宿題「にょたひむ」
読む前にきび様作の「にょたひむ」をインプットする事を、おすすめします。
人生最初で最後のにょただ。








きみは無慈悲な夜の女王







ミルタ様







夜中、アリスは突然に未知の人間の訪問を受けた。
ドアスコープの向うには、夜だというのにサングラスにスカーフを頭に被り、トレンチコートを着た女が見えた。
女の赤い口紅だけが性別を告げている。
ドア越しに「どちらさまですか?」と尋ねても女は答えなかった。
いくら女とはいえこの時間、このいでたちに不審をおぼえるのはもっともだろう。


もう一度アリスが声をかけようとしたとき、驚いたことに鍵穴に鍵を差し込む音がして、あっという間にドアが開けられた。
女がからだをすべり込ませ、閉めたドアの鍵を再びかける様子を、アリスは呆然として眺めていた。
なぜ鍵を持っているのかという疑問よりも、落ち着き払った女が頭を覆ったスカーフを取りサングラスを外すさまに気をとられ、声を出すことも忘れていた。
現れた顔にアリスは妙な既知感を覚える。きれいに化粧を施した美しい顔には不釣合いなばさばさの髪。
そのアンバランスにやはり正常でないものを感じた。女は整った顔にふさわしい理知的で冷めた目を、アリスに寄こしている。そこには狂気ではなく知性が伺えるのだが、この鋭いまなざしには覚えがあるようなノノ。

「アリス」

ハスキーな声がアリスに呼びかけた。
その声にではなく、呼び方に、アリスの心が反応した。
アリスは目の前の女を凝視した。
まるで、透視すればその外見の裏側にある本当の姿が見えるかのように。
そして、アリスはありえない思いで名前を呼んだ。


「……ひむら」


女はどこかほっとしたように顔つきが緩んだ。






いつもの定位置のソファで、見知らぬ女が立て続けに煙草を吸っている。
灰皿の上には、口紅のついたティッシュが丸められている。
襟ぐりが深くあいた濃い紫色のワンピースを着た女は、開いた足に腕をかけ、まるで不良少女のようなポーズでしきりに煙を吐き出している。
ニットのワンピースはスレンダーなからだのしなやかな曲線を浮かび上がらせ、胸元はふっくらとした丸みで盛り上がっていた。
アリスは思春期の頃のようにまぶしさであわてて目をそらせた。
女は、火村は、煙草三本分でエネルギーを補給したのか、煙草をもみ消すとようやくからだをアリスの方に向け、視線を上げた。

「おれは今、女になっちまってる」

ハスキーな声で女侠客のような言葉がきれいな口元から発せられるのを、アリスは見ていた。

「でも、火村なんやよな?」
「化粧全部取った方がいいか?」
「……いや、できたらそのままでおって」

アリスの言葉に、細い眉がわずかにひそめられた。

「面影はあるし、今すっぴんになられたらおれもっと混乱しそうや」

どういう顔をしていいかわからないアリスは、できるだけ感情を出さないよう努めていた。
火村も同じように冷静を保とうとし、すっと表情を消す。


その顔は女王のように高貴で、月のように無慈悲な美しさだった。


「おれの死んだオヤジはバイオ工学の研究者でな、医療用の筋肉再生細胞の研究をしていた」

視線をおとし平坦な声で初めて家族の話をする火村を、アリスは息を殺して見た。

「詳しいことは知らない、おれはまだ子供だった。
オヤジは開発途中の試薬をおれに投与して研究データを集めていた。異変に気づいたのは中学生の時だ。
ある朝起きたらからだが女になってた」


「女化は不定期にやってきて、その度にオヤジはいろんな試薬でもとに戻そうとした。
すぐに戻ることもあれば一週間続くこともあった。
なにがきっかけで女化するのかわからないし、どの試薬が効くのかもわからない。
女化はオヤジが実験をやめても時折現れた。一番最後は高校二年の時だった」

