「九条の会・わかやま」 486号 発行(2023年7月22日付)

 486号が7月22日付で発行されました。1面は、「和歌山市ひがし9条の会」が第16回総会開催 7・9和歌山大空襲の日を前に、人の心の中に平和の砦を築かなければならない(飯島滋明氏 ③)、九条噺、2面は、「2023平和のための戦争展わかやま」開催、みなべ「九条の会」138回目のピースアピール   です。
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[本文から]

「和歌山市ひがし9条の会」が第16回総会開催
7・9和歌山大空襲の日を前に




 7月8日、和歌山市・東部コミュニティセンターで「和歌山市ひがし9条の会」の第16回総会が開催されました。事務局から情勢、活動報告、活動方針の提案があり、参加者によって採択されました。
 今年の総会は、「7・9和歌山大空襲の日」の前日にちなんだ企画をと考え、総会後は、昨年、新婦人の会和歌山市支部で作成した戦争体験文集「私と戦争」より3編を選んで、生々しい戦争体験を会員が朗読しました。朗読の間、和歌山県平和委員会の松坂美知子さんに、アコーディオンで演奏していただきました。
 その後、同じく和歌山県平和委員会の松本弘子さんに「いま、平和を考える」と題して記念講演をしていただきました。安倍政権以降いかに平和を脅かす政策がすすめられてきたか、また、そのために暮らしも破壊されているということを詳しい資料を提示しながら話されました。
 戦争を起こさせないためには、日本国憲法を守り、9条を活かして積極的な平和外交を進めることが重要であると強調されました。私たちに何ができるかということを、身近なことから政治や選挙に至るまで具体的に提起されました。身近なことでは、学習やさまざまなアピール活動をしようと話され、自身が身に着けているかわいい9条ブローチや、松本さんが大好きなネコをモチーフにした9条アクセサリーも紹介されました。
 会場からも、和歌山空襲や戦中戦後のつらい体験が話され、改めて平和のためにできることをしていこうと、参加者一同で確かめ合いました。



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人の心の中に平和の砦を築かなければならない

 6月11日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第19回総会」が開催され、名古屋学院大学教授(憲法学)・飯島滋明氏が「今こそ憲法を輝かせよう~「敵基地攻撃」で戦争をする国になってはならない~」と題して講演をされました。その要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は最終回。

飯島滋明氏 ③



 仮に日本に対する攻撃をしようとする国がある時、日本から先にやってしまえとなったとしたら、ロシアには核ミサイルがあり、1~2発撃ったらとんでもないことになる。中国には350発あり、これを全部攻撃することは不可能だ。北朝鮮も移動式のミサイルがある。防衛省もそれを発見して攻撃するのは無理だと言っている。もし、やるなら相手のミサイル基地を全て叩かないと、当然報復攻撃がある。しかも、相手は全て核を持っており、そんな危険性がある。こういう話をすると自民党の人たちは「安保3文書」の一つ、国家防衛戦略では、実際にそういうことをするのではなく、日本はミサイルで撃つぞと脅せば、向こうもやってこないだろうと言っている。これを抑止力という言い方をしている。「安保3文書」で外国攻撃が出来るというが、本当に抑止力は働いたのか。北朝鮮は今、ミサイルを撃っていると言われているが、今、日本で北朝鮮は怖いということにはなっていない。だから「敵基地攻撃能力」などということが出て来ている。しかし、北朝鮮では日本が怖いから止めるということになっていない。産経新聞によれば、北朝鮮が「安保3文書」を「日本の新たな侵略路線の公式化」とみなし、強力な対抗措置を取ると言っている。ロシアは日本の軍事化はロシアやアジア太平洋地域への深刻な脅威だと言っている。そして、対抗措置を取らざるを得ないと警告したと言っている。
 軍事費は、今まで5兆5千億円ぐらいだった。昨年6月の東京新聞では、もし5兆円をさらに増額させられるのなら、そのお金をこういう使い方に向けた方が良いのではないかと報じた。大学授業料無償化で1・8兆円、児童手当の高校までの延長・所得制限の撤廃で1兆円、小・中学校の給食無償化で4386億円、年金受給者全員に1年間12万円増額で4兆8612億円、公的保険医療自己負担ゼロに5兆1837億円。どちらが有効な使い方なのか。アメリカのグローバルフォークのような古い兵器を買わされているが、実際にはこれは使えない。イラク戦争の時のもので、陸上を監視することにしか使えない。いろんな無駄なことをさせられている。
 アメリカの軍事費は2021年で7320億ドル、中国の軍事費は2610億ドル、日本の軍事費は476億ドルで、これを2倍にすれば、世界第3位になる。日本が軍事費を2倍にすれば、952億ドルになるが、これで中国に対抗できるのか。日本が軍事費を2倍にしても、中国には対抗できない。中国とは軍事の面だけでなく、経済の面でもそれは言えるかと思う。昨年10月22日の日経新聞は、中国との関係を断った場合、年間約14兆円の損失になる。日本の食料自給率は約38%で、日本の食卓に並ぶ野菜や加工魚の5割強は中国産だ。中国との関係がうまく行かないと大変なことになると報じた。朝日新聞の記事によると、中国に原料を依存する抗生物質が足りなくなる。そうなったら感染症で患者らの死に直結する。だから、経済的な面を考えても中国と戦争などはできない。今年3月に石垣島に自衛隊が配備されたが、その時の記念の会食で引き出物に出されたマグカップに中国製の印字があった。ブラックユーモアのようだが、経済関係はここまで浸透している。
 ではどうするのか。ユネスコ憲章前文には、戦争は人の心の中に生まれるものだから「人の心の中に平和の砦を築かなければならない」と書かれている。「戦争は絶対にいけない」という気持ちを一人でも多くの市民に定着させることが、戦争防止につながる。国連憲章の「武力不行使の原則」や日本国憲法の「平和主義の理念」を広める取り組みが極めて重要だ。平和外交を求める取り組みについて、坂本龍一氏は「戦争は外交の失敗と定義されている。攻めてきたらどうするのかという人がいるが、攻められないようにするのが日々の外交の力だ。それを怠って軍備増強するのは本末転倒」と発言されている。沖縄・玉城デニー知事は「戦争をしないことが、住民を守る一番の政治的手段」と言っている。憲法の前文には平和的生存権が保障されている。「恐怖と欠乏から免れ」とあり、殺されるかもしれないのは、平和的生存権の侵害であることは間違いない。だからミサイルで対抗するのではなく、外交的手段で対応する必要がある。
 学生、若い人は新聞などを見ていない。何故かというとインターネット、SNSだ。これらには、「武力より外交」「憲法の平和主義を守れ」「沖縄が戦場になる」などの発言に批判的なコメントが多く、こうしたコメントに影響を受ける人も多い。
 アメリカのラザースフェルドの「コミュニケーションの2段階の流れ」説を紹介したい。「労働組合などの中間団体の少ない社会では、『原子化された個人』は精神的に不安定になるために、マス・メディアが直接個人に強い影響を与える」「中間団体が多々存在している多元的社会では、マス・メディア以上に中間団体のオピニオン・リーダー(中間団体で他の人よりもマス・コミに多く接し、事情に詳しい人)の影響の方が強い」と言う。だから、「憲法の学習会の開催は重要!」「私たちが市民に働きかけることが重要だ!」と言いたい。(おわり)

