太夫さんの報告を4つのページに分けて紹介しています。最新情報は、掲示板ダイジェストに掲載しています。写真は、太夫さんが撮影したものを私が貼り付けました。
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最初に行った弓ヶ浜温泉の旅館は「季一遊(ときいちゆう)」で、98年にできたばかりの宿です。しかし、その年から毎年JTBの「満足度90点以上の宿」に入っていて、是非行ってみたかったんです。ちなみに、この宿は「いなとり荘」の姉妹館で、このことから言っても料理は期待できるだろうという気持ちがありました。宿につくなりJTBの青銅のライオン像が目に入りました。このライオン像を獲得するのはなかなか難しいらしいのです。よく見るとサービス部門での受賞でした。さすがに受賞するだけのことはあったと思います。最初の案内はホテル並みの丁寧さでしたし、部屋係の女性も若いのに素晴らしいお辞儀の仕方でした。また、これはたまたまですがチェックアウト後、一時間ほど弓ヶ浜を散歩した後、預けていた荷物を受け取って帰ろうとすると、女将がちょうど下田まで出るのでお送りしましょうと、送ってくれました。これだけの旅館の女将が送ってくれるなどいままでに経験したことのないことです。この女将(村木てるみさん)は食事の挨拶のときも黒い洋服姿であるなど、目立とうとせず、腰の低い非常に好感の持てる方でした。弓ヶ浜温泉という名前がついていますが、女将によると下賀茂から引き湯しているそうです。やはり、下賀茂の非常に塩辛い食塩泉でした。大浴場は落ち着いた雰囲気のいいお風呂です。男女で交代はなく、それぞれが同じくらいの規模ではないでしょうか。露天風呂(写真1)は大浴場(写真2)に併設されているタイプで3つのお風呂が並んでいます。一階にあるので、海が見えないなど、見晴らしはありませんが全体的に広めなので、ゆったりと気分よく入れます。温度も適温だと言っていいと思います。家族風呂も三つあり、適当な大きさで良いお風呂だと思いました。部屋はすべてオーシャンビューで、ベランダにデッキチェアーも備え付けられており、いいと思います。洗面台は二面あります。食事はレストランで、夕食は会席、朝食はバイキングなのですが、やはり最初にある程度ずらっと並べられてしまいます(時間は一応多少ずらして持ってはくるのですが)。どんどん食べているうちに最後のご飯の鯛の釜飯になるのですが、これにまだ火がついていないのです。やっと火がつけられたと思ったら、20分ほどお待ちくださいとのことです。で、その時間待ってご飯を食べ終わったのですが、今度はデザートがなかなか来ません。という訳で、レストランで食べさせる割には時間配分がなっていませんでした。また、料理もお刺身(これは何種類かの魚の中から自分で選べます)などはおいしかったのですが、全体的にインパクトがありません。朝のバイキングは刺身が3種類も出るなど、種類は充実していたと思いますが、味はおいしいものもあれば今一のものもあるという感じでした。今年の90点以上は大丈夫かな?と心配になりました。
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翌日は蓮台寺の「清流荘」です。伊豆の名旅館です。入っていきなりギネスブックに載っている大灯篭(写真3)があります。泊まった部屋は本館でした。古い建物で部屋はそれほど広くはありません。風呂は非常に透明感あふれる名湯という感じで、口にふくんでみるとあまさがあり、とてもおいしい気がしました。ただ、飲泉できるかどうかは分からないので、飲みはしませんでしたが。お風呂は夜の10時に交代で、最初の男性の方は宿の規模に見合った大浴場(写真4)と露天だと思います。露天は狭くも広くもないという感じですが、この宿全体の敷地が非常に広いため、開放感は感じます。一応囲われてはいるのですが、遠くの噴水が高く上るのを見ることができます。温度は適温ですが露天はややぬるめです。女性の方は、大浴場の浴槽がせまいと思いました。4人ぐらいしか入れないのではないでしょうか。露天はまあまあの広さですが、メインの浴槽がちょっと浅すぎる気がしました。家族風呂も一つあり、内湯も露天も付いている立派なものです。ぜひ、この家族風呂には入った方がいいと思います。この旅館は全体に落ち着いた重厚な感じがありますが、外のプールはしゃれた感じです。リゾート地のプールという感じがします。一年中使えるように手入れがしっかりとされていました。