平坦な声で、尋常でない人生を聞かされたアリスは、息が詰まりそうだった。作り物のようにきれいな顔は、他人の同情を拒否していた。

「そのときわかったことがある。男と性交すると男に戻ると」

火村は言葉を切ると、アリスの反応を待つように視線をそらさなかった。
その挑むような強いまなざしは見知ったもので、目だけを見ていると首筋が粟立つ思いだ。だが、ズームアウトしてその姿を捉えれば、他人のような女がいるだけだった。


「アリス、おれと寝てくれ」


男である火村から好きだ、と告白された時よりもアリスは驚愕した。

そらされない目は、この状況が現実であると伝えてきて痛いほどだった。
冗談だろうと、笑い飛ばすには火村の苦脳が大きいことは明らかだ。
闖入者がこの部屋を訪れてまだ一時間もたっていないが、アリスはこの話を疑いようもなく信じられた。
火村が隠してきた過去を告白し助けを求めるなら、なにを置いても応じたい。そのことに一辺の迷いもないアリスだったが、まだすべてを受け入れるには混乱している。

「ちょっと飲んでいいか?」

アリスは立ち上がってキッチンに向かった。火村は緊張していたからだを解くように、息を吐いてソファの背もたれに背中を預けた。
バーボンのボトルとロックグラスを二つ持って、アリスは再び火村の前に戻った。
琥珀色の液体をグラスに注ぎ火村に差し出し、自分もグラスの中身をあおった。火村はグラスを持って少し躊躇していたが、同じように一気に中身を飲み込んだ。

「いつから女になったん?」
「……今朝だ」
「大学は?」
「ファックスで風邪で休むと連絡した」
「そんで、その格好は……」
「いつまでも女でいるわけにはいかないだろ、どこかで相手を見つけて、もとに戻るしかないと思った」

アリスを見た火村は、どこか申し訳なさそうな目をしていた。

「デパートへ女の服を買いに行ったんだが、何を買っていいかわかんねえ、悩んでたら店員が相談に乗ってくれて化粧までしてくれた」
「へえ、そんなことまでしてくれるんや」
「それから、盛り場へいってそこで適当に相手を見つけるつもりだった」

火村は空のグラスを両手で握り締めたまま、そのグラスに向かって話しかけるようだった。

「おまえを……巻き込みたくなかった、さっさと誰でもいいから寝て早く元に戻りたかった」

大きく開いた足に肘をつき、苦悩をできるだけ押し殺して無表情に話す仕草は男のもので、それが余計に強がりを装った女性の心細さを強調している。
アリスは眩暈がする思いだった。

「できなかった、何人か声はかけられたがどうしてもそいつについて、ホテルに行くことができなかった、迷って迷って、結局ここにきた、すまないアリス」

手元のグラスを握る指に力が入った。ぎゅっと目をつむった火村は、薄い唇を噛み締めていた。
そりゃあ、もてたやろうな、とアリスは思った。
黙っていればこれだけの美貌だ。よく無事で帰ってこれたものだ、とも思う。
火村の気持ちは理解できる。大きな秘密を持つ苦しさ、それをひとりで解決しようという気遣い、だが結局他の男と事に及ばなかった事に、アリスは一番安堵していた。
だからといって自分が火村の望みに応じれるのか、そこまでの覚悟はまだできていなかったが。

「おまえが元に戻るためとはいえ、知らん男に抱かれるんはいやや」

火村はグラスに目を落としたまま、アリスの言葉を聞いていた。

「おまえの秘密をよお告白してくれたな、最後におれのところ来てくれて嬉しい。だから、おれもおまえに応えたいと思うで」

おそるおそる視線がアリスに向けられた。

「ほんまに他の方法はないんやな?おまえが元に戻るには」

返事はせず頭だけが縦に動いた。

「……だったら、おれがおまえを抱く」








照明を落とした寝室のベッドに、バスローブ姿の女が腰掛けて煙草を吸っている。
短い髪が頭蓋に張り付き、細い首がほの暗い灯りに白くなまめかしく照らされている。
化粧を落とした顔は普段の火村のままで、ただ顔の輪郭が細くやわらかく、ごつごつしたところは一切ない。
頼りないくらい薄い肩も、ひとまわり小さくなったようなからだもたぶん女のものなのだろう。


