尾上温泉「紅鮎」

毎年の恒例、今年の極秘プロジェクトの相談を初め、まず日程を決めて、次に場所の選定に入りました。中間地点で温泉という条件から限定されますが、あねごさんの「滋賀まで足を延ばしてみよう」という提案で急遽浮上したのが尾上温泉と太閤長浜温泉でした。滋賀県は温泉が少ない県ということもあり候補は必然的に絞られ、滋賀といえば近江牛という単細胞な発想で「紅鮎」か「浜湖月」に絞り込み、「日本の宿」のスタンプをもらってみようと今回の尾上温泉「紅鮎」に決定しました。

奥琵琶湖、尾上温泉「旅館紅鮎」のチェックインは14時ですが、この日は黒壁スクエアの観光などを楽しんだこともあり、宿に着いたのは16時でした。外観は思ったよりも近代的であまり高級感はありませんでした。琵琶湖という庭を超えた景観があるからでしょうか、整備された庭というものも見当たりません。それより、ちょうど団体の到着と重なり、すぐに荷物を運んだり対応はしてくれたのですが、玄関に入るまでに団体客の喧騒が落ち着く間の数分は待つこととなりました。予約の時に残り一部屋という話だったので、団体のためかと合点がいった反面、この宿のコンセプトに団体はどうかなという疑問もわきます。気を取り直して玄関に入ると三つ指をついた係の女性が「おかえりなさいませ」と出迎えてくれます。靴を脱ぎ、琵琶湖とそこに浮かぶ竹生島を望むロビーに案内されました。ここで冷やし梅のサービスがありました。おしぼりがあるともっとよかったのになと思いました。琵琶湖を望む椅子に腰かけ少しのんびりし、食べる終わるのを待って部屋に案内されます。小さな売店とライブラリ、日没まで利用可能な足湯があり、案内の途中で紹介されました。荷物はすでに部屋に運んであるということでした。この宿は3階建てで露天風呂付き客室は16室あり、浴室を含めすべて琵琶湖を望むように造られています。廊下は畳敷きでスリッパはありません。今回宿泊した部屋は1階の「望月」という部屋です。ドアを開けたところの1.5畳ほどのスペースに冷蔵庫が置いてありました。右に2段上がって板の間の正面はトイレ、ふすまを開けると部屋があります。トイレは草履が備えられ、広めのシャワートイレでした。部屋の広さは16畳ほどでしょうか、縦長の部屋です。係の説明によると一番広い方の部屋だということでした。備え付けの金庫が4つだったので4人定員ということでしょうか。その金庫は部屋の中央側面液晶テレビの下にあり、その左側には掛軸が二幅と青磁の香炉が飾ってありました。入り口側の棚には生花が飾れ、その横に電話がありました。よくある床の間のテレビや電話ではありません。ただ金庫はむき出しです。テレビの右側は洋服入れになっていました。2畳ほどのウッドテラス、1畳ほどの広縁がありそこにテーブルとイス、その手前の畳の上にマッサージチェアがあります。広縁の右に脱衣所兼洗面所、テラスの横の位置に露天風呂がある造りです。洗面所にはアメニティが揃っていました。部屋から望むのはもちろん琵琶湖です。ただこの部屋の正面の湖岸に立派な木が植わっていて、竹生島を撮ろうと思うと少し邪魔でした。覗き込みはありませんが、露天風呂については後述します。部屋の鍵は2本ありました。部屋ではおしぼりとお茶が出ました。お茶請けは地元の「どんべ最中」で、受注生産なので気に入って購入する場合は前日に予約をして欲しいと説明がありました。どんべというのは漁具のようで、それを形どった粒あんの最中です。これは一人一つあるのですが、もう一つの「すはま」というお菓子は2本入りが二つで、3人で分けて食べるにはちょっと微妙でした。包みを外して3本にするか最初から三つ置く方がスマートな気がします。その「すはま」は黄粉を練った棒状のお菓子でこれも地元のお菓子屋さんのものでした。ポットとお茶セット、夜に持ってくる冷水を置くために入り口側に別のテーブルが準備されていました。この他冷蔵庫にあるドクダミ茶は無料ということでした。くせがなく飲みやすいお茶でした。

夕食の時間は30分刻みで希望を聞かれましたが、この日は団体が入っている関係で係のマユミさんはいったん下がってからものすごく申し訳なさそうに変更してほしいと言いに来ました。朝食は8時か8時半で朝食会場の案内がありました。浴衣は2サイズと作務衣があり、大浴場の階の箪笥に入っている色浴衣も無料で利用できます。部屋に着付け用の帯が準備され、スリッパがないということで足袋も備えてあります。私たちは作務衣にしました。この作務衣はひもで調節するタイプで、ゴムを使用していないのできついとかゆるいということがありませんでした。

