「九条の会・わかやま」 509号 発行(2024年6月27日付)

 509号が6月27日付で発行されました。1面は、第120回「ランチタイムデモ」実施 ―10周年記念デモ ―、敵基地攻撃とはどんなシナリオか(小松 浩 氏 ②)、九条噺、2面は、「なぜ反乱しない」「9条に恥じない国を」(2)(樋口陽一さん ②)、高齢者は「65歳以上→70歳以上」へ  です。
    ――――――――――――――――――――――――――――――
[本文から]

第120回「ランチタイムデモ」実施
―― 10周年記念デモ ――




 梅雨空ながら、幸い本格的な雨にはならなかった6月24日、第120回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」(呼びかけ:憲法9条を守る和歌山弁護士の会)が行われ、120人の市民が参加しました。2014年6月23日の第1回のデモから満10年、記念すべき「10周年記念デモ」として実施されたものです。
 この日のコーラーは小野原聡史弁護士でしたが、10周年を記念して、2人の市民(ともに女性)もコールを実施しました。Kさんは、「内閣だけで勝手に決めるな/国のカタチを勝手に変えるな」「人を殺す武器を売るな」と、政治に対する怒りをストレートに、Mさんは、「憲法守ろう/9条守ろう」「平和をみんなで子どもにつなごう」と、リズムに乗ったよく通る声で元気に先導しました。



    ------------------------------------------------------------------

敵基地攻撃とはどんなシナリオか

 5月12日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第20回総会」が開催され、立命館大学教授・小松浩氏(憲法学)が「大軍拡・戦争に向かう国にしていいのか~憲法9条を生かした平和外交を~」と題して講演をされました。その要旨を3回に分けてご紹介します。今回は2回目。

小松 浩 氏 ②



 それでは敵基地攻撃というのはどんなシナリオなのか。一つ目のシナリオは、個別的自衛権の行使として敵基地攻撃を行うというものだ。これは「国家安全保障戦略」が大本となる文書の中で、「弾道ミサイル防衛という手段だけに依拠し続けた場合、今後はこの脅威に対し、既存の弾道ミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつある」という認識を示している。向こうから発射されたミサイルを撃ち落とすのは、難しくなっていると言っている。軍事技術的にはおそらくそうだろう。
 極超音速滑空兵器が飛んで来たら、認知した段階では間に合わない。また、多弾頭・機動弾頭を搭載するミサイルは全てを撃ち落とせない。それを何発も撃たれたら、とてもではないが対応できない。だから、敵基地攻撃が必要だと言っている。
 では何時、相手国のミサイル攻撃が発生したとみるのかが次の問題となる。日本の領空に入ってきた時では遅すぎる。段階的には、燃料の注入、屹立、点火、発射、日本領域への侵入、日本への着弾があるが、最近の固体燃料では何時燃料を注入したかは分からない。屹立も最近は発射台が地下化されている。そうすると「多分撃つのではないか」とか「発射する準備をしているのではないか」という段階で、もうやるしかないと、先にやってしまうということにならざるを得ない。
 しかし、相手は攻撃するつもりはなかったかもしれない。そうなると先制攻撃になる恐れが大で、個別的自衛権の行使というシナリオは成立しない。敵基地攻撃能力を持っても、使うのは極めて難しい。使うと先制攻撃=国際法違反となり、なかなか攻撃できず、「持ち腐れ」になってしまう。敵基地攻撃能力を持つことで、相手が止めておこうという抑止力になるから持った方がよいという反論もある。結論を言うと抑止力にもならない。
 最近の日本を取り巻く国際情勢は非常に悪化している。北朝鮮はミサイルを撃ってくるし、中国は南シナ海や尖閣諸島付近に海警隊が出てきたりと、軍事的軋轢を生んでいるので、「安保3文書」や「日米共同声明」も仕方がないとの声もある。
 しかし、少し冷静に考えると、本当にそんな危機はあるのか。日本と中国の間には尖閣を巡る領有権の争いはあるが、中国は本当に日本に武力攻撃をして尖閣を取ろうと思っているのか。北朝鮮も日本を標的にしたミサイル発射をしている訳ではない。
 日本が攻撃された場合の敵基地攻撃という話ではなく、違う二つ目のシナリオが想定される。それは集団的自衛権の行使としての敵基地攻撃だ。日本は攻撃されていないにも拘らず敵基地攻撃をする。つまり、アメリカが攻撃された場合に攻撃をするということだ。日本が攻撃されていないのに攻撃するのは、日本の存立が危うい事態だからだと言っても、相手国から見れば、それは先制攻撃だ。残念ながら国際法・国連憲章では集団的自衛権は合法と一応はされているが、しかし、これはそもそもおかしい。
 あり得そうなシナリオとしては「台湾有事」だ。その一つ目は台湾が独立を宣言することだ。そういうことがあれば中国は軍事力を行使してくるかもしれない。アメリカは台湾防衛ということで参戦するだろう。しかし、今はそういう情勢ではないが、アメリカが先手を取って攻撃することがないとも限らない。そうなると日本の安全に重大な危機・存立危機事態として、集団的自衛権を行使するのが一番リアリティのあるシナリオかと思う。いずれにしてもアメリカがやっている戦争に日本が参戦するということになる。その場合、日本はどれぐらいやってくれるのかとアメリカは求めてくる。アメリカは「統合防空ミサイル防衛」に参加しても、それでは間に合わないので敵基地攻撃を必要としている。日本はアメリカの情報対応能力に頼らざるを得なく、アメリカの言いなりにならざるを得ない。日本のミサイルは南西諸島から撃つので、相手はそこを攻撃するということになる。アメリカは日本周辺を戦場として戦争をするということになるので、その前に日本を攻撃せよということになり、日本の敵基地攻撃能力を持つ基地が攻撃されることになる。南西諸島が一番危ない。アメリカ本土は関係がない。正に日本周辺を戦場にしてアメリカは戦争をするということになる。日本政府は、南西地域の防衛体制の強化、敵基地攻撃ミサイルの配備、自衛隊基地の地下化と、日本全土が攻撃されることを前提に全面戦争を想定しているのではないか。(つづく)

