「九条の会・わかやま」 503号 発行(2024年3月7日付)

 503号が3月7日付で発行されました。1面は、「緊急院内集会-憲法審査会は、今!」開催 2月22日 「九条の会」と「総がかり行動」が、政策の大転換 憲法論議必要 【安保の行方】武器輸出を問う 青井未帆氏 学習院大教授(憲法学)、九条噺、2面は、言葉 緊急事態条項(3)、書籍紹介 『新しい戦前』この国の〝いま〟を読み解く、書籍紹介 『「核兵器廃絶」と憲法9条』、朝日新聞世論調査(2月18日)  です。
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[本文から]

「緊急院内集会-憲法審査会は、今!」開催
2月22日、「九条の会」と「総がかり行動」が




 岸田政権が憲法9条を踏みにじる大軍拡を強引に進めるなか、「緊急院内集会-憲法審査会は、今!」が2月22日、国会内で開催されました。主催は「九条の会」と「総がかり行動実行委員会」。集会では、派閥のパーティー収入をめぐる裏金事件で揺れる自民党に改憲を語る資格はないとの発言が相次ぎました。
 「九条の会」の小森陽一事務局長が開会挨拶を行い、「九条の会」結成を振り返りながら、今日の改憲を巡る危機的な状況を指摘し、「今日、学び合い、全国の仲間に伝えよう」と述べました。次に、参加した立憲野党の憲法審査会委員が挨拶。立憲民主党の近藤昭一衆院議員、日本共産党の赤嶺政賢衆院議員、社民党の福島瑞穂党首、沖縄の風の高良鉄美参院議員が、憲法審査会の様子とともに改憲阻止に向けた決意を語りました。
 そして、メインのスピーチ。「九条の会」世話人の浅倉むつ子早大名誉教授と同会事務局の高田健「許すな!憲法改悪・市民連絡会」共同代表がスピーチしました。
 浅倉氏は、安保法制の制定過程を例に、安全保障分野で女性の意見が排除されてきたことを解説。軍拡増税で国民の生活が破壊されていくとして、「戦争が始まったら決して止められない。だからこそ、戦争を始める準備をしてはならない」と強調しました。
 高田氏は、岸田文雄首相が自民党総裁の任期中に改憲に取り組む意思を繰り返し示し、今国会の施政方針演説では「条文案の具体化」を進めると表明したことを挙げ、現在の憲法審査会は「嵐の前の静けさだ」と警鐘を鳴らしました。憲法審査会を長年傍聴してきた経験から、「今が一番大変な時期だ。これを乗り越えれば、今一度この国を新しい戦前ではない時代に戻せる」として、国民的な運動に発展させる決意を表明しました。
(『憲法しんぶん速報版』2月26日号より)

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政策の大転換 憲法論議必要
【安保の行方】武器輸出を問う
青井 未帆 氏 学習院大教授(憲法学)




 「平和国家である日本が作った武器で人が死ぬのはおかしい」というのが、世の中の大多数の意見だったはずだ。(佐藤内閣が表明し、三木内閣が政府統一見解を示した)武器輸出三原則に代表される日本の抑制的な武器輸出政策は、戦争放棄や戦力不保持を定めた憲法9条を具体化したものと理解されてきたと思う。
 しかし、政府は今、武器輸出を日本にとって望ましい安全保障環境を作り出すための重要な手段と位置づける。平和国家としての歩みは変わらないとも主張しているが、今回の防衛装備移転三原則と運用指針の改定は、かつての日本の立場と百八十度異なる政策転換だ。それを憲法論議も経ずに行うのはおかしい。
 武器輸出三原則はもともと、安全保障目的で企業の経済活動を制約するものであり、非核三原則よりも具体的だったと思う。経済活動の自由より高次の価値として「平和国家」を置いていたのだ。このため、例えば、中東地域では、日本は欧州と違って歴史的な利害関係がないため、「血塗られた手」ではなく、クリーンハンドで交渉することができた。抑制的な武器輸出政策は日本への信用につながり、大きな財産だった。
 しかし、1983年に米国への武器技術供与を例外として認めた中曽根内閣のもとでじわじわと輸出が始まり、民主党の野田内閣が2011年に国際共同開発・生産などでの輸出を容認し、「原則と例外」が逆転した。14年に安倍内閣が武器輸出三原則を撤廃し、現在の防衛装備移転三原則を制定したことはダメ押しだったと思う。
 武器輸出三原則が生まれたのは国会論争がきっかけだったが、今回の改定は、密室でいつの間にか決まってしまった。国民への説明責任、透明性という点でも、正当性を持ち得ないと考える。日英伊が共同開発している次期戦闘機開発をめぐっては、通常国会で3カ国の政府間組織を設立する条約案が審議されることになる。国会審議を通じ、日本の武器輸出について議論を深めるべきだと思う。
(朝日新聞2月17日付)