とにかく、大人のゆとりを感じさせる宿で、読書コーナーや、音楽を聴くコーナー、さらには映画室まであって、この日は「第三の男」を上映していました。食事は完成度の高いものです。夕食は本来は懐石なのだと思いますが、今回の旅行会社の企画で鯛しゃぶがあったために、ちょっと変更されているのでは?と思いました。伊勢海老のお造りも、鴨肉の蒸し物も、カサゴの空揚げもおいしかったです。最後に鯛しゃぶのスープで雑炊を作りましたが、これも非常においしかったと思います。朝食も、一般的な朝定食にプラスアルファという感じで、おいしいものでした。客室係は年配の方でしたが、こちらの質問攻めにもいやな顔一つせずに、丁寧に対応してくれました。この方のお辞儀もしっかりしていました。ということで、やはり「清流荘」は欠点の少ない宿だと思います。
中伊豆の湯ヶ島と修善寺に行ってきました。湯ヶ島は「巨石風呂・巨木風呂」で有名な「白壁荘」、修善寺は「天平大浴堂」の文化財の宿「新井旅館」でした。今回の二つの宿には、評価できる点と評価できない点のぶれが大きい、部屋が広くゆったりとしているという二つの共通点がありました。
初日は、修善寺からバスで30分ほど入った、湯ヶ島温泉の白壁荘です。バス停を降りて、どっちの方向へ歩いていったらよいのか分からず、携帯で問い合わせても要領を得ないので(こちらの理解力不足)バス停まで迎えに来てくれました。本来は送迎はないのですが、この辺は臨機応変に対処してくれました。白壁荘は民芸の宿ということで、建物の中は民芸調の意匠が凝らされています。通された部屋は六右衛門という、十畳の主室に6畳くらいの洋間が付いた部屋でした。トイレ、洗面所、部屋風呂も広く、全体的にゆったりとしています。巨木風呂と巨石風呂は隣り合っているのですが、そこにかなり近い部屋でした。そんなに新しい旅館ではないと思うのですが、古びた感じはなく、部屋も民芸調で好ましい雰囲気です。ただ、部屋に入るまで案内されて廊下を歩いている時、廊下に独特の匂いが染み付いている感じがしました。これは、慣れてしまえばあまり気にはならなくなると思うのですが、匂いに敏感な人はダメかもしれません。また、通された部屋のトイレも強烈な匂いがしました。これは慣れません。エアコンが和室にも洋室にも一台ずつ付いているのですが、これが古いらしくあまり効きません。特に和室はほとんど効かず、昼間は非常に暑かったです。広さや意匠には文句はないのですが、ここにまず、両極端な面が表れていました。 |
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翌日は、独鈷の湯のすぐ近くにある文化財の宿、老舗旅館の「新井旅館」に宿泊しました。こちらは意識しないうちに古さが美しさに変わっていった宿といってもいいかもしれません。むかしながらの玄関が開け放されていて、われわれのチェックインと同時に大きな黒アゲハが館内に入ってきました。優雅に舞う黒アゲハはまったく、この旅館に似つかわしい風景に思えました。新井旅館の敷地はかなり広く、建物も横へと広がっています。建物はつながっていて、離れ形式ではないのですが、ぽつんぽつんと点在する感じはかなり離れ形式の宿に近いと思いました。通されたのは雪二というわりと旅館の中心部に近い部屋で、トイレと風呂の付いた部屋でした。この雪二は三畳の踏み込みと、十二畳の主室、主室の横には広縁が普通の二倍の長さで付いています。トイレも洗面所もまあ広いのですが、特筆すべきは部屋のお風呂です。お湯が温泉で、木の湯舟というのは結構あるとは思うのですが、ここは壁も板張りで何と天井を見ると浴場によくある湯屋造りになっているのです。窓も、板を何枚か縦にはめこんだもので、つまりミニ「小奇麗な外湯」みたいな感じなんです。今まで見た部屋風呂の中でも出色のものと言ってもいいと思います。ただ、残念なことに、お湯の出がすこぶる悪く、湯舟にお湯を溜めるのに確か3時間以上かかったのではないでしょうか。こちらとしては水で薄めたくないので、早いうちに熱い湯を張っておいて冷めるのを待とうという魂胆だったのですが・・結局、当日は入る機会がなく、次の日、ぬるめになってちょうどいいかなと思って、のぞいてみたところ、なんとお湯がなくなっていました。思うに、水栓が少しゆるくなっていて、一晩かかって少しずつお湯が抜けていってしまったんですね。まさに、仏作って魂入れずという感じで残念でした。部屋は古いのでしょうが、完全に手が入れられ、少しも古さを感じさせません。こちらは最新のエアコンが寒いくらいの冷気を部屋に満たしていました。 |
