「九条の会・わかやま」 494号 発行(2023年11月15日付)

 494号が11月15日付で発行されました。1面は、「第20回憲法フェスタ」開催 守ろう9条 紀の川 市民の会、若者とどう向き合うのか 石川康宏さん(神戸女学院大学名誉教授)、九条噺、2面は、つなごう憲法いかす未来へ 「11・3憲法大行動」4000人、国会前に立ち続ける澤地久枝さんの譲れない願い  です。
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「第20回憲法フェスタ」開催
守ろう9条 紀の川 市民の会


 11月11日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第20回憲法フェスタ」が和歌山市・河北コミュニティセンターで開催され、約100人が参加しました。
 午前10時からの「展示の部屋」では会員の人形・押し絵・絵手紙などの趣味の作品が賑やかに展示され、会員同士が交流しました。



 例年実施している「リサイクルひろば」も開かれました。いらなくなった物をみんなが持ち寄り、気に入った物があれば持って帰ってもらいました。



 恒例の「映像の部屋」は、「第18回憲法フェスタ」でも上映した中村哲医師が遺した文章と記録映像による現地活動の実践と思索を伝える『荒野に希望の灯をともす~医師・中村哲 現地活動35年の軌跡』を上映しました。
 午後1時30分から多目的ホールでメインプログラムが行われました。
 最初に原通範代表から開会の挨拶があり、「イスラエルのガザ侵攻は決して正当化できない。米国に追随し、停戦への主導性を何ら発揮できない日本の責任も問われる」と訴えられました。



 第1部は結成25周年の「うたごえオールスターズ」の合唱です。「7月9日みぎわ広場」「辺野古崎ぬ風に吹かり」など、素晴らしい合唱を披露しました。



 第2部は武蔵野美術大学教授・志田陽子氏が「平和への自由と表現の自由~私たちの知る権利と語る権利は?」と題して講演をされました。志田氏は、「今、世界では、戦争・武力紛争が連発し、軍事政権や武装勢力による民間人への人権侵害も絶えず起きている。日本では、自国の憲法を考えずに軍事強化に乗り出す動きが本格化している。『軍備を増強して抑止力をもてば安全』という誤った安心感に依存することが最も危険なことだ。その安心感が、思考停止と『言論の不自由』につながっている。憲法はそういうときのためにあるということを考えたい」と、途中〝歌う憲法学者〟の名の通り、ご自身の動画「ダニーボーイ」を披露しながら話されました。



(次号以降に講演内容の概要を掲載予定)



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若者とどう向き合うのか
石川康宏さん(神戸女学院大学名誉教授)




育った時代の違いに注意

 世代が時代を反映した特徴を持つのも事実です。たとえば1990年代後半から「勝ち組・負け組」「自己責任」論が吹聴されたことです。学校でも就職でも若者同士の人間関係でも、過酷な競争を余儀なくされました。教室の中にカースト(上下関係)があり、「ぽっち」を知られたくないので「便所飯」というのも実際に起こっていることです。「自分の力で生きるのが当り前」「どんな結果も自己責任」とされ、「困ってるから助けて」とは言いづらくなった、そんな社会的圧力の強い時代です。非正規雇用が広まり「みんなそうだよ」と、それが「普通」になっています。物心ついた時からそうなので、それを「異常」「過酷」とは思えない。それが若者の生活満足度の高さに現われたりもしています。

ホンネで話せる関係をつくる

 私の大学での経験をお話しすると、「何を言っても受け止めてもらえる」と確信してもらうまでが一苦労です。それまで教育で「先生が正しい」「先生が期待する答えはなんだろう」と考えることが習慣になっている学生が少なくありません。そこで、教師の顔色をうかがうことなしに自分の意見を言っていいんだと、それを繰り返しの経験を通じて理解してもらうことが必要になるのです。その過程で大切なのは一人一人を尊重し、それぞれの話を「よく聞く」ということです。年寄りの昔話、自慢話、説教はどんなに長い時間聞かせても、相手の心を開かせることにはつながりません。
 私が役員をしている日本平和委員会には、若者が企画し運営するピース・エッグという取り組みがあります。今年の参加者の感想で注目されたのは「何を言っても受け止めてもらえる」ことへの喜びや安心感の表明が多かったことでした。「オマエは間違っている」「それじゃだめ」と頭ごなしに否定される体験がそれほどに多いということでしょうね。

