2.
今夜は団体さんが2組入って大わらわだった。
女性のグループは覚えきれないほどカクテルを注文するし、男性のグループは料理の回転がやたら早い。
火村とシフトが一緒だったが、いつもの様に上手く行かなくて。
テーブルの片付けが滞ったり、ひと言がないばかりにダブってビールを持って行ってしまったりとお互い小さなミスが積もった。
でも、喉元過ぎればという性格なので、表のカンバンを下げる頃には「火村とお疲れさん会しよか」なんて呑気に構えていた。
だが、バックルームに入ると、すでに着替えた火村が帆布製のバッグを肩に引っ掛けているではないか。
「待って待って。時間あったら1杯どうや?」
「ない。レポートの締め切りがあるから」
「そっか。お疲れー……」
れー、を言い終わるか終わらないかのうちにドアが閉まる。
目を合わせなかった火村の態度に、ほのかな充実感がぽろりと剥がれ落ち、不安が姿を現す。
今夜は確かに連携がスムーズとは言えなかった。
火村だから、と気が緩んでいたのは認める。
もしかして僕は、気付かないうちに多くのミスをしとったんやろうか。
ならその場で言って……ってそんな間はなかったな。
もう終わった事だ、文句があるなら来い。
ああでも火村気も知らずに足を引っ張っていただけなら、嫌だな。
うっとうしがられるのは辛いな。
いつの間にか反省から、火村のことに思考がスライドしていた。
胃の底が鉛を飲んだように重くなり、ソファに腰掛けた僕はがくりと首を垂れる。
と、ドアが静かに開いて、長い影が滑り込んできた。
「あ」
一瞬無愛想なハンサムを期待したが、顔を覗かせたのは本所さんだった。彼は曇り空が晴れるような笑顔でこう言った。
「有栖川くん、飲みにいかんか?」
*
そんなわけで僕は「敵情視察」と言った本所さんに、最近オープンした居酒屋に連れてこられた。
和食中心で食事もできるそこは、ジャストミートに商売敵だ。
「あ、乱暴な」隣のテーブルに来た女の店員が音を立ててグラスを置くさまに、ついそんな言葉がこぼれる。
「職業病。有栖川くんも接客業がしみついてきたなぁ」
会話の合間にすっとフィルタを口にして、ふわりと美味そうに紫煙を吐く。仕事場では見る事のなかった本所さんの喫煙姿だ。喫煙しない僕を気遣って煙を払ってくれるけど、ある程度なら気にならない。古い下宿のあの部屋で、煙草の匂いに慣らされたから。
「ぜんぜんまだまだ。今日かて火村とぶつかってばっかり。忙しいと人の仕事を見る余裕がなくて……」
「ああ、火村君もなんか落ち着きなかったしなぁ。あの子も人の子やわ」
「アイツが? 落ち着きない?」
思わぬ言葉にビックリして、ジョッキを持つ手が止まった。
「間違うてどっかの個室の電気消してしもうたりしよった。ものすごい冷静な顔で慌ててたぞ。あ、ばらしたん秘密な」
「そらまた…」
「ヤレヤレや…」
僕と本所さんは顔を合わせて、ニタニタと笑った。
何でもピシッとこなします〜って涼しい顔で、お客の入った個室を暗闇にして焦っていたなどと。お客さんにバースデーの歌でもサービスすれば誤摩化しがきいたろう。無理か。
火村もテンパってただけと思うと、腹の底でもやっとしていたものがスッと抜けていった。
悪い事を想像しだすと、現実も悪くなるって爺ちゃんが言っていた。
酒の勢いを借りてバイトでの悩みをポロポロと打ち明ける。
「有栖川くんはいっぱいええとこあるんやから。もっと出せばええんや」
中学時代担任から似たようなことを言われた時は「へっ」と思ったが、本所さんの口から聞くと「僕ってええところあるかも」と、豚もおだてりゃ木に上るを地でいってしまいそう。
そうして、本所さんに物心ともに甘えて「敵情視察」を堪能し、店を出る頃にはすっかり酔っぱらっていた。
本所さんは大したもので、階段でふらつく僕の脇に手を入れてしっかと支えてくれている。スレンダーな見た目を裏切る、強靭な体つきだ。
体側に沿ってだらりと垂れる腕を上げ、本所さんの脇腹を横ざまに抱いた。
