「九条の会・わかやま」 495号 発行(2023年11月22日付)

 495号が11月22日付で発行されました。1面は、「安保3文書」をめぐる憲法上の視点(志田 陽子 氏 ①)、第113回「ランチタイムデモ」実施、九条噺、2面は、伊都・橋本「9条平和まつり」賑わう!、みなべ「九条の会」141回目のピースアピール、時事通信世論調査(23年11月17日)  です。
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「安保3文書」をめぐる憲法上の視点

 11月11日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第20回憲法フェスタ」が開催され、武蔵野美術大学教授・志田陽子氏が「平和への自由と表現の自由~私たちの知る権利と語る権利は?」と題して講演をされました。講演要旨をレジュメから3回に分けてご紹介します。今回は1回目。

志田 陽子 氏 ①



 今、世界では、戦争・武力紛争が連発し、軍事政権や武装勢力による民間人への人権侵害も絶えず起きています。日本では、自国の憲法を考えずに軍事強化に乗り出す動きが本格化しています。「憲法9条は死んだ」と述べた識者もいましたが、主権者の判断を経ずにその宣告を下すことはできません。憲法を改正するかどうかを決定する資格は主権者にあります。
 主権者・国民が憲法について実際に決断をする、そのために受け身の勉強を超え、判断のための熟議をする。日本は今、そういう「憲法政治」の段階に入ってきたと思います。
 こうした中で、私たちが「軍備を増強して抑止力を持てば安全」という誤った安心感に依存することが、最も危険なことではないでしょうか。そしてその安心感が、思考停止と「言論の不自由」につながっていないか。それがなぜ危険なのか、そして憲法はそういうときのためにあるということを、ともに考えたいと思います。
 2022年12月に、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」という3つの文書が閣議決定され、公表されました。これらは通称「安保3文書」ないし「防衛3文書」と呼ばれています。この内容が、日本を攻撃しようとする他国の軍事基地を攻撃するという「敵基地攻撃」を含むものであることから、日本の安全保障のあり方をさらに変えるものとなります。
この「安保3文書」をめぐる憲法上の問題を考えるにあたっては、視点を次の4つに整理することができます。
 1つ目は安全保障問題そのものについてです。「安保3文書」と呼ばれている文書に表れた政策内容が、そこに暮らす人間の生命・安全を守る政策と言えるのか、従来の日本国憲法の枠内とされてきた路線と大きく異なる政策を採用しなくてはならない事情が本当に存在するのか、という問題です。
 2つ目は、このことと法との関係はどうなるか、という視点です。自国の憲法と国際法に違反することにならないか、憲法に反するとしたら憲法改正をするのかどうか、という問題です。
 3つ目は、決定のあり方と国民の知る権利、参政権についてです。採用された政策が、現行の憲法と相容れないものだとしたら、憲法改正の手続きが必要となります。これが行われず、閣議決定主導で政策実現が進んでいくことは、国民主権と民主主義に反する進め方になっていないか、という問題てす。
 4つ目に、財政、ないし国民生活とのバランスの問題です。真に必要な政策・予算なのか、どのように調達するのか、国民の現実のくらしのための予算とバランスがとれているかなどを問う視点です。2022年12月の「安保3文書」では、今後の防衛費をGDP比2%に倍増する方針が示されたため、財政問題がクローズアップされることとなりました。日本国憲法上の重要な原則として、「財政民主主義」があり、財政については国会で審議された上で決めるのでなくてはならず、その前提として、国民の合意がなくてはなりません。そこが理解された上で政策決定が行われるのかどうかという問題です。
 個人が社会の中で生きていく上でも、国が国際社会の中で存続していく上でも、友好・助け合いのモードと警戒・自己防衛のモードの両方を使い分けていると思います。攻撃型・戦闘型の軍事に莫大な予算をかける一方で、他国の戦争被害者を難民として受け入れることには無関心ということになれば、国としての品格は低いものとなり、憲法前文の「平和のうちに生存する権利」が見ているのとは逆方向になります。(つづく)