「社会は変わる」の事実を伝えて

 他方で、若者にぜひ届けたい知識もあると思っています。「社会は変わるし、変えられる」「いまの状況はひどいよ」ということを、客観的な事実としてとらえてもらうためにです。
 たとえば戦後の政治史や社会史ですね。ストライキをつうじて賃金があがった時代、日本がアメリカの軍事戦略により深く巻き込まれていく過程、ジェンダー格差の是正をめざした取り組みなどなど。日本社会が変化してきた事実を知ってもらいたい。
 もう一つは本当の「先進国」の到達です。日本はいかにも「衰退途上国」ですが、同じ地球上に日本よりずっと生きやすい社会がある。たとえば北欧では学費無料が当たり前です。デンマークではすべての大学生・院生に月10万円の奨学金がプレゼントされます。医療も介護も基本無料です。日本ではカネで買うのが当たり前ですが、北欧では教育・医療・介護は政治が責任をもって市民に提供するものとなっています。日本の現状は「普通」じゃないということを事実で知ってもらいたい。ベテランも一緒に学ぶ機会を持ちたいですね。
 いわゆる若者の保守化は「せめて今ある生活は守りたい」というもので、別に政治意識が右傾化している訳ではありません。安倍政権には支持が高かったですが、岸田政権には若者の方が支持率が低くなっています。「いざとなれば戦争に行きます」という比率はとても低いです。ただし、自己責任しか語らず、汚職・腐敗ばかりの政治を前にして、「政治には何も期待しない」「だから知りたいとも思わない」という気分が広がってきたのも事実です。そこに「でも今のままじゃ困るよね」「特に戦争と気候危機、ジェンダーギャップはみんなに関わるから」と心に届くはたらきかけが必要です。
(『全国革新懇ニュース』2023年・10月号より抜粋)

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【九条噺】

 今回は「蚊」の話だ。我家は窓・戸に全て網戸を付けているが、それでも室内に蚊が入ってくる。人が出入りする際に風に吹かれたりして入ってくるのだろう▼例年は真夏の7月末~8月にかけて、寝ている時に耳元で「プーン」という音が聞こえ、蚊とのたたかいが始まる。今年は一向にその「プーン」が聞こえることがなかった▼ところが10月10日になって、「プーン」が始まった。慌てて電気蚊取器をオンにして対応する始末だ。何故秋の10月になって蚊が出てきたのか。10月5日付の朝日新聞によると、今年は真夏の気温が高過ぎて蚊が活動できず、秋になって活発になっている可能性があるという▼本州で人間をよく刺すのは「ヒトスジシマカ(ヤブ蚊)」と「アカイエカ」。25~30度で活動が活発になり、35度以上で活動を弱めて木陰で休む傾向にあるという。今年は連日35~40度の日が続き、蚊も木陰で休んでいたのだろう▼蚊は、メスだけが産卵のための栄養源として吸血し、オスは吸血しない。人が出す炭酸ガスや皮膚のニオイ・温度を感知して吸血源を探し求めるとのこと。蚊に刺された時のかゆみは、吸血の際、抗凝血作用物質を含んだ唾液を注入され、この唾液によってアレルギー反応を起こすためだそうだ▼もっと恐ろしいのは、蚊に刺されることによる感染症だ。日本脳炎、デング熱、マラリアなどがある。今年の猛暑をもたらしたのは地球温暖化だ。地球温暖化は、こんなところにまで魔手を伸ばしている。(南)

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つなごう憲法いかす未来へ
「11・3憲法大行動」4000人




 日本国憲法公布から77年となった11月3日、総がかり行動実行委員会と9条改憲NO!全国市民アクションが国会前で集会を開き、平和憲法を守るよう訴えました。主催者発表で4000人が集まり、政府の防衛費増額方針やパレスチナ自治区ガザの情勢への対応を批判。「平和的生存権を保障する憲法を生かそう」と声を上げました。
 政府は昨年末、国家安全保障戦略など安保関連3文書を改定し、敵基地攻撃能力の保有にかじを切りました。集会では、総がかり行動実行委員会の藤本泰成共同代表が、ウクライナ侵略、パレスチナでの紛争を止めるため「世界が考えなくてはいけないのは平和主義の具現化だ。報復でない努力が必要だ」と強調しました。日本体育大の清水雅彦教授(憲法学)が「3文書が目指す自衛隊は政府の従来解釈と矛盾している」と指摘。「外交で他国から攻撃されないようにすれば良く、憲法9条は無力ではない」と訴えました。立憲民主党、日本共産党、社民党、れいわ新選組、「沖縄の風」の国会議員があいさつをしました。

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国会前に立ち続ける澤地久枝さんの譲れない願い



   米国の言いなりに防衛費を増やし、〝台湾有事〟への危機感を煽って沖縄周辺の島々を軍事の島へと変えていく。改憲を視野に入れ、「戦争ができる国」へと日本が変容させられていく中で、93歳のノンフィクション作家、澤地久枝さんの「不戦」の旗はいよいよ鮮明になる。安倍政権下の2015年秋に成立した安全保障関連法に反対して始めた国会前のスタンディングデモは9年目に。折れない意志を貫き、国会前に立ち続ける澤地さんには、譲れないひとつの願いがある。「イスラエルは侵攻やめろ」「軍拡増税、改憲発議NO!」「放射能汚染水を捨てるな」。日本国憲法が公布されて77年の11月3日、国会前の歩道に約200人が集まった。午後1時。悪政に抗議を込めたカードを一斉に掲げた。参加者のスピーチに続いてマイクを握った澤地さんが語りかけた。「日本の政治は戦争前夜に向かっている。岸田総理は今、フィリピンに防衛装備品輸出の件などで行っていますが、それが間違いであることをここに集まる人の思いとして示したい。先にあるのは戦争です」(東京新聞4日号より)

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(2023年11月14日入力)
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