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【九条噺】



(ヒメリュウキンカ)
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 今年も我家の庭に黄色(金色)の可愛い花が咲き始めた。夏は地上部が枯れて姿を消し、12月頃から芽を出し、3月頃から開花するが、今年は少し早いようだ▼今までリュウキンカ(立金花)と思っていたが、花弁は8枚程あり、図鑑で調べると、ヒメリュウキンカ(姫立金花)のようだ。「姫」と付いているので「リュウキンカの小さい種類か?」と思ったが、それも違うようだ▼リュウキンカは日本や朝鮮半島が生息地だが、ヒメリュウキンカはイギリスからシベリアにかけて広く分布している野草。日本に持ち込まれて野生化しているようだ▼二つはよく似ているが、リュウキンカは、キンポウゲ科リュウキンカ属で、学名は「Caltha palustris var. nipponica」。草丈は40~50㎝になり、開花は5~7月頃▼ヒメリュウキンカはキンポウゲ科キンポウゲ属で、属が異なる。学名は「Ranunculus ficaria」。葉は暗緑色のハート形、春になると花茎を伸ばして表面に光沢のある3~4㎝の黄色い花を次々と咲かせ、長いものでは1カ月ほど花を楽しむことができる。初夏に葉は枯れて地中に根茎を残して休眠に入る▼ヒメリュウキンカの花言葉は「会える喜び」だそうだ。夏に姿を消し、春に再び花を咲かせるところから付けられたのだろう。筆者も、学生時代に一緒に活動した友人と久し振りに再会し、「会える喜び」を味わいたいと願う。(南)

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言葉 緊急事態条項(3)

 日本維新の会と国民民主党は、大規模な自然災害や外部からの武力攻撃といった緊急事態が生じて、広い地域で選挙の実施が70日を超えて困難な場合には、国会議員の任期を6カ月を上限に延長できるなどとした「緊急事態条項」を創設する改憲条文案をまとめ、今国会会期中に衆議院の憲法審査会で議論するよう、各党に働きかけることを確認しました。
 一方、岸田首相は憲法改正に改めて意欲を示し、緊急事態が起きた際、国会の権能を維持する「緊急事態条項」などを議論することは意義があると強調し、改正を検討する要素として、「緊急事態条項」などを挙げています。
 緊急事態条項とは、◆時の内閣が大災害等で緊急と判断した場合には国会の権能(立法権)を当該内閣が実質的に兼ねることができる、◆国会議員の3分の2以上の多数で国会議員の任期を延長することができる、とするものです。緊急事態条項を憲法に加筆すれば、憲法による国家権力(内閣)に対する束縛の程度を下げることになります。
 現行憲法は、大日本帝国憲法にあった緊急勅令や緊急財政処分などの政府の専断を排除し、参議院の緊急集会を設けています。緊急集会とは、参議院は衆議院の解散と同時に閉会となりますが、閉会中に国会の議決を要する緊急の問題が発生した場合、参議院が国会の権能を暫定的に代行する制度です。内閣は、衆議院の解散中に国に緊急の必要がある時は、参議院に対して緊急集会を求めることができ、そこで議決することができます。「緊急事態」なら、なおさら民主政治を徹底し、国民の審判の機会を保障することが必要で、国会議員の任期延長ではなく参議院の緊急集会でこと足ります。
 大日本帝国憲法下では緊急事態条項は80回も乱発されました。関東大震災の時も戒厳令が使われ軍事独裁となり、「暴動」が起きるかもしれないという口実で、朝鮮人が大量虐殺され、青年労働者・社会主義者も虐殺されました。さらに、悪法を強行するためにも使われました。治安維持法は、天皇が絶対的権力を握る天皇制に反対する政治活動自体を処罰するもので、民主国家を求める共産党を違法とし、処罰の対象としていました。これを、労働組合や民主団体に拡大し、最高刑を死刑にするという大改悪がたくらまれました。帝国議会で否決されましたが、「緊急勅令」により改悪が強行されました。「緊急勅令」とは法律に代わる勅令を政府が天皇の名で発することができるという緊急事態条項の一つです。「二・二六事件」での戒厳令もその一つです。これにより日本は軍事独裁となり、侵略戦争へ突き進み、結果として300万人以上の日本国民の命が奪われ、2000万人以上のアジアの人々が殺害されました。
 緊急事態条項は「人間」を守るためのものではありません。「国家」「体制」を守るために憲法をストップし、「人間を犠牲にする」ものと言わなければなりません

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書籍紹介 『新しい戦前』この国の〝いま〟を読み解く



 「新しい戦前」ともいわれる時代を“知の巨人”と“気鋭の政治学者”は、どのように捉えているのか。日本政治と暴力・テロ、防衛政策転換の落とし穴、さらには米中対立やウクライナ戦争をめぐる日本社会の反応など、戦後の転換期とされるこの国の今を読み解く。
 2024年の年頭にあたり、本書は、憲法9条を持ちながら「新しい戦前」とも言われる状況にある日本社会の課題について深く考えさせてくれます。
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著者・編者:内田 樹(神戸女学院大学名誉教授)
      白井 聡(京都精華大学准教授)
判   型:新書 288ページ
定   価:890円+税
発売年月日:2023年8月18日
出 版 社:㈱朝日新聞出版  電話03-5541-8757
            メール shoseki-1@asahi.com

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書籍紹介 『「核兵器廃絶」と憲法9条』



 反核平和を信条とする法律家が核兵器を廃絶したい、憲法9条を守り世界に広げたいと考え、行動する全ての人々に送るメッセージ。
【目次】
序 章 核兵器廃絶と憲法9条——ヒトは核兵器をなくすことができるのか
第1章 迫りくる核戦争の危機
第2章 日本政府は私たちをどこに導こうとしているのか
第3章 核兵器と軍事力の呪縛から免れない人たち
第4章 反核平和を考える
第5章 韓国の反核平和運動
あとがき——「市民社会」を信じて
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著   者:大久保 賢一(日本反核法律家協会)
判   型:四六判 260ページ
定   価:1800円+税
発売年月日:2023年12月6日
出 版 社:㈱日本評論社  電話03-3987-8611
           メール infom@nippyo.co.jp

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朝日新聞世論調査(2月18日)



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(2024年03月06日入力)
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