蒸し暑い夏の夜に、申し訳ないほどピタリとくっ付いてしまうが、脇から腰のラインが安定するのだ。
「終電はありそうだが、その足やったら間に合わんかもな」
「本所さんは大丈夫ですか?」
「西陣やからタクっても大した事ない……寄ってくか?」
気遣いを含んだ低音の声がこめかみの辺りで響く。
大きな手のひらが、脇から腰骨の上にするりと降りて、ふらつく体を上手に支えてくれる。
重い男の体を支えるなんて、労力使うだろうに。
これ以上迷惑をかけられないという思いから、両足を踏ん張ってしゃんと立ってみた。
「女の子やないですから大丈夫です。転がり込むあてもありますんで」
最後まで心配そうにしていた本所さんに感謝しつつ、北白川方面に爪先を向けた。
本所さんとの会話で盛り上がっている間も、最後に見た火村の背中がちらついて離れなかった。
火村が、心ここにあらずな状態だったなんて、どうして僕は気付かなかったのだろう。
時間とか、都合とか、頭にちらつく気遣いだとかはアルコールで麻痺していた僕は、手のひらのケータイのフラップを開いて、「転がり込む」相手を呼び出した。
繁華街はまだ人通りが多く、少し声を張り上げて喋らないといけない。単に酔いが耳にきてるのかもしれない。
『うるせえよ』と不機嫌そうな声が聞こえてきたが、酔っぱらいだから馬耳東風。
「レポート終わったんか? さすがやなぁ。じゃ酒持ってくから」
『なにをバカな。酔っぱらいは終電で帰れ。いますぐ』
「あっ言うたな。大阪人にバカ言うたこと後悔させたるから待っとれ」
『なぜそうなる!』
「やって火村としたいんやもん」
そこで火村が電話を一方的に切ったので、ぼくはフラップを閉じるしかなかった。
*
下宿を尋ねると、外で待ってくれていた火村がやるせない、といった顔で僕を見て「騒ぐなよ」と招き入れてくれた。さすがに大人しくするからそこは信用してほしい。
眠っている大家さんの耳に障らないよう静かに階段をのぼって、片付いているとは言えない6畳間に上がりこむ。
「酒くせぇ」
「店長とさっきまで飲んでたんや。ほい、お土産」
座卓の一辺を挟む形で隣り合った火村に、ぽん、と缶チューハイのロング缶を手渡す。
「へー店長とねー」
ピスタチオの袋を破り、僕は350ml缶のピールを開けた。軽く乾杯をし、口を付けるが火村の勢いはまるでない。
ぽりぽり、ごくごく、と口は飲食にのみ使われた。それもまたよしと思っていたら、火村は随分な間を置いて、
「で……なんで2人で飲みに?」
などと聞いてくる。
「敵情視察」
「うさんくせぇ」
「えぇ? 何やの、いきなりそない言うなよ。まぁ、こっちにとっちゃ只の飲みやったけどな。
あぁ、本所さんオモロかったな……話も聞いてくれたし。お家に招いてくれたし」
「行ったのか…っ」
初めて火村の顔に色がさした。やや青いのは電灯のせいだろうか。
「行ってへんから、ここにおるんやん」
へろっと、焦点がふらつく眼球で笑いかける。
癇に障ったのか、座卓を壁際に押しのけた火村がずいっと僕の正面に座り直した。
「チッ……なんのパターンだこれは。アリス、お前酔っぱらってるよな?」
「酔っぱらってへん。四則計算できるぞ」
「よし酔っぱらってるな。じゃ聞くけど、DVって何だと聞かれたらお前はどう説明できる?」
ゼラチンを混ぜ込んだ液体のように、頭の中の流れがぐっと重くなるような質問だ。
酔っぱらいにそんなこと聞くなと言うのも癪で、「恋人や結婚したカップルの一方が、他方に行う暴力行為や。肉体的、精神的、性的と、金銭、やのうて経済的!」と、拾い読みした文言を引きずり出す。
「そう。DV=暴力というイメージは宣伝の効果で浸透しつつあるが、その定義が狭いという話もある。
外から見て親密な間柄の一方が、他方を継続してコントロールするパターン。また、このパターンを作りだし、維持する仕組みがDVの定義と論じる人間が出てきた」
「どこまで行く話なん」
レポートのテーマだったのだろうか。書き上げた直後のテンションを引きずって、つい周囲に問題提起したくなったか?