風呂を使って部屋に入ってきた火村は、明らかに態度が違っていた。
腹を決めたかのように開き直り、先程まで小さな胸を震わせていた乙女のごとき風情がきれいになくなっていた。
足を組み細い指で男のように煙草を吸うさまは、玄人の商売女かと思うほどだ。
アリスが風呂から戻ってくると、火村は煙草をもみ消し腰の紐をといた。
バスローブの下から裸体が露わになる。
アリスは思わず顔を背けた。

「なんだよ、女の裸はじめて見るような顔すんなよ」

はすっぱな言葉には面白がっている色が含まれている。
こんな時までからかうことを忘れないとは、火村らしいというか余裕というか、妙なところでアリスはほっとしていた。

「あいにく生で見るのは久しぶりなんや、いっつもみるんは無骨なおっさんやからな」
「おっさんで悪かったな、そっちこそあんまり久し振りでやり方忘れてねえだろうな」
「おまえ」

アリスは女の肩を押してベッドの上に自分ごと倒れこんだ。
はっとするほど柔らかくて抵抗のない肩に、思わず手を引いた。目の前に火村の顔がある。
見慣れた風に口の端を歪ませる笑い方が似合わない。だが、目はアリスの心を読み取ろうと気遣わしげに向けられていた。


アリスの目は吸いつけられるように胸に降りていった。
女らしい、なだらかなカーブを描いて盛り上がる乳房がそこにあった。もともとの皮膚の色は白くないが、健康的なはりがあって大きくもなく小さくもない乳房に、均整の取れた薄赤い乳首がつんと立っていた。筋肉質なせいか、横になっても火村の乳房は流れることなく質量があった。
触れたくて触れられない、思春期の高校生のようにただアリスは見入っていた。

「おまえに押し倒されるなんてめったにないよな」

アリスは声の主に視線を戻した。強がっている口調とは裏腹に、アリスを見上げる目の奥には不安な心情が透けて見えていた。高い高い壁に阻まれ、普段は見えない男の弱い部分が露わになっている。
それがアリスを誘った。
強い保護欲と共に、たおやかな花の枝を折りたくなる嗜虐心が襲ってきた。

「頼むから黙っててくれ」

それから、何か言い募ろうとした火村の唇をふさいだ。


女になったせいで、何もかもワンサイズ縮まったのだろうか。
火村の唇も舌も、いつもなら守勢にまわるアリスに翻弄されていた。舌の動きが弱弱しく、細い眉がひそめられて長い睫毛がしきりに瞬いている。アリスは手を火村の胸にはわせた。下から押し上げるようにつかみ手の平で乳房を覆う。固くて弾力があり、しかもやわらかい。忘れていた懐かしい感触に、アリスの体の奥が強く疼いた。
普通に反応する。
久しぶりに触れる女のからだは違和感がなく、このまま一気に済ませそうだった。


だが、なにかがアリスを引きとめる。
からだはしっかり顕著を見せているのに、進んでいいのかと頭の隅でブレーキがかかる。
裏切りとうしろめたさ。
気がついた時には、アリスは火村からからだを引き剥がしていた。突然去った重みと熱に、火村は数秒遅れて目をあけた。
自分に背中を見せたアリスの頭が、前に折れて見えない。どうやら頭を抱えているようだ。

「……アリス?」

背中の筋肉が緊張して張っているのがわかる。前傾したままで、耐えるようにからだを固くしている。
火村は起き上がってバスローブを手繰り寄せ、からだに羽織った。前袷を閉じ、いまいましい乳房を隠す。自分のものとはまだ信じられない細い腰に、ゆるく紐を巻いた。


