたかったのかな。外の世界へ行けば、自分に持ってない物を取り戻せると信じたんだろう。でも、リーにとって、オースティンは可愛い弟で、砂漠で苦労なんかさせたくなくて、一人で出て行こうとしたのはリーの優しさなのか?似てる兄弟だからこそ、かけがえのない兄弟だからこそ、お互いの大事な物が欲しくて、こんな争いを続けていくのかもしれない。千秋楽が終って、そんな事を考えていました。

舞台の千秋楽は特別で、観る人も演じる人もすごいパワーを感じます。大野くんのオースティンも舞台が終る度に「すごく良かった」といつも思うけど、千秋楽の大野くんは特別にすごかった!オーラがあって、パワーがみなぎってて、自分の持ってるもの全てを出そうという気持ちがヒシヒシと伝わって来ます。それは松岡くんも同じなわけで、その2人がぶつかるワケだから、そりゃすごい舞台でした。そんな中で、ちょっとしたステキなハプニングもあって、2幕で、オースティンがトーストを焼いた後、リーがビールを冷蔵庫から出してほうり投げてキャッチするというのをオースティンが真似るシーン。大野くんがビールを高く上げすぎて、セットの外へ投げてしまって、裏まで取りに行くというハプニング。これには松岡くんも笑ってしまって、一瞬緊張がほぐれて笑いの出るシーンになりました。その後、焼いたトーストをリーに投げられて、オースティンが拾うシーンは、パンを拾う大野くんの姿が、ものすごく感情が入ってて、号泣してしまったの。最後にリーの首を絞めて引き止めるシーンも、鬼気迫るという感じで、本当に死んでしまうんじゃないかと思うほど迫真の演技で。母が出て行き、二人きりになってしまった後のラストシーンの迫力は、鳥肌が立つほど、ほんとにすごいものでした。

終った後のカーテンコール、最初はいつもより、方針状態という感じで、大野くんはボーっとしてました。会場は総立ちのスタンディングオベーションで、松岡くんは、ネックレスを大野くんの首にかけてあげてました。そして東京と同じく挨拶がありました。
松岡くんから、「32回目の『TRUE WEST』の公演が終りました。普段は眠そうにしてるうちの弟が、ここでビシッときめてくれます」と大野くんにふってくれました。
大野くんは、もう目がうるうるで、会場から「おーちゃん」「お疲れさま〜」と声をかけられて、ほんとに泣きそうになってました。「ほんとにありがとうございました。32回もやったような気がしなくて、大きなミスもなく・・・(ビールの缶を拾って松岡くんを見て笑う←今日、ビールを外に投げてしまった事を指してました。)ケガなく終って最高です。みなさんのおかげです。ありがとうございました!」とすごく立派に挨拶してくれました。
その後、松岡くんから、木内さんと手塚さんの紹介、それに自分を紹介して最後に「あらためて紹介します。オースティン、大野智!」と紹介してくれたんです。それで、会場からすごい拍手が来て、とうとう大野くんは泣いてしまって!!!!!!!!!! 顔を隠してしまった大野くんに松岡くんがシャツをかぶせてくれました。大野くんはシャツにくるまって、顔がくしゃくしゃ。でも、ほんとにキレイなキレイな涙を流してました。何で泣いちゃうんだろうね〜(泣)大野くん。客席から声をかけられてしまうともうダメみたい。それに、上を見上げるとダメみたい。私は二階で観てたんだけど、上を見上げた時の大野くんの目にいっぱい涙がたまっていたのがすごく印象的で、下を向いてしまうとポロポロ泣いてしまうんだね。きっとすごく役に入りきってて、そこから抜けた時の充実感とか、安心感とか、感動とか、私の味わった事のない世界なんだろうな〜。あんなにキレイに泣ける人は私は見た事がありません。
2回目に出てきてくれた時は、演出家のアリさんやスタッフへの感謝の言葉でした。泣いてる弟を気づかって、松兄がしきってくれました。これで終りなんだろうけど、総立ちの客席が誰も帰らず拍手をするので、数分後にもう1度だけ出てきてくれました。これがすごいっっっっっ!大野くんが、大野くんが、ジャージなの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!! 私服の紺のジャージを着て、その前を首のとこまでキッチリ閉めて、下は衣装のベージュのチノパン。そして、白いくつ下に、薄い水色のチェックのスリッパ(健康サンダルかも)。これが、可愛くて可愛くて〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!! 4人が舞台に出てきてくれた時、会場が「うぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」とどよめいたんだけど、きっとあの「うぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」の半分は「ジャージジャージジャージジャージジャージジャージジャージジャージジャージ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっっっっ」っていう意味不明の言葉だったんだろうな。その顔は、もうすっきり、さっぱりしてて、ほんとうに、いい顔だった。大野智に戻っているんだけど、今までの大野智じゃなくて、何か大きな事をやり終えた後の大野智の顔になってた。私は、泣いてるのに、胸がドキドキして、感動してるのに、はしゃいでて、大野くんは何も喋らず会場のみんなに手を振ってくれたけど、その姿が眩しくて、キラキラした目に引き込まれてしまう。笑わせてくれたり、泣かせてくれたり、感動させてくれたりする。そんな人は大野くんしかいないのです。

だから私は大野くんを愛さずにはいられない。

同じ時代に生まれた事に感謝します。
『TRUE WEST』千秋楽、おめでとうございました。

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