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第113回「ランチタイムデモ」実施



 穏やかな秋日和の11月16日、第113回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」(呼びかけ:憲法9条を守る和歌山弁護士の会)が行われ、60人の市民が参加しました。
 この日のコーラーは戸村祥子弁護士で、先日の「憲法9条を守る交流集会・和歌山」の準備に忙殺されていた戸村弁護士ですが、この日は元気に「憲法生かして平和を守ろう」「平和な未来を子どもに残そう」「憲法9条未来に残そう」とコールしながら先導しました。
 ゴール地点では、由良登信弁護士から、18日午後2時から、和歌山城ホールで開かれる、和歌山弁護士会が主催する講演会「戦争を回避するためになにをすべきか~憲法9条を生かした平和外交を考える」への参加の呼びかけがありました。



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【九条噺】

 「ハイパーカミオカンデ」建設現場が報道関係者に公開された。観測に使う水の量は「スーパー」の8倍、大型超高感度光センサーが4万個取り付けられ、ニュートリノを8倍検出できるとのこと。「ハイパー」は27年観測開始を目指している▼ニュートリノは物を構成する最小単位の素粒子で、電気を帯びておらず他のものとくっついたり反発しないため、ぶつかっても影響しない。非常に小さく、原子の中も通り抜け、1秒間に約百兆個が人体を通り抜けているとのこと▼物質とめったに反応しないニュートリノも、原子核や電子とぶつかると光を発することがある。宇宙線は地球に届くまでにガスなどの影響を受け方向を変えるが、ニュートリノは真直ぐ飛んで来る▼東京大学の小柴昌俊教授は「カミオカンデ」で、超新星爆発で放出されたニュートリノ検出に成功し、梶田隆章教授(日本学術会議前会長)は「スーパー」でニュートリノに質量があることを発見、ノーベル賞を受賞した▼電磁波、ガンマ線、重力波などと協調して観測する「マルチメッセンジャー天文学」も注目されており、異なる対象の観測結果を総合することで発生源の解明に迫れるそうだ。梶田教授は「ハイパー」で「陽子崩壊」の初観測を期待。実現すれば物理学の「標準理論」を超える「大統一理論」が証明される可能性があり、間違いなくノーベル賞級の成果だとのこと▼岸田首相には軍拡ではなく、こんな分野を援助し、夢ある世界への貢献を要求したい。(南)

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伊都・橋本「9条平和まつり」賑わう!



 11月11日、橋本中央中学校体育館をお借りして、「憲法9条を守る伊都・橋本連絡会」主催で、2009年から続いて15回目を迎える「9条平和まつり」が開催されました。コロナ禍のために近年縮小されていましたが、今年は4年振りに全面復活し、200名以上の住民の皆さんと平和のありがたさをかみしめながら、賑やかに終日楽しみました。
 世界では今、いつ収束するとも知れない殺戮が繰り返され、我が国の岸田政権も、憲法9条を壊し、「戦争する国」づくりを露骨に進めています。平和運動にとって正念場を迎えている状況下で、かつらぎ町議・東芝弘明氏が、氏の父母の生々しい戦争体験談を交えながら30分の反戦メッセージを行い、参加者の共感を呼びました。
 老若男女8団体による舞踊・吹奏楽・和太鼓演奏等の舞台演技に会場は手拍子が響き、熱気に包まれました。広島基町高校生による原爆絵画の展示、各団体による飲食模擬店・バザー・紀北農芸高校の野菜即売も賑わいました。最後は、空くじなしの福引きで盛り上がり、平和を守る誓いを新たにしながら散会しました。
 開会直前、パレスチナ「ガザ」の子供たちへの支援が緊急提案され、2万3917円のカンパが寄せられました。早急にユニセフに送金されます。(伊都橋本9条連絡会事務局・植西祥司さんより)



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みなべ「九条の会」141回目のピースアピール



 11月3日、みなべ「九条の会」は、141回目のピースアピールを実施しました。  「日本国憲法は77年前の11月3日に公布され、国民だけでなく広く全世界に、日本は二度と戦争をしない、憲法9条で対話による紛争解決の道を示しました。戦後、この憲法が生き続けてきたから、他国に戦争をしかけたことも、他国からしかけられたこともありません。しかし、岸田政権は大軍拡を進めようとしています。その大軍拡の目的は、敵基地攻撃能力の保有です。これは、『他国を攻撃するような兵器を持つことは憲法の趣旨とするところではない』と言い続けてきた『専守防衛』を政府自らが踏みにじるものです」と訴えました。

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時事通信世論調査(23年11月17日)



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(2023年11月21日入力)
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