「九条の会・わかやま」 498号 発行(2024年1月1日付)

 498号が1月1日付で発行されました。1面は、今こそ憲法九条の精神で(「九条の会・わかやま」呼びかけ人・副島昭一さん)、那賀郡の会「第16回好きなんよ9条まつり」開催、九条噺、2面は、戦争と平和は 政治家や官僚に任せるな〈柳沢協二さんのウオッチ安全保障〉、書籍紹介『平和に生きる権利は国境を超える』パレスチナとアフガニスタンにかかわって  です。
    ――――――――――――――――――――――――――――――
[本文から]

今こそ憲法九条の精神で
「九条の会・わかやま」呼びかけ人・副島昭一さん


 猛威をふるったコロナ・パンデミックは世界的に見ても沈静化してきましたが、それと裏腹に、ロシアのウクライナ戦争そしてイスラエルのガザ侵攻による集団殺戮は、およそ文明社会とは相容れない残虐さを日々さらし続け、「人道的危機」を引き起こしています。
 10月7日のハマスによる突然の攻撃から始まったかのような捉え方がメディアで流されましたが、イスラエルの入植地拡大によって難民化したパレスチナ人の怒りを背景にしてハマスはその勢力を拡大してきました。
 イスラエルの入植地拡大は、米国をはじめとするヨーロッパ諸国によって支持され、日本政府も今回の事態に対しては基本的に米国に追随しています。本来なら憲法九条をもつ日本は停戦のために最も積極的役割を果たすべきです。
 しかし岸田政権の戦争準備への動きが加速化しているのが昨今の際立った特徴です。尖閣諸島だけでなく台湾有事をも日本有事と見なして、米国のために沖縄を前線基地にしていこうとしています。これまで事実上米軍の指揮系統下に置かれていた自衛隊の指揮系統をさらに推し進めてその一元化を図る、また核兵器禁止条約に参加しないどころかオブザーバーさえ派遣しない、もはや独立国とはいえない従属化が一層進んでいます。
 軍事を安全保障、軍事力を防衛力、兵器・武器を防衛装備品など用語の曖昧化の下に軍事力を強化しています。軍事力の拡大は相手国の軍事力をさらに強め、際限のない軍事力の拡大が国民の生命の危機と生活の窮乏化に導いていったことは、第2次世界大戦前の日本の歩んだ道です。日米の軍事同盟の強化は中国の人々に脅威を感じさせ、その世論を背景に習近平政権はますます軍事力を強化して、台湾周辺の軍事的緊張を高めています。
 領土を守ると主張する人々は国民の命と領土とどちらが大切と考えているのでしょうか。今や軍事力によっては国民の命はもちろん領土も守れない段階に立ち至っていることを認識すべきです。領土問題は外交によって解決する、例えば共同管理や利用に近い方式を双方の知恵で創造するのが九条の精神だと思います。  私は昨年秋福岡県朝倉市にある筑後川山田堰を訪ねる機会がありました。アフガニスタンで干ばつを克服するための用水路を建設中不幸にして凶弾に斃れた故中村哲医師がモデルにした堰です。中村医師は、生前、憲法九条があるから日本は武力で他国を侵略しない国として信頼されアフガニスタンで人道支援に打ち込めると述べていました。国会でも「自衛隊派遣は現地の人々の日本に対する信頼を崩しかねない。有害無益でございます」と陳述していました。私は山田堰のほとりに佇み改めてこの言葉をかみしめていました。
 さらに防衛について言えば、今や防衛の最大目的は人類の危機にまで至った地球温暖化と異常気象から人類を守るという段階になっています。かつてはSFの世界であって自分の生存中は関係ないだろうと考えていた人類の生存を守るという課題が現実のものになっています。そのための費用こそが防衛費であり、武器では人類は守れません。憲法九条の精神はそれに連なり、日本はその先頭に立つ使命があり義務があると思います。

    ------------------------------------------------------------------------




    ------------------------------------------------------------------------

那賀郡の会「第16回好きなんよ9条まつり」開催
戦争させない、しない。最大の力は憲法9条




 12月10日、4年ぶりに「那賀9条まつり」を粉河ふるさとセンターで開催しました。オープニングは、退職教員で構成する「クリスマス・ローズ」による演奏や歌で、みんな笑顔になってのオープニングになりました。
 続いての講演では、「憲法9条を守るわかやま弁護士の会」の畑純一さんに「戦争させない、しない。最大の力は憲法9条」のタイトルで講演をしていただきました。講演の中で、敵基地攻撃能力の保有や軍備増強で平和は守れるのか?という問いかけから、私たちの取る選択は憲法を生かして、「戦争させない、しない国」を目指す道しかないと確認し合いました。
 恒例の平和のリレートークでは、3名の方から発言してもらいました。1人目の青年は、祖母から聞いた戦争体験から自らが平和について学んだり、行動していることでした。2人目は中学校教師が、夏に取り組んだ平和学習「はだしのゲン」についての発表をしてくれました。3人目は戦争体験がつづられた作文の代読と、3名ともたいへんな好評を得ました。
 最後は、「みんなで歌いましょう」と年金者組合岩出・紀の川の歌声サークルの人が前に出て、3曲をみんなで合唱をしました。
 ウクライナやパレスチナのように武力攻撃されると、何の責任もない子どもや市民の多くが犠牲になり、一旦戦闘が始まると終わらせることが難しく、国連や世界は無力のように感じ、むなしくなる時もあります。しかし、私たちにできることはたくさんあるはずです。無言でいることは、現状を肯定してしまうことになります。これからも、「世界平和、岸田大軍拡反対! 憲法9条は世界の宝」を合言葉に行動し続けましょう。
(会の事務局・部家司好さんより)

