「九条の会・わかやま」 481号 発行(2023年5月18日付)

 481号が5月18日付で発行されました。1面は、第107回「ランチタイムデモ」実施、OSAは「世界から尊敬される国」となるやり方なのか〈柳沢協二さんのウォッチ安全保障〉、九条噺、2面は、みなべ「九条の会」137回目のピースアピール 憲法記念日にはチラシ折り込みと街宣活動、「緊急事態条項」は不必要だ 現行憲法の下で法律を整備すれば済む話 小林節氏(慶応大学名誉教授)、公明党 自民の9条改憲案に反対表明 衆院憲法審査会で、朝日新聞世論調査(23年5月3日)  です
    ――――――――――――――――――――――――――――――
[本文から]

第107回「ランチタイムデモ」実施



 5月15日、第107回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」(呼びかけ:憲法9条を守る和歌山弁護士の会)が行われ、好天の下、60人の市民が参加しました。
 今回のコーラー役は重藤雅之弁護士でした。重藤弁護士は、「戦争する国絶対反対」「憲法守れ」「憲法壊すな」「9条守れ」「9条壊すな」「憲法9条子どもに残そう」「戦争ない国子どもに残そう」というコールを繰り返えして訴えられました。
 京橋プロムナードでは、4月16日に逝去された藤井幹雄弁護士とご縁があり、追悼のために初参加されたという方のご挨拶もありました。故人の遺志を受け継ぎ、大事にこのデモを続けていただきたいと思います。



(藤井幹雄弁護士の訃報に接し、ご冥福をお祈りいたします)

    -------------------------------------------------------------------

OSAは「世界から尊敬される国」となるやり方なのか
〈柳沢協二さんのウォッチ安全保障〉




 政府は、途上国の軍などへの支援を可能にする政府安全保障能力強化支援(OSA)の枠組みを決定した。従来の政府開発援助(ODA)を、戦略的に重要な地域・分野に振り向けるため近く改定される「開発協力大綱」と相まって、民主主義などの価値観と中国への懸念を共有する国を軍事的にも支援しようとするものだ。背景には中国に対抗する「同志国」ネットワークを拡大する意図がある。
 昨年末に閣議決定された国家安全保障戦略など安保関連3文書は、「自由で開かれた国際秩序に挑戦する中国」という図式で世界をとらえ、日本の繁栄のためには中国の影響力の拡大を防ぎ、同志国を増やさなければならないと目標を立てた。その流れに沿って、価値観対立を前提とした地政学的な外交上の優先度が決められている。当面の対象として東南アジアやインド洋、大洋州の国が挙げられているのもそのためだ。
 だが、日本の繁栄を妨げる経済の停滞は、過度な自由競争の結果であって中国のせいではない。戦争や気候変動によって危機にひんしている地域はアフリカや中東にもたくさんある中、地政学上の優先度を重視する姿勢は正しいのか。そこで必要なのは民主主義の価値観ではなく、戦争の停止と生きるための支援だ。
 日本は長年、ODAを通じ敵をつくらず、上から目線で価値観を押し付けず、現地のニーズに応える気遣いの支援をしてきた。その方針が大きく転換している。これが安保3文書が「国益」とする「世界から尊敬される国」となるやり方なのか、再考が必要だ。(東京新聞4月21日付)

    -------------------------------------------------------------------

【九条噺】

 日本維新の会は、統一地方選挙で首長や地方議員が774人になった。今回の選挙で当選したのは599人。統一地方選挙以外の現職は175人。「統一地方選挙で600議席」を目標とし、目標を上回る結果となったが、505人が近畿2府4県で、269人がその他の地域だ▼日本維新の会は、「全国政党化」を狙うと言っているが、最大地盤である近畿での市長選で敗北している。お膝元の大阪では、取りこぼしも目立つ▼維新「躍進」の要因は、国民の自民党岸田政権への不満にあるのだろう。多くの国民が維新の政策の全容を十分理解せず、岸田政権に対抗しているかのように見えることに期待しているからではないか▼衆院和歌山1区補選で当選した林ゆみ氏の政策は、「身を切る改革」「子供・将来世代への徹底投資」「大胆な減税」「地方分権と地方の自立」で、受けの悪い政策は言っていない▼維新は、「安全保障の抜本強化とリアリズム外交」と述べ、「積極防衛能力」の構築(軍事大国化)、防衛費のGDP比2%への増額、最先端技術革新を踏まえた防衛力の整備。憲法改正は、「時代に適した『今の憲法』へ」と、自衛隊を憲法に位置づける「憲法9条」の改正、同盟国への攻撃にも反撃をする「核拡大抑止」、「緊急事態条項」の制定などを掲げている▼このような非常に危険な政策は声高には言わず、「何となく自民党より良さそうだ」と見せかける危険な政党だ。維新の本質を分かりやすく語り続けなければならないだろう。(南)