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【九条噺】

 NHKテレビ小説『らんまん』で、主人公たちは新種の植物に学名を付けることに成功した。学名「Theligonum japonica Okubo et Makino」には発見者の牧野と大久保の名前が入っている▼当時は新種名を付け発表する争いのようになっていたのか。ところで、学名はラテン語だ。「Theligonum」は「ヤマトグサ属」のことだそうだ▼学名と言えば、シーボルトがアジサイに「Hydrangea Otaksa」(ハイドランジア オタクサ)という学名を付けて西洋に紹介した。「オタクサ」は長崎で彼が愛した日本人妻の楠本滝(オタキさん)の名前だったが、先に別の名前が登録されており、登録できなかったという逸話が有名だ。しかし、長崎では今年も「ながさき紫陽花(おたくさ)まつり」が開催されている▼日常会話は学名ではできないので、標準和名が付けられる。和名は山ほどあることがあり、標準和名になったもの以外は別名と呼ばれる▼別名の多さで有名なのはヒガンバナだ。ヒガンバナの別名は何百種類もあるというから驚きだ▼よく知られたものに「曼珠沙華」がある。これは梵語で「天上に咲く花」という美しい名前だ。「ハミズハナミズ」という面白いのもある。これは「葉見ず、花見ず」で、花が咲いている時に葉はなく、葉がある時には花がないということだそうだ。「死人花」という恐ろしげな名前もある。これは墓地によく咲いているからという説もある。花の名前を見ているだけでも面白いことが多い。 (南)

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「2023平和のための戦争展わかやま」開催



 和歌山県内に残る戦跡や戦争に関する資料を紹介する「平和のための戦争展わかやま」が7月15~16日、和歌山市のプラザホープで開催され、展示や落語、講演会が行われました。
 この展示会は、実行委員会が、戦争の悲惨さを伝え、人の命の大切さや平和の尊さを訴えようと毎年開いているものです。
 軍隊手帳や戦時中の衣服など県内の遺族から提供された遺品の展示をはじめ、今年は、紀伊半島西部を走る紀勢線の線路敷設工事に従事した朝鮮人労働者の実態を示す記録や写真のほか、太平洋戦争直前の中国で従軍カメラマンにより撮影された写真などが展示されています。
 また、展示会にあわせて初日は、和歌山市のアマチュア落語家、ゴスペル亭パウロさんが、「私の名前は第五福竜丸」という落語を披露し、1954年3月にビキニ環礁で行われたアメリカの水爆実験で被ばくした第五福竜丸が、3度にわたる廃船の危機を乗り越え、東京・夢の島に展示されるまでを描きました。
 また、この後、京都精華大学専任講師の白井聡さんが「自衛隊 専守防衛をなげすて米軍とともに敵基地攻撃!」と題して講演を行いました。白井さんは、「日本は、この30年間、政治や経済政策、外交で最悪の選択肢ばかりを選んできた経緯があり、このままいくと、十中八九、中国と戦争をすることになる。これを回避する方法は、このままでは戦争になるということに多くの人が確信を持つこと。そんなことが起きるはずはない、と思っている限り、戦争は起きてしまう」と指摘しました。(「wbs和歌山放送」HPより)
 (白井聡さんの講演要旨は次号に掲載予定)

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みなべ「九条の会」138回目のピースアピール



 もし、台湾有事になると、真っ先に攻撃されるのは、ミサイルが配備されている沖縄・南西諸島です。その沖縄ではどのようなことが起こっているのか、沖縄と戦争をテーマに取材を続けている映画監督の三上智恵さんの映像を、8月18日から22日まで、町内5カ所で上映会を予定しています。是非ご覧くださいと訴えました。

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(2023年7月21日入力 25日修正)
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