大浴場は男女別にあり、入れ替えはありません。夜24時まで、朝は6時から入れます。女性の大浴場は3階(男性は2階)で「開花の湯」という名前がついています。脱衣所は明るく、アメニティも充実、冷水も備え付けられていました。ただ裸で窓のそばに立つと外から絶対に見えないとは言い切れません。シャワーのある洗い場は仕切りがあり、シャンプーなどが場所によって違いました。好みのものを使えます。内湯は大理石で御影石の縁、信楽焼の陶器からお湯が注がれていますが、泉温が21度、濾過源泉ですので当然循環です。うっすら茶色です。5、6人はゆったり入れます。露天は御影石で、眺めはいいのですが残念ながら白湯ではないかと推測しました。こちらは4、5人というところでしょうか。この他サウナが併設されています。有料の岩盤浴もあるそうです。

食事は部屋です。6時からということになりましたが、10分くらい前から支度に来ました。そしてお決まりの(?)白いテーブルクロスが敷かれます。ただ、テーブルのサイズの方が大きく全部覆うという感じではありませんでした。名前と個体識別番号の入ったお品書きが置かれ「ようこそお帰りくださいました」と書かれています。食前酒は赤ワインです。月替わりの前菜は内容はお品書きに書かれておらず、特に説明もありませんでした。準備の段階で前に土鍋が置かれ、「どうぞお始め下さい」と言われました。次に近江牛みすじの刺し、肉ひら叩きサラダ、近江牛にぎりと続きます。途中鍋に火が入れられ豆乳しゃぶしゃぶの説明がありました。これは味付きで好みで柚子胡椒を使っていただきます。薄味だったので、柚子胡椒がほんの少しだったのは残念です。鍋が終わると今度はステーキです。炭焼きで焼き方のアドバイスがあり、塩、山葵、橙酢でいただきます。後でマユミさんが「この部屋の方が一番上手です。」と褒めてくれました。何でも煙が出すぎて火災報知機が鳴ったことがあるそうです。最後に一緒にお持ちしてよろしいでしょうかと断りのあった後タンシチューと近江米の新米、香の物が出てきます。しばらくしてデザートが届き、食事が終わるまでに2時間くらいだったと思います。味は語るまでもないでしょう。終わりごろ女将さんがあいさつに来ました。

さて、部屋付きの露天風呂ですがこちらは源泉100%です。ただ泉温が低いので浴槽内の加温。チェックイン時すぐに入れるようになっていますが、保温ボタンを時々押さないとスイッチが切れてしまうと説明がありました。保温ボタンを押し忘れなければ24時間入浴できるということで、もちろん追い炊きもできるようになっています。檜風呂でしたが大きさはお一人様もしくはバカップルサイズです。源泉が21度ということを考えれば仕方がないかもしれません。洗い場も外で一か所あります。お湯は無味ですが茶褐色の濁りで、湯花も舞っています。源泉が栓を回すと出てくるので温度調節したり掛け流したりできます。この露天風呂の難点は琵琶湖と宿の間にある道路です。車両は進入禁止なのですが犬の散歩の人が通ったりすることがあり、入っていればこんにちは、立てば丸見えという状態です。口コミでも特に一階の露天風呂はこれに対する問題提起が多かったのですが、宿の人の話では所有権がないのでどうしようもないということでした。露天風呂は囲ってしまえば眺めが悪くなるのでどちらがよいとも言い切れません。眺め優先か、羞恥心優先か難しいところです。

朝食は食事会場です。畳敷きですがテーブル席でした。鯵は温めていただきます。蕎麦、りんごジュース(前日に牛乳と好きな方を選べます)、出汁巻、手作り豆腐、茄子の煮物などが並び、近江名物赤こんにゃくは酢みそでいただきます。大豆と小エビを煮たものやちりめんじゃこ、湯葉、海苔、しじみ汁があり、テーブルにおかゆが準備されています。デザートはみかんでした。おかゆは自分でよそいますが、ご飯もあり、こちらは係の人が持ってきてくれます。一般的な朝食という感じです。

チェックアウトは11時です。会計の間に女将さんに行先を訪ねられ、そこのパンフレットを準備してくれました。また「日本の宿」のスタンプ帳を作ったのですが「なかなかたまらない」と話していたら、「どうぞうちに10回、招待もうちですけれど」とさりげなくアピールされました。ただ「日本の宿」はこの先少し減ることがあるかもしれない、最近は本も作ってきないという話でした。最後に「いってらっしゃいませ」と見送ってくれます。この宿は全室に露天風呂がついていて、信楽焼きや檜、石などがあり、部屋の造りや広さもそれぞれ違うようですが、事前に部屋を選ぶことはできません。部屋食のため食事の内容や人数によって宿に任せてほしいということですが、もう少しフレキシブルな方がいい気がします。またこの宿の近江牛づくしは野菜を除いては通年同じメニューということです。この辺りを改善すればリピート客も増えるのではないでしょうか。
大夫さんには琵琶湖の観光を兼ねてぜひ一度は訪れて感想を聞かせていただきたいと思います。

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