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金谷旅館は、伊豆半島の南端である下田の一つ手前「蓮台寺駅」から歩いて5分ほどのところにあります。玄関のガラス戸に金谷旅館と書かれた古い建物が、道路から少し庭を入ったところに建てられています。ガラス戸の前には鳥かごが置かれ、のどかな雰囲気です。着いたのはチェックイン時間を過ぎていたので、すぐに部屋に通されました。桜という部屋で、年季は入っていますが、みすぼらしい感じはなく畳も障子も新しくて、畳の匂いがまだしていました。この旅館の作りは複雑で、上がってきた階段はこの部屋専用のようです。この階段に一つだけの部屋ですので独立性は高く、隣のテレビの音が聞こえるなんていうことはありません。ただし、階段を上がり、部屋のふすまを開けるといきなり八畳間で、踏み込みというものがありません。スリッパを部屋の外で脱いで部屋に上がることになります。ふすまが仕切りですから、部屋のカギはふすまに金具を取り付けただけの南京錠です。普通の民家の二階部屋という感じです。洋服入れもなく、部屋の隅に和服をかけるような木の枠が置いてあり、そこにハンガーが四本ぐらい掛かっているだけでした。椅子はありません。部屋は二面に窓ガラスがあり、その手前に一畳ほどの幅で広縁がめぐらされて明るく、気持ちよく感じます。洗面は、普通の家庭で使うような小さ目の洗面台でトイレは久しぶりの和式でした。トイレのタイルも新しい感じで、どうやらこの部屋は手を入れてそれほど時間が経っていないようです。金谷旅館は13室部屋があり、その内の3室は洋室で、その他の部屋はどんな感じなのかは全く分かりません。さて、部屋に案内してくれたのは女将さんでしょうか?聞くのを忘れましたが、ただの案内係ではない感じです。明るくて印象はいいのですが、お茶淹れてあげましょうか?とか、浴衣は違うサイズを持ってきましょうか?とか、「〜いたしますね」と言うべき所を、そんな言い方をします。こちらが一人旅で、気安く話せる感じだったので、他の二人客などの場合では違うのかもしれませんが、どうも基本的なところがなってないと思いました。でも、ぜんぜん悪気のない、いい人であることは分かるのです。あくまでも、向こうは親切のつもりで言っているのです。 |
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食事は部屋ででした。下田の近くだけあって、海のもの中心です。初めに何品か並べられ、後出しが四品くらいあるというタイプですが、今回は、後出しのいくつかはちゃんと時間が経ってから、ごはんも小さい電気釜に入れて、後から持ってきました。食前酒は若女将が作ったという梅酒で、お造りは伊勢海老を中心に五点盛りです。ただし、伊勢海老はかわいらしいもので、五点といっても、一つ一つの数は少ないものでした。メインは、海鮮鍋にイカの摺り流しで、肉は出ず、料理というより、酒の肴っぽいものが多い気がしました。特にこれといった出色のものはありませんが、味は全体的においしいと思います。朝食も部屋です。野菜ジュースが出たので、ふーんと思い、聞いてみたら市販のパックのものだそうです。でも、出ないよりはいいですかね。鯵の開きは今一身がかたかった気がしましたが、湯豆腐にはちゃんと魚も入り、伊勢海老の味噌汁もついていました。そこそこ量はあったと思います。ただ、まずくはないけれど積極的に評価するというところまでは行きません。 |
毎年、この時期になると、なぜか伊豆方面に出かけたくなります。特に観光はしないので、伊豆なら梅雨で雨が降っても構わない、ということが深層心理にあるのかもしれません。そうはいっても、一昨年、去年と快晴だったのですが、ことしはやはり曇りや雨という天気になりました。でも、さすがに傘はほとんど差しませんでした。