「たとえば、アリスは俺のケータイ番号を知っている。だからこうして深夜でも連絡をとれるし、俺の部屋に来れる。終電がないから泊まるしかない状況が生まれている」
「………え……」
息を飲む。
つまり、僕がやっていることは、自分本位だというわけか。
回りくどく、しかしきっぱりと突きつけられて、肋骨の奥でなにかがひしゃげる音がしそうだ。
のろまな頭で今何をすべきか考え、とりあえずこの部屋に居場所がない気がしたので立ち上がろうとした。
火村に膝頭を押さえられ、アルコールで弱った脚は容易くへたりこむ。
なぜそんな事をするのか解らず、「帰るから」と突っぱねるが彼の手が許さない。
「誤解するなよアリス。この状況を作ったのは俺だって言ったら、どう思う?」
そっぽを向いた僕の耳に、少し焦った火村の声が飛び込んできた。
会話の行方が見えない。つい答えを返していた。
「よう解らへん」
「お前がうちに来やすいように、俺との連絡が取りやすいように、四六時中なるべく一緒にいられるようにしたのは、お前の意思とか偶然なんかじゃない。俺がコントロールしたって言ったらどう思う?……」
顎先を捉えられ強引に上げさせられる。
少し掠れたバリトンが、前髪を揺らした。
鼻先が触れ合うかと思うほど火村が近くまできている。
冷静な声とは裏腹に、目はひどく潤って自らの熱で溶け出しそうだ。
にじり寄ってきた火村は、僕の膝から手を離すと、
「このパターンの恐ろしいところは、意識的にやらねぇと自分でコントロールしているのか、相手にされているのかわからなくなるところだな。逆に言えば、俺ばかりが空回りしているわけじゃないってことか」
明らかに感じさせるような手つきで僕の耳朶から項を触った。
「……いや…や、こんな。なんで……?」
ジンジンと耳全体が震えるような感覚に戸惑う。指先は項から背筋を辿り、辿られた布越しの肌はそこから火が噴くかと思うほど熱くなる。
「なんでって?」
引きはがしたいのに、まるで痺れに負けるように火村の上腕へと縋ってしまう。それを何と取られたか、敷きっぱなしの布団に押し倒されてから理解した。
言われている事と、されている事の両方が嵐のように体を襲い、僕の敏感なところをかき乱してゆく。
突然のことに「ちょっと待て」をかけるが、こうなった男に聞く耳を持てというのは無理かもしれない。
「おまえ、お、男同士でDVを試さんでもええやろ」
「誰が男女間で起こるモノって決めてんだ? 相手を支配したいと思ったら、大なり小なり、男同士でも女同士でもコントロールのパターンは生まれる」
「話がいちいち面倒いんじゃ!」
「アリス、むちゃくちゃにしたいほど好きだ」
言葉で鞭打たれ、飛んでいた思考が叩き落とされた。
顔の両側に置かれた手で閉じ込められ、恐ろしげな目で告白をされてしまった。体が火照って喉が渇く。どう答えていいのかわからない。
「どうする?選べないなら、もうこれ以上、側に来るな」
しかも絶交宣言に至った。
僕がどれほど見つめ、時間をかけて火村に近寄ったことか。それを考えるとものすごく腹がたった。翻せば、泣きそうなほど辛い。
突き放される僕の気持ちなんかこれっぽっちも考えてないのだ。
「なんで、と、突然こんな目に遭わなならんの」
「なんだって突然といえば突然起こるもんだろ? 『来週告白します』なんて予告する意味って、あんのか」
「せやなくて」
「そういうことだ。俺だって、もう少し、それとなく仕掛けたかった。けど『突然』お前はやってきた」
もっと言っておきたい事はあったけれど、言葉じゃ間に合わない瀬戸際に来てしまっていた。