    ------------------------------------------------------------------

【九条噺】



 我家の庭に面白い花が咲いている。写真のように一つの木に紫と白の花が咲き、非常にいい香りを放つ▼『花の名前辞典』で調べると、和名は「ニオイバンマツリ」で、漢字では「匂蕃茉莉」。匂(香り)があり、蕃(外国)来の、茉莉(ジャスミン類)の意味で、まさにニオイ・バン・マツリだ。英名は「Paraguay-jasmine」でパラグアイ国花にもなっている。ナス科の常緑広葉樹の低木。熱帯アメリカ原産。日本には明治時代末期に渡来し観賞用に栽培されたそうだ▼ところで「一つの木に紫と白の花が咲く」と書いたが、「開花した時は紫、それが時間とともに白に変化する」が正しい。ある瞬間には「紫と白の花が混在する」ということだ▼「ジャスミン」とは、一般的には「ハゴロモジャスミン」を指すようで、強い芳香があるのは共通だが、モクセイ科の蔓性植物。明らかに別の種類の植物だ。「ジャスミン」という言葉は、少し曖昧で、どうやら芳香があるモクセイ科植物全体を指す場合にも使われているようだ▼「ニオイバンマツリ」の英名は、「yesterday-today-and-tomorrow」や「kiss-me-quick」などもあるという。花の色が紫から白に変化するのに合わせているようで面白い▼花言葉は、花の色が変わるので「浮気な人」もあるが、「幸運」「熱心」「青春の喜び」もある。この花のように「熱心」に、世界の人々にいい香りと「幸運」を届けたいものだ。(南)

    ------------------------------------------------------------------

「なぜ反乱しない」「9条に恥じない国を」(2)
樋口陽一さん ②




◆9条なければ今ごろ世界中に派兵してる
 「大事なことは、自衛隊の『専守防衛』ということ。この言葉遣いは日本社会に定着したはずです。自衛隊を外向けに使わないというコンセンサスは、戦後のいかなる政府も正面からは破ることができていない。9条がなかったら、今ごろは世界中に日本国軍を派遣しているのではないか。
 憲法とは「constitution(コンスティテューション)」。語源は「共に組み立てる」で、まとめて言えば憲法とは「国のかたち」ではないか。
◆同世代・上皇に共感「戦時体験の結晶が沖縄への思いでは」
 今の上皇さまは樋口さんの1歳上で時代体験として共通することが多い。共感を持ってませんか?
 「あります。上皇の戦時体験の結晶が、沖縄に対する思いじゃないでしょうか」。
 樋口さんは、1975年に日本学士院賞を昭和天皇の臨席のもとで受けた。学士院の役員を2期6年務め、新会員が天皇のお茶の席に呼ばれる際に数十回同席した。樋口さんの書いたものや発言は宮中でも読まれていたはずだが、天皇から憲法や社会情勢についての質問はなかっただろうか?
 「一切お話になりませんでした。平成の天皇(今の上皇)になってからは4人がけのテーブルを陛下が回って言葉を交わすようになりました。ある種の『宮廷革命』があったのでしょう」。
◆いまの若手議員たちは従順なサラリーマンのよう
 「それぞれの世代について言えることだけど、自分より先行している世代を押しのけて一歩でも前に進んでほしい。先行世代から何か利益が回ってくるのを待ってる気配がある、特に政治の世界では。嘆かわしいことだと思います。なぜ反乱しないのか。従順なサラリーマンのようなイメージじゃないですか、いまの若手議員たちは」。
 戦後の首相たち「三角大福中」の中で「大平正芳の歩んだ軌跡を遺産としなければいけない」と話す。
 「大平の派閥(宏池会)を継いだことの意味を、岸田文雄首相は少しでもまっとうに考えてほしいと思います」。
(東京新聞4月2日付より転載)(おわり)

    ------------------------------------------------------------------

高齢者は「65歳以上→70歳以上」へ

 6月は政府の「骨太方針」策定時期。「骨太」は重要課題や翌年度の予算編成の方向性を示す方針で、首相が議長を務める経済財政諮問会議で纏めることになっている。その会議で、高齢者の定義を「5歳引き上げ」、ウェルビーイング(身も心も満たされた状態)実現へ提言が出されたと時事通信が伝えている。健康寿命が長くなっていることを踏まえ、高齢者の定義を「5歳延ばすことを検討すべきだ」と指摘。その上で、全世代のリスキリング(学び直し)推進を提言したという。「定義を70歳以上に引き上げよ。リスキリングすれば、まだまだ働ける」ということのようだ。今は70歳を過ぎても馬車馬のように働かなくてはいけないのか。当然ながらこれは年金支給開始を70歳からにするための準備だろう。それなら70歳までは「同一業務同一賃金」を法的にも保障してもらわねばならない。

    ―――――――――――――――――――――――――――――
(2024年06月26日入力)
[トップページ]