やっぱり無理だったのだ、たとえば性転換手術をして女になったから抱いてくれ、という方がまだしも合理性がある。
朝起きたら女になったと、セックスすれば男に戻るから寝てくれといわれ、易々と納得して事に及べるものではない。
アリスは、おそらくは友情で承知してくれた。
自分たちの関係が友情のみだったとしても、多分アリスは否とはいわなかっただろう。


巻き込むべきではなかった。アリスが断らない事をわかっていたなら尚更、自分の重荷を半分持たせるような真似はずるい。女性化したとたん、脳の動きまで依存傾向を示した自分に舌打ちしたくなる。
火村は怯懦な自分を振り捨てるように、ベッドから立ち上がった。


「どこ行くねん」


驚いたように、顔を上げたアリスが火村を見た。

「悪かった、アリス、おれの無茶な頼みを聞いてくれただけでありがたいと思ってる、今日のことは忘れてくれ、ありがとう」

火村が出て行くつもりだと察したアリスは、素早く手を伸ばした。掴んだ手首は細くて頼りない。アリスは、逃げられない程度に力を緩めた。

「待てや、今からどこ行くつもりや、ゆうたやろおまえを他の男になんか抱かせへん、座れ」
「無理するな、アリス」

つかまれた腕の力を頑なに抜かない火村に、アリスは立ち上がって背中から肩に手をまわし、ゆっくりと体を反転させた。そしてやさしくベッドに腰かけさせて、自分も隣に座る。肩に置いた手はそのままだった。
その慣れたエスコートに未知のアリスを見て、火村は心中複雑な思いがした。

「無理してへん、ちょっと混乱しただけや、なんか、浮気してるみたいな、おまえを裏切ってるような……、変な話やけど」
「本人相手にして浮気はないだろう」
「そうやけど、からだだけ見とったら違う人間みたいで、混乱したんや、なあ火村、ゆうておきたいことがある」

アリスは火村の肩を抱き寄せ強く力を込めた。火村の頭はアリスの胸に押し付けられ、アリスの顔は見えない。

「おれはおまえが女やったら、って思ったことは一度もない。おまえの属性を抜きにしておまえという人間はありえへんやろ?
それを超えておまえの事を好きやと認めんのは時間かかったけど、だからって女ならよかったって思ったことはいっかいもないねん、
それはわかってくれるよな?」
「……ああ」
「やけど、もし、今日女のおまえを抱いたら、おれはどう感じるやろうって、それがちょっとこわなった」
「覚悟してるよ、おまえのところに来る前に、覚悟はしてきた。おまえはもともとゲイじゃない。
これがきっかけで心変わりしたって仕方ないさ。おまえは何も悪くない」
「あほ、こんなことで心変わりしてたまるか、おれはおまえを好きやねんぞ、わかってるんか。
それに、おまえこそなんも悪くない、このことで絶対自分を責めたらあかんで、火村」

いい聞かせるようになんどか火村の肩の手に力がこもる。
もともと最後の際まで行くときっぱり男らしいのは、自分よりアリスの方だということは知っていたつもりだった。
押し付けられた胸の奥から聞こえるようなアリスの声と、抱きしめてくる手の温かさ確かさに、深い安堵感と守られているという喜びが火村の胸の奥から沸いてきた。
男の性でいたならきっと素直には受け入れられないこの状況が、今はこのまま委ねることに抵抗はなかった。心の底から、この男を好きでよかったと火村は思った。

