酔恋の日々



父と娘の春の縁側時流れ
春時雨 母に似てきたと父が言い
小春日や父の繰り言聞き流し
大花野寡黙な人のプロポーズ
葬列や白蓮の咲く家を出て
草の中水仙すっくと立ち上がり

飛行雲空切り開き春となる
髪下ろし色なき風の中をゆく
残雪や語尾のひと言のみこめず

米をとぐ骨太の手や寒明ける
生きをれば悩み深し春深し
少年の目元すずしく秋に入る
靴墨の匂いかすかに今朝の冬

これという夢などなくて芋を煮る
辛い日は吾子の好物さんま焼く
台風の目の中ひっそり本を読む
人ごみの中さまよえば12月