初日は東伊豆の伊豆大川 にある「大川温泉ホテル」です。最近はやりのネーミングとは無縁の名前で、築40年くらいの宿を想像させますが、実はできてまだ5年の新しいホテルです。この名前には会長の考えがこめられているということでした。「ホテル」と書きましたが、実際、ここは基本的にホテル形式で、荷物は持ってくれますが、部屋でのお茶出しなどはありません。ただ、迎え菓子はありました。泊まったのは303号室の和洋室です。和洋室と言っても、和室との境は壁などの本格的なものではない、洋室の先に畳敷きの部分が付いているといった感じの和洋室です。したがって、あまり重厚感はありません。和室があることを除いて、全体として典型的なホテルの部屋の造りになっています。ドアを開けると通路のまず右に洗面やバスルーム、シャワートイレが固まって配置され、クローゼットの横を通って、その先のベッドルームに続きます。ドレッサーが左側に配置され、向かいにセミダブルのベッドが置かれています。ベッドルーム自体は8畳大でしょうか。その先に6畳の和室が続き、ベランダには白いイスが二脚とテーブルがあります。海は見えますが、ここは少し山側に入ったところで、眼下に見下ろすという感じではありません。やや遠くに水平線が見え、左手に緑の山、手前には緑の木や家があります。ただ、家は遠いので覗き込みはありません。ホテルだけあって、アメニティは普通の旅館より充実しています。バスタオルは部屋用のもふくめて三枚あり、ポーチにはシャンプーやリンスも入っています。また、タオル地の使い捨てのスリッパが用意され、浴場のスリッパ入れの上にあるマジックで、自分の名前や目印を入れることができます。冷蔵庫には伊豆の湧水だけがガラスポットに用意され、後は自分の持ってきたものを自由に入れることができます。館内には一般の値段と同じ自動販売機もあり、そこで買ってきて入れることもできます。なかなか宿泊客のことを考えた、良心的なシステムだと感じました。今まで行った中でここまでのところはなかったと思います。大いに評価したいところです。 |
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二日目は修善寺から西伊豆の松崎方面へ向かう途中にある船原温泉の「山あいの宿 うえだ」です。ここは秘湯を守る会の宿です。山あいの宿、また秘湯の宿に入っていますがそんなに奥深いところにあるわけではありません。松崎へ向かう道路のバス停で降り、二三分歩くに過ぎません。坂を降り、小川にかけられた小さな橋を渡ると、和風の玄関が見えてきます。着いたのは一時半頃で、玄関は暗く館内はひっそりと静まり返っていて、相当前に着いてしまったかと思ったのですが、ここはインが二時で、着いたのは30分前に過ぎませんでした。宿の人はどうも一人しかいない感じでしたが、さっそく部屋へ案内してくれました。部屋は五月という、玄関を入って右手の端に近い部屋です。ドアを開けるとすぐ冷蔵庫が置かれ、二畳の踏み込みの先には狭い感じの洗面と隣がトイレになっています。主室へのふすまを開けると、10畳の和室、広縁はありませんが、部屋の外に広めの濡れ縁がしつらえられ、籐でできた雰囲気のいい椅子が二つ置かれています。外に出しっぱなしで傷まないのかと気になりましたが、縁を広く取ってあるので、雨などは台風でもこないかぎり吹き込まないそうです。庭は池を中心とした、十分に考えられて造られた庭で、遠くの緑の山をうまく借景として生かしています。この庭と濡れ縁のハーモニーが何ともいえません。ただ、他の部屋も多分そうだとは思いますが、庭へ出ることはできません。部屋には花もちゃんと活けられていました。案内の女性はざっくばらんな感じの人で、荷物は持ってくれませんでしたが、お茶は入れてくれ、話にも付き合ってくれました。部屋で話しているときに庭をうさぎが横切りました。ここではうさぎを飼っていて、子供が生まれてかなりの数になったそうです。池にもアヒルが泳いでいます。池は澄んでいて鯉の姿が良く見えます。ここは浴衣ではなく、帯付きの作務衣といった感じですがズボン部分がゴムではないので、しっかり締めないとすぐだらしなくなってしまいます。 |
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いよいよ3泊目は嵯峨沢館です。二泊目の「うえだ」と嵯峨沢館とは別方向だろうと思っていたのですが、「うえだ」に行くバスに乗ってみると、何とかなり近くまで同じ路線を走ることが分かりました。多分「うえだ」からタクシーで走れば10分もしないで到着することだと思います。ただ、そうとは知らずに、修善寺までの往復のバスのチケットを買ってしまっていたのと、タクシーで11時前に嵯峨沢館に着いても、別に時間を持て余すだけだということで、いったん、修善寺駅に戻り、食事をして改めて嵯峨沢館へ向かうことにしました。とは言っても、修善寺駅近辺には特に観光場所もなく、結局12時半のバスで早めに嵯峨沢館へと向かうことになりました。