春
あなたへとドミノ倒しや春疾風 春風や心の余白に君がいて 花の時化粧水があと少し 見上げれば君の笑顔と桜花 昔日の母の想いや春ショール |
青麦が空にむかって背伸びする 聖五月洗濯物を空に干す 白いシャツ真直ぐな眼差しもつ人よ 喪の庭に咲き満ちてをり花葵 夫よりのメール待つ日の蝉時雨 |
秋燈下セピア色した青き春 突然に人恋しくて菊香る 花カンナ二十歳で逝きし友の恋 秋晴れや心に決めしこと一つ トパーズ色の香り放って檸檬切る 秋の日に過去形で話す君のこと |
冬
冬林檎ころころ転がり夫の手へ 手にあまる髪束ねをり夜半の雪 冬銀河骨のきしみを抱いて寝る 髪を梳く冬の駅舎の片隅で 埋み火のごとくあなたの言葉抱く 聖夜劇天使の羽をつけし頃 |