もう焦点をあわせることができないほど近くに受け入れて。
諦めとも覚悟ともつかない吐息ひとつで、火村を抱きしめた。
火村の体を太腿や首筋で受けとめるのは、予想外に気持ち良い。
うっとりしていると、「なんかお前に試された気がする」と細かい話をなお追っかける唇が降りてくる。
「ん、なわけ、あれへん」
浅いキスを繰り返しながら汗じみたTシャツをたくし上げられ。
臍から肋骨、その上まで舐められてくすぐったさに身をよじる。おそろしく手際のいい火村に、そのままさっくりと脱がされてしまった。
女の子みたいにぷつんと尖った胸の赤みを、舌先で何度もかすめるように舐められ、そのたびに体がびくびくと震える。
「……アリス…アリス」
耳に呪文を吹き込み肌から何かを吸い取るように、火村は僕の体を探った。体温の高い手のひらが汗でぬるむ膝裏を取って、軽く広げるモーションをする。股関節からふっと力を抜いたら「素直だな」と、火村は嬉しそうに僕を見下ろした。
「見てへんで、来い」
「恥ずかしい?」
「つか、こっちばっか、こんなん」
「そんなこと」
ボクサーショーツを押し上げるソレに顔を寄せたと思ったら、布越しに口を使われて悶える。
そこから臍と胸の尖りを這い上がった舌が、僕の鼻を舐めあげた。僕も同じことを返す。いつも盗み見していた高い鼻梁の、繊細な軟骨を愛撫する。
性器の奥にある狭間も性感帯なのか、布越しに火村ので擦られるとムズムズするような快感があった。
なにかをなぞらえるような動き。
被虐的な図だ。でもただの図であって、僕にとってこれは被虐じゃない。
その倒錯的な官能を飲み干すように、舌と舌を絡めあい、口腔を余すところなく舐め回すようなキスをする。
巧みに吸われ甘く噛まれ、体が蕩ける。どろり、とシロップみたいに泡を含んだ唾液が顎を伝う。
張りつめたものも、達したくて切羽詰まってきた。鼻先を火村の横髪に埋めてねだる。
「ァッ……ひむら……も、してぇな……」
信じられないほど媚びた声を恥じる余裕もない。
「ウ……おれも……限界」
火村の息が、あっつい。
もがくように脚を動かしてボクサーショーツを下ろし、互いにしごく。
ひっきりなしに蜜が溢れて手を濡らし、茂みまですぐべたべたになった。
朱を刷いた火村の顔は、色気が滲んで凄絶に綺麗だ。切なげなバリトンが聞きたくて、追い込むのに集中する。
呻きながらも火村の手は熱心な愛撫を止める事なく、しなる僕を巧みに絞り続けた。
絶頂一歩手前の、頭がおかしくなるようなところまで追いやられているのに、そこは蜜をパンパンに詰めたまま麻痺したのか、一向に弾けない。
爪先立ちでお預けを食らうような刺激に耐えかね、後頭部をシーツに擦りつける。
「ゥ、あん……ひむら……ァ……もっと、さわって……」
「アルコールでいっちゃってるな」
そう呟いた火村の腰がふと離れる気配を感じ、僕は右脚をかけて引きつけた。
「ちょっと待て」
「やって、気持ちいい……冷めたらいやや」
「エロ酔いしてんな……しゃーねー。俺を蹴るなよ」
と言って、端正な口が勃ち上がったものを吸い込むように含んだ。くちゅり、と濡れた音が耳をうつ。
「ァ……ッ」
顎が上がり、隠しようのない溜め息が天井に溶ける。
ちら、と上目遣いで火村はこちらをみた。感じるだろ、とでも言いたげで、見せつけるように先端をべろべろ舐め回した。
「ふ、あッ! ひむらッ」
ぺちゃり、と鈴口からしみ出す液体を舐める舌に翻弄される。膝頭が震えて、無闇に爪先が宙を蹴った。
麻痺していたと思っていたそこは、それ以上ないだろう、というところを越えて感じて。