    ------------------------------------------------------------------------

【九条噺】

 「世界経済フォーラム」から「世界男女格差報告書23年版」が発表されている。日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位で、前年の116位から9ランクダウンし、06年の公表開始以来最低だった▼国ごとのジェンダー平等達成度は、各国の男女格差を【政治】【経済】【教育】【健康】の4分野で評価し、指数にしている。「0」が完全不平等、「1」が完全平等を示し、世界全体の総合スコアは0.684だった▼日本の【政治】のスコアは0.057、順位は138位と最下位クラス。前年の139位から改善がみられていない。衆院議員の男女比131位、閣僚の男女比128位が大きく影響している▼【経済】のスコアは0.561(123位)で、男女の賃金格差は75位だが、管理職の男女比0.148(133位)が大きく影響している▼【教育】は0.997(47位)。前年は1.000(1位)と、男女平等だったが、今年は高等教育就学率の男女比が加わりスコアと順位を落とすことになった。【健康】は0.973(59位)。前年の63位から改善されている▼このように見てくると、日本のジェンダーギャップ改善には各分野での努力が必要だが、中でも一番の課題は、【政治】にある。国会議員の男女比、閣僚の男女比、最近50年間の行政府の長の在任期間の男女比の3項目があるが、ジェンダー平等を果たすために必要なのは、【政治】での男女比平等であり、その第一歩は男女同数の議員候補者擁立の義務付けではなかろうか。

    ------------------------------------------------------------------------

戦争と平和は、政治家や官僚に任せるな
〈柳沢協二さんのウオッチ安全保障〉




◆進んだのは「日米一体化」
 国家安全保障会議(NSC)は米国の同名の組織をモデルにつくられたが、大統領制の米国と異なり、議院内閣制の日本では最終的に政府方針は閣議で決める。屋上屋でNSCという閣僚の会議体を新設しても意思決定の迅速化にはつながらないと、設置当時も今も思っている。
 変わったのは、NSCの下に事務局の国家安全保障局(NSS)ができ、官邸と官僚機構の情報共有が進んだ点だ。一方、官僚であるNSS局長が首相に忖度して情報の重点や評価を編集するといったことが起きると、マイナスの効果が生まれる。米国でもイラク戦争の際は、開戦という大統領の意思に合わせて情報がゆがめられた。
 昨年12月にNSCが決定した安保関連3文書は、米国の国家安保戦略をNSSが焼き直し、岸田政権ではそれを政治が追認する形になった。「米国の発想がわが発想」という一体化は、対米追従か自主判断かを論じるまでもなく、もはや永田町と霞が関の常識になっている。他に選択肢がないというところで思考停止しているからだ。NSSは米国の意思を日常的に伝える装置という意味で、便利に機能している。
◆国民が「おかしい」と言える健全な常識を持てるかどうか
 (NSC所管の)防衛装備品の輸出ルール見直しも、米国のニーズがまずあって、それを実現するにはどうするかというところから議論が出発している。政治の側が「そんな輸出はできないから断れ」という判断にならない。
 揺れ動く国際情勢の中で、米国の意向がNSSを通じて還流され、政治が明確な思想を持たないために、官僚の作文を読んで答弁するという構図になっている。その結果、ここまで来たから次も仕方ないとずるずる進むのは、太平洋戦争に入っていった論理と同じだ。
 戦争と平和は、政治家や官僚に任せるにはあまりにも重大な問題だ。彼らの動きに対して、国民が「おかしい」と言える健全な常識を持てるかどうかが問われている。メディアの責任も、そこにある。(東京新聞12月5日付より)

    ------------------------------------------------------------------------

書籍紹介 『平和に生きる権利は国境を超える』
パレスチナとアフガニスタンにかかわって




世界最大の「天井のない監獄」ガザの人道危機が進む今、パレスチナとアフガニスタンの支援活動を続ける医師と法学者が現地訪問の経験から、〝平和的生存権〟と〝法の支配〟と、日本人の私たちがなすべきことを問う。
【目次】
第1章 緊急対談
    2023年10月7日のハマスの急襲とイスラエルの軍事行動をどうみるか(猫塚義夫×清末愛砂)
第2章 北海道パレスチナ医療奉仕団の活動を支える日本国憲法(猫塚義夫)
第3章 憲法研究者がなぜ国際支援活動にかかわるのか
    平和的生存権と法の支配へのこだわり(清末愛砂)
第4章 対談
      医師と憲法研究者の目に映るパレスチナとアフガニスタン(猫塚義夫×清末愛砂)
あとがき
-------------------------------
著者・編者:猫塚義夫・清末愛砂
判   型:四六判 184ページ
定   価:1,600円+税
発売年月日:2023年11月27日
出 版 社:あけび書房
TEL:03-5888-4142 FAX:03-5888-4448

    ―――――――――――――――――――――――――――――
(2023年12月30日入力)
[トップページ]