    -------------------------------------------------------------------

みなべ「九条の会」137回目のピースアピール
憲法記念日にはチラシ折り込みと街宣活動




 みなべ「九条の会」は5月6日、137回目のピースアピールを9名の参加で実施しました。
 「ウクライナ侵略などで、日本の安全保障環境は大変厳しいものがあります。岸田政権は大軍拡を進めようとしています。その目的は、敵基地攻撃能力の保有です。政府自ら『専守防衛』を踏みにじるものです。軍拡競争は戦争の危機を招きます。憲法を活かし、近隣の国々との対話と外交で紛争の芽を取り除く日本にしていくべきではないでしょうか」と訴えました。
 また、5月3日の憲法記念日にはチラシの新聞折り込みと街宣活動を実施しました。(会の平野さんより)


(折り込みチラシ B4判2面)



    -------------------------------------------------------------------

「緊急事態条項」は不必要だ
現行憲法の下で法律を整備すれば済む話
小林節氏(慶応大学名誉教授)




 1955年の結党以来、自民党は憲法改正を党是としてきた。その一番の狙いは9条の改正である。12年に党議決定された改正草案に明記されているように、自衛「戦争」と「国防軍」を認めて、普通の軍事大国になることを目指している。
 しかし、9条改憲には国民の抵抗感が強いため、まずは国民の過半数が賛成しやすいものから「お試し改憲」をということで「緊急事態条項の新設」に焦点が移った感がある。
 それに対して維新と国民民主が同調する動きを示したために、今年は史上初の改憲国民投票が提案される可能性がある。
 しかし、この提案は後述するように全く不必要なもので、こんなもののために800億円もの国費を使って、2カ月以上もの公論のために政治的空白をつくることは無駄である。
 自民党の広報資料は次のように説明している。「有事や大規模災害の時に国民の生命、財産を保護することは国家の最も重要な役割である。しかし、日本にはそのための規定がないから、それを憲法に明記しよう」
 しかし、現行憲法は、12条と13条で、人権も公共の福祉に譲らなければならない場合がある旨を明記している。だから、非常時(戦争、大災害、パンデミック)には、国家の機能を維持するという「公共の福祉」のために、人権を制約できる法律(国民保護法、災害対策基本法、感染症対策基本法等)が現に整備されている。だから、改憲を行う必要などない。  もちろん、東日本大震災、コロナ・パンデミック等の実体験に照らしてそれらの法律を整備する必要は常にある。
 自民党が12年に党議決定した緊急事態条項は要するに次のものである。「首相が緊急事態を宣言したら、首相は、本務の行政権に加えて、国会から立法権と財政処分権を奪い、地方自治体に対する命令権も持つ。さらに、私たち国民は公の命令に従う義務を負う」。まるで首相に対する全権委任法である。
 このように、自民党が考えている緊急事態条項は、現実に不必要なだけでなく、極めて危険なものでもある。つまり、提案されてきたら否決する以外にない代物である。(日刊ゲンダイDIGITAL4月27日)

    -------------------------------------------------------------------

公明党、自民の9条改憲案に反対表明
衆院憲法審査会で


 公明党の北側一雄副代表は4月20日の衆院憲法審査会で、自民党の4項目の憲法改正条文案(たたき台)のうち、自衛隊を明記する9条改正案に「賛成できない」と述べた。公明が自民の条文案に明確に反対したのは初めて。今後の憲法審での議論に影響を与えそうだ。
 自民は9条1項、2項をそのまま残し、「9条の2」を新設して自衛隊を明記する条文案をまとめている。「9条の2」に、9条の規定に関して「必要な自衛の措置をとることを妨げず」と記述している。
 北側氏はこれについて「(自民側は)『妨げず』はあくまでも(戦力不保持の)9条2項の範囲内にあると述べているが、『妨げず』を例外規定として使用する法律は数多くある。9条2項の例外規定と読まれる余地を残すことになり、賛成できない」と主張した。公明は自民の条文案では、自衛隊の活動が際限なく拡大しかねないと警戒している。(毎日新聞4月21日付)

    -------------------------------------------------------------------

朝日新聞世論調査(23年5月3日)



【23年】
変えないほうがよい 55%(昨年59%)
変えるほうがよい  37%(昨年33%)

憲法9条は、まだ「変えないほうがよい」が多数ですが、「変えるほうがよい」が増えてきています。一層のがんばりが求められています。

    ―――――――――――――――――――――――――――――
(2023年5月17日入力)
[トップページ]