嵯峨沢館のチェックイン時間は2時半ですので、まあ、一時間ぐらい周辺を散歩すれば入れてくれるだろうと考えたのです。バス停に降り立ったのは一時少し前でしょうか。嵯峨沢館へはバス停の所から川の方へ下って行くのですが、その道を降りていくと旅館の人がこちらへダッシュしてくるではありませんか。すぐに荷物を受け取り、名前を聞いてフロントへ戻っていきました。まだチェックイン時間の一時間半前です。バス便は一時間に二本程度しかなく、バスの到着を気にすることもできますが、バスの時間はルーズですから、チェックイン時間の前からバスを気にしていることは、かなり大変なことです。それとも坂を誰かが降りてくるとチャイムでも鳴る仕掛けがあるのでしょうか。この出迎えにはびっくりしました。ともあれ、玄関で先に待っていたその人に、この辺に散歩するコースはあるでしょうかと、聞くと、もう入れますから、気にしないでどうぞという答えです。待たされることもほとんどなく、あれよあれよという間に部屋へ案内されました。部屋は聞水亭の一階「鶴齢」という部屋でした。案内をしてくれたフロントの女性は若い女性でしたが、落ち着いてお風呂の説明などしてくれ、また、お茶も入れてくれました。身長を細かく聞く浴衣の気づかいもあり、就寝用の寝巻も用意されます。バスタオルは二枚で、ここもタオル地の自分用のスリッパがマジックと共に用意されていました。また、スリッパが一足余分に置かれ、特に説明はありませんでしたが、トイレ用に使うものだと思われます。さらに部屋のキーが二つ用意されているのは「ふきや」と同じです。部屋にはすでに籐が巻かれた冷水ポットが用意され、この冷水ポットは夕食後と朝食後にも取り替えられました。部屋は嵯峨沢館の中では一番狭い部類だと思いますが、ドアを入ると二畳分の板の間の踏み込みがあり、その左手に洗面所、風呂、トイレがあります。洗面所は狭くはないのですが、物を置くスペースはあまりありません。化粧水やヘアームースなどたくさんの整髪料が並べられていました。風呂は小さめですが檜風呂で明かりの入る小窓も付いています。トイレはもちろんシャワートイレです。ただ、このトイレは中に人が入って鍵をかければドアは閉まりますが、人が入っていないとドアは開きっぱなしになります。これは故障しているのではなく、最初からドアのノブがそういう作りになっているのです。何か考えのあってのことかもしれませんが、理由が良く分かりませんでした。板の間の先に8畳の部屋があります。右側に床の間が大きく取られ、もちろん花も活けられています。不思議なのはここは角部屋ではないのに、左側の壁に明り取りの小さな窓があることです。その時はあまり気にせず開けませんでしたが、開けてみればよかったと思います。お風呂にあった小窓にも言えるのですが、もしかすると隣室(ここも聞水亭のはずです)と壁が接しておらず、少し隙間を空けてあるのかもしれません。果たして、そんな凝った造りをするだろうかという気もしますが、そうとしか考えられないのです。その和室の先にカーペットを敷いた5畳大の広縁が続きます。籐を使った椅子が四脚とガラステーブルが置かれ、ひろびろとした感じです。その先にはこの部屋専用の本当に小さな庭が続いていますが、緑が茂り、石が置かれて細い竹筒から水が流れ落ちているという、小さいなりに凝ったものです。サンダルが置かれて庭に出られるようになっていますが、サンダルは一足だけ。それもそうで、一人が出ても、二歩ぐらい歩いたらもう終わりという感じです。 |
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網代温泉の「平鶴」に行ってきました。最初は一人旅で行ってみようと思ったのですが、一人ではダメということだったので、いつか必ずと心に期していたのでした。宿に着いたのは一時前でした。自動ドアを入ると、入り口のスペースをどでかいオートバイが占領しているという、変わった宿です。廊下にも、第一師団とか、紀元○○年などと書かれたカレンダーが掛けてあり、?状態でした。ただ、宿の対応自体はごくごくまともです。チェックインの時間は確認していなかったのですが、とりあえず、入れるか聞いてみようとフロントに行くと、あっさり、部屋の用意はできているからと、案内してもらえました。ただ、案内は若い男性であまり愛想はなく、荷物も持たず部屋の前までの案内でした。正式のチェックイン時間を過ぎていたら、ちゃんとした案内でお茶も淹れてくれるのかもしれませんが、これも分かりません。