必死に高くなる声を手のひらで押さえる。
あ、もう、飲まれそ……。
「出しな」と請われるままに、その堰は壊れた。
そして夜が明けるまで僕らは触れ合った。何度も来た下宿の布団で、脚と腕を絡めあって寄り添う。
シャワーも浴びてないのに、火村の汗は香気がして、舌を伸ばすと塩と木の実の味が口に広がった。
やっぱり、と嬉しくなる。君の味は口に合うんだ。
「メシ、食えるか……?」
あの火村が恐る恐るといった様子で、横臥する僕のむき出しの肩を揺らした。
ん、と上体を起こして、タオルケットを腰にかけただけの格好で伸びをする。
布地の下、出るものに色がつかなくなるまで抜かれたそこは、弄られ過ぎで少しジンとする。
「おはようさん。もらえるなら食いたい」
「取り敢えず、服着ろよ」
体はさっぱりと清められていた。
借りたTシャツに腕を通していると、なにか言いたげな目とぶつかる。
僕もなにか言いたかったけど、沈黙を埋めるべき言葉が見当たらなかった。
立ち上がって、火村に手を伸ばし項を引き寄せる。僕の腰に回ってきた手は、昨夜の激しさからは遠く、優しい。
「アリス、この体勢はどういう意味があるんだ」
耐えかねたように火村が呟くので、「べつに」と腕を解いて朝食の並んだ座卓の前に腰をおろした。
「いただきまーす」と断ってトーストに齧りつく。それにはバターを塗った上に砂糖がまぶされていて、鼻を抜ける匂いは甘く香ばしい。
常になく鈍い火村は「なんなんだよお前は…」と、座りもせずにぼやく。もどかしいったらない。
「やから、純粋に抱きしめたいだけで別に意味なんかない。ちなみにただの友達を抱きしめる趣味はあれへんで」と、目の前のトーストに向かって告白してみた。
当然トーストは何も答えない。
だが、座卓の向こうに突っ立っている男はようやく納得してくれたようで、ごぞり、と腰をおろした。
呆れたような、楽しそうな目だ。
「おまえの話も面倒だな」
「君ほどやないよ。DVとか『お前の意思とか偶然なんかじゃない』って、どんだけ煮詰まってんねん」
バリバリと、トーストが容易く歯で噛み切れるので、言いそびれていた文句を投げてみる。火村も勢いよく噛み付いてるから、2つの皿の上はパン屑だらけだ。
「例えが悪かったよ。でも嫉妬って自力じゃどうにもならないんだな、よくわかった」
「ひとりでわかるな。なんの話や」
「昨夜の店長とのこととか。あれは妬けたね、メラメラだね」
「んぐ。本所さんをそんな目で見んとってや。ブラコンみたいで嫌やん?」
親戚のお兄さんみたいな存在だから、というニュアンスを伝えたかっただけだが、まだ口内にはパンが残っていて、そこまで言葉が至らずにいると、
「お前の例えもさいってーだな」
またメラメラになった火村が座卓を越えて僕を捉え、唇を重ねてくる。
せやからなぁ。
君が好きだと、告白嬉しいよと言ったのにこれだもの。
ツーカーの呼吸にはぜんぜん遠い。
今の僕らは自分勝手な気持ちをぶつけ合っているだけだ。
でも、まずはここから。
惹かれ合うのは偶然なんかじゃないと今日も明日も感じるために、君とキスから始めないと。
君に僕のこと教えていかないと。
砂糖まみれの唇は、君が思うほど甘くない。
落としたのか落とされたのかわからない火村です、すすすみません。(滝汗)
お待たせした上に、微妙な作品になってしまっております…。力不足。orz
リクはクリアしておりますでしょうか? いかがでしょうか?
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