「アリス、好きだ」

火村の言葉にアリスのからだが動き頭が離れた火村は、アリスの顔が間近にあるのを見た。



「おれも好きや、火村、抱いていいか?」



問うてくるアリスの顔は今まで見たことのないほど男っぽく、火村は引き絞られるような甘い疼きで胸が苦しくなった。
火村は返事の代わりにその唇に口付けた。







アリスに一方的にされる、というのは変な感じだと火村は思った。
これまでアリスとのセックスで自分が受け入れる方にまわったのは、数えるほどしかない。
その時でも、これほど丁寧に愛撫を施された事はなかった。
女の肉体になって男と性交したのは17歳が初めてで、あの時はほとんど自棄的な気持ちから勢いで誘ってきた男とセックスしたのだが、快楽とは程遠いただ苦痛だけが残る行為だった。
女としての快楽の開発を試みる余裕などなく、その行為で男に戻った事の方が強烈な記憶として残っている。



男のからだがこれまでの経験以上に性感帯を持っている、ということはアリスとセックスするようになって初めて知った。
アリスが感じている顔や、からだに顕著に現れているさまを見るだけで興奮したし、男同士ゆえの的確な愛撫は女から受けるそれよりも数倍心地いいものだった。
だが、今受けているこのとろけるような、足の先から痺れるような全身に快楽が走るこの官能は、生まれて初めて感じるものだ。



アリスは決して強く乳首に吸い付いたり、強引に陰唇に指を差し入れたりしなかった。
まるでこわれものに触れるように、やわらかく、それでいてポイントでは声をあげるほど、一点に集中して愛撫してきた。


火村は、声をあげていた。

恥かしいとか、躊躇する間もなく、自分でも信じられないほどそれは自然に出た。

息を吐かないと息苦しくなり、その延長で声がもれてしまったのだが、一旦出てしまうと止めるのは難しかった。

自分の声が他人のもののように聞こえるのが、せめて救いだった。
女性器がずくずくに溶けて形もなくなったのではないか、と思えるほどどうしようもなくなってから、アリスは火村の中に侵入してきた。
火村があげる声はより高く切迫して、映画の効果音のように遠く自分の声を聞いていた。


アリスは挿入してからは男の本能をむき出しにし、激しく突いてきた。
その動きに息もつけずに、叫び声に近い嬌声を上げた。
目を閉じ、からだの感覚だけでアリスを感じていた。
皮膚で感じる生身のアリスに、心より深いところをえぐられている感覚がした。
アリスの力強くて獣じみた律動に、自分よりも大きな存在に蹂躙される嗜虐的な悦びを肉体に受ける。





女のからだも悪くないと、初めて思えた。









朝、目が覚めると不自然に抱き込まれている事に気づいた。
からだを必要以上に折り、相手に密着させている。
火村は、自分がアリスに腕枕されて寝ていたことを知った。
はっとして自分の胸に手をやる。

手の平はぺたん、と平坦な形で触れた。

そのまま腰を被った毛布を引き上げ、下半身も確認した。
見慣れたムスコがやや頭をもたげているのが見えた。
当たり前のように生理現象が起こっているのが、おかしかった。


火村は安堵で、上半身を再びベッドに沈み込ませた。
かたわらのアリスを見る。
平和そうに眠っている。
目を閉じて眠りをむさぼる顔は、学生の頃とほとんど変わらない。
苦労とか努力とか、嫉妬とか暗い情を知らないお坊ちゃん育ちに見えることから、軽んじる人間もいたが
そんな連中は一生わからないだろう。



この男がどれほど勇気があって包容力があるか。
自分はどこまでいってもアリスにはかなわない。
自分の一番弱いところも、みっともなく情けないところも怯懦なところも知られている。



それでもアリスが自分から離れてはいかないことを、今は信じられた。
それは自惚れというより、信頼、その判断に確信をもてる自分に対する信頼でもある。
信頼する事で平穏がもたらされることを、アリスといることで教わったのかもしれない。



あと少し、ながめたらキスをしよう。
王子様を目覚めさせるキス。


目を開けた彼は自分を見て変わらず笑ってくれるだろうか。


愛の言葉をささやいてくれるだろうか。


その答えは、あと数秒であかされる。


火村は半身を起こし、その頬に手を添えて愛しいものの唇に口付けた。



「アリス、あいしてる」













07/12/23

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