廊下は殺風景な感じで、フロント前のロビーもそれほどゆとりはありません。外観、館内とも大衆旅館そのものという印象です。部屋は3階の角部屋、302号室で二面に窓があり、その両方の窓から海が見えます。多分、申し込んだのは最低ランクのコースだったと思うのですが、いい部屋に通してもらえた感じで、意外でした。他の部屋は知らないので分かりませんが、もしかするとどの部屋も、景色はいいのかもしれません。ただし、この窓のうちの一面は非常階段が視界に入ってしまい、もう一面は近づくと、遠くからですが海岸からの覗き込みがあります。建物全体は古さを感じさせますが、部屋の内装は新しくしたばかりという感じで、きれいなものでした。部屋は、ドアを開けると特に踏み込みというべきものはなく、土間からほんのすこしの板の間が続き、ふすまを開けると10畳の和室、奥に2畳大の広縁、その横に、広めの洗面台とトイレという造りです。内装は新しいのですが、床の間にはテレビや金庫などが、ずらりと並べられていて、センスは今一でした。もちろん花もありません。トイレはシャワートイレで、部屋風呂はありません。入り口の土間には空の冷蔵庫が置かれていて、フロントに電話で飲み物を頼むか、廊下の自動販売機で買って入れることになります。自動販売機の値段は、缶ビールの大が450円で、ソフトドリンクは150円でした。迎え菓子は「塩蒸し饅頭」と「熱海ごません」の二種類があり、この「塩蒸し饅頭」はなかなかの出来のように思えました。 |
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今回も一泊だったので、なるべく近場の宿という選択で宿泊日のぎりぎりになってしまいました。苦し紛れに近い選択で、宿から割引のサービス券が送られて来ていたのと、前に行ったときの大浴場や露天の印象が良かったこととで、伊東の大和館を再訪することにしました。ただ、前回行ってから六年も経っているので、内容に大分変化があるかとも思いました。 インの時間が3時、アウトが12時という設定ですが、伊東の鮨屋に早めに寄って昼食を取ってしまった関係で、今回も12時50分には宿に到着しました。正規の時間にはかなり早いのですが、ロビーで柚子みつを出され、すぐに部屋に案内されました。部屋は福寿荘という四階建ての建物の209号室で、ここはキーが二つありました。気兼ねなくお風呂に入れるということで、いつもながらキー二つは評価が高いですね。廊下はやや暗く、年季が入っているなという感じがします。以前宿泊したのは、道路を挟んだ向かいがわにある離れのような建物でしたが、今回は庭を囲んだ建物の方でした。部屋のドアを開け中に入ると細長い入り口の左に洗面、洗面の奥にタイルの風呂場があり、入り口の右にはトイレがあります。トイレはシャワートイレで、中に小さな手洗いもついていました。正面に一畳大の踏み込みがあり、上がってふすまを開けると大きな和室が広がります。部屋全体が畳敷きなので、広縁に当たる部分をふくめると14畳の広さがあります。畳敷きですが、窓側の広縁部分には畳用の椅子とテーブルが置かれています。つまり、この部屋は、洗面所、風呂、トイレを含めた全体が長方形という、一般的な部屋の造りという訳です。窓からは中庭が覗けます。ここの建物は中庭を囲んでコの字型に建てられているのですが、この部屋はちょうどコの字の真ん中の、向こう正面に建物の見えない部分に当たります。ただし、窓近くに寄ると左右の建物からの覗き込みはあります。到着時にロビーで柚子みつを出してくれるのですが、部屋でもお茶を出してくれ、迎え菓子として丹朱というお菓子や海老せんべいのようなもの、他に佃煮系の二種のお茶請けが置かれています。浴衣は全サイズが置かれていて、自分に合ったものを選ぶことができます。入った右手に一畳半の幅、奥行きが半畳の床の間があるのですが、花はなく、右の隅にインターフォンが置かれていました。部屋の中自体は、手入れはされていて新しくなっていましたが、風呂などはもともとの古さを感じさせるままです。いつごろの建物なのかは分からないのですが、できた当時はけっこう立派だったのではないかと思わせます。 |
お風呂は大浴場が二つと、大きい方の大浴場に併設された露天風呂、独立した野天岩風呂があります。大浴場の入浴は夜中の二時までで、朝は5時から入浴が可能になります。野天岩風呂は夜の12時までです。すべてのお風呂が深夜を境に男女交替します。初め男性は露天付きの大きな大浴場、女性が野天岩風呂と小さな方の大浴場になっていて、これは六年前と変わりません。大きな方の大浴場は、壁、床、浴槽と全体が木でできている落ち着いたもので、このお風呂が前に泊まったときに気に入ったのです。また湯船も広く20人くらいは入れそうな感じがします。泥炭石鹸、泥炭シャンプー、オレンジシャンプーが置かれていました。この大浴場に比して、小さな方の浴場は確か、窓がなくかなり圧迫感を受けた印象を六年前に持ちました。それで今回はまったく行きませんでしたが、大浴場も変わっていませんでしたから、小さな方もおそらく同じ印象だと思われます。大浴場に併設されている露天風呂は龍神の湯と名付けられ、脱衣所からも大浴場からも外に出ることができます。この露天は見晴らしがまったくないのですが、岩や石灯籠の配置や小屋など全体の雰囲気はなかなかいいものです。以前は、人工の円柱に木の皮を貼ってご神木のように演出していたのですが、それはやりすぎということか、今回はそれはありませんでした。とにかく、ここは造られた露天という感じがするところで、それがいやな人もいるかもしれません。入れるのは6・7人という感じでしょうか。初め女性用の野天岩風呂は外に洗い場がたくさんある造りでここで体を洗えるようになっています。野天ですが、周りを囲まれているのでそれほど寒くはありません。周りを囲まれていると言っても、周りは塀ではなく大きな岩や土で、野天の印象としては天井の開いた穴倉という感じで、かえって落ち着いた気持ちになります。お湯に関してはすべて、無味無臭と言う感じで、湯の花もありません。館内に源泉流しきりという内容の表示があります。湯上りどころに冷水もありました。 |
今回のプランは炭火焼会席プランということで、食事処は炭火焼専門の,すべて個室のところです。ただ、それほど高級感漂うという感じのところではありません。お品書きはあり、説明もあります。炭火焼のメインは牛、伊勢海老、鮑のうちの一つを選べるということで鮑を選択しました。食前酒も「みかん」「うめ」「やまもも」の三種から選べ、やまもも酒を選択しました。変わっているのは前菜にフランスパンの薄切りが出て、それにガーリック、明太子、きのこの三種類のバターを塗って食べることでしょうか。焼き物の素材は選択した鮑のほかに、鱚、しいたけ、厚揚げ、じゃがいも、太刀魚、茄子、ふぐなどです。その他に刺身の五点盛り、地鶏のつみれ鍋、丸茄子の揚げ出しなどが出されました。途中でお口直しのシャーベットも出されます。ご飯は塩昆布の茶漬でした。全体的においしいのですが、特筆すべきものというものはない感じです。デザートは果物とプチケーキのバイキングになります。ただしそれぞれ、五種類ぐらいしかありません。多分なくなると補充はないのではという気がします。だから、食事は早めの時間にしたほうがいいかも知れないですね。ケーキはどれも今ひとつの印象です。炭火焼に関しては鮑だけは焼いてくれたのですが、後は自分たちで焼くことになります。慣れないとなかなかちょうどいい具合に焼けません。したがって、素材のおいしさをすべて引き出せるかは、我々の側にかかってきます。これは朝の焼き魚でも同様です。 朝食は昨晩と同じ部屋でした。ここでも、焼き魚が、金目鯛、鯵、えぼ鯛?から一つ選べます。朝食もやはり炭火でその魚やベーコンを焼きます。その他、マグロの山掛け、しらすおろし、塩辛という三点セットとポテトサラダ、海老の味噌汁、湯豆腐に茶碗蒸しという納得できるラインナップで、味も悪くなく満足できます。ただ、やはりジュースとデザートはありませんでした。 今回はサービス券を利用したのですが、利用しなくても料金に対して大体納得できる内容だと思います。廊下はあまり手が入れられていない感じで、けっこう古びてしまった印象を受けますが、部屋はよく手入れされています。建物全体や廊下は6年前よりもやはりその年月の分、古くなったということでしょうか。6年前と比べて、プランの違いもあり食事の内容は全然違っていましたが、大体満足できるということ自体は変わっていませんでした。お風呂もそのままで変わっていません。やはり、あの木の大浴場は好きですね。特にこれといった特徴のある宿ではありませんが、値段相応の満足度は得られる宿だと思います。 |
浮山温泉「坐漁荘」へ行ってきました。ここについては、特にだれからの情報というわけではないのですが、何となくあまり良いイメージを持っていませんでした。料金が高めのこともあり、ほとんど行く気はなかったのですが、たまたま今回の日本の宿キャンペーンの中に入っていたので、行って自分の目で確かめてくることにしたのでした。行くからには本当はここも連泊したかったのですが、二泊目は満室ということで一泊になりました・ 最寄り駅の伊豆高原へ迎えに来てくれるということでしたが、送迎の経路の途中にあるオルゴール館に寄ったため、そこで拾ってもらうことにしました。ただ、列車の時刻に合わせて駅に到着している送迎車に乗ってほしいということで、電話してからオルゴール館で30分ほど待たされ、宿に向かいました。送迎車の中での案内で初めて知ったのですが、坐漁荘はどうやら別荘地の中に建っている旅館らしいのです。静かな別荘地の中をしばらく走り、庭先に大きなヤマモモの木のある建物のところで送迎車は停まりました。本当は2時がインの時間なのですが、結局、2時半ごろの到着になりました。乗っていたのは四組くらいの客で、それぞれロビーへと案内されました。ロビーには女将らしき貫禄のある女性が、あれこれと客に話しかけ、従業員の対応に目を配っていました。この宿の名物であるヤマモモの実を模したかわいらしいお菓子と抹茶をいただき、サービスの記念写真を撮ってもらったあと、順番に部屋へと案内されます。インに関してのこの流れは、かなり仰々しい感じの迎え振りで、こういうもてなし方をされることが大好きな女性にはたまらないでしょうが、さっさとチェックインして部屋でくつろぎたい人にはわずらわしいことでしょう。ぼくはこんな感じも決して嫌いではないので、女将さんとのやりとりなど楽しみましたが、客にもいろいろあり、宿のもてなしとしては難しいところだなと思いました。 案内されたのは、南館208号室の「雲居」という部屋でした。廊下に面した格子の引き戸を開け、一歩入って今度は右手のドアを開けます。引き戸とドアに90度の角度がついていますので、食事の配膳のときなどにドアを開け放しても、廊下から部屋の中を見通されず、なかなかいい工夫だと感じました。ドアを入ると左に二畳の踏み込みがあり、その畳の踏み込みには上がらず、そこに置かれている冷蔵庫の前の板の間を上がってまっすぐ行くと洗面所に入ります。洗面の左手に浴室があり、浴室には桧の湯船が半分埋め込まれる形になって置かれていました。この浴室には明かり取りの大きめの窓もあり、また最大の特徴は天井が高く、天井に湯小屋のような、湯気抜きの窓があることで、その高さは、大分感じは違いますが、草津の白旗の湯を連想させました。この部屋風呂のお湯は温泉だそうで、それも含めて、この浴室は高く評価したいと思います。入り口に戻り、畳の踏み込みを上がった右がトイレで、これはシャワートイレでした。踏み込みの襖を開けると、10畳の和室になっています。テレビや金庫、インタ−フォンなどの棚はすべて壁に埋め込まれている形で、わずかに鏡台だけが、右手前に置かれています。左手には立派な床柱のついた床の間があり、もちろん、花は活けられていました。和室の先がそのまま広縁になり、全部で5畳程度の広さでしょうか。広縁の左半分に掘り炬燵が置かれ、右半分が少し低くなって、絨毯の上に籐の立派な椅子が二脚、並んで掘り炬燵の方を向いています。窓はサッシのない全面ガラスで、林や庭、遠くにかすかですが水平線が眺めらます。覗き込みはありません。角部屋ではないのに部屋の右側の壁にも窓があり、開けると、隣の部屋の窓がすぐ近くに見えます。つまり、部屋同士が壁を接しているのではなく、それぞれに独立した感じを持たせるという、凝った造りになっているのです。全体的に非常にいい部屋なのですが、唯一、畳が古びていたのがいただけませんでした。部屋係りの仲居さんは割とツンとした感じの人で、こういった高級旅館によくあるタイプのお高い感じの人のような気がしました。ただ、何回か話してみるとそうでもなく、悪気はなさそうです。浴衣の気遣いはあるらしいのですが、一般的なサイズしか部屋になかったので、違うサイズを持ってきて欲しいとフロントに電話すると、先ほどの仲居さんが来て、ぼくの身長を確認し、だったらやはりそのサイズで大丈夫ですといいます。着てみたら、ぴったりでした。一般的なサイズでぴったりだったのは初めてです。浴衣については、夕食後にお召し替えが出されます。また、その時にバスタオルが追加されるだけでなく、持ち帰れる普通のタオルも追加されます。普通のタオルが二枚付くのは初めてだった気がします。ただ、アメニティの足袋には「御貸し足袋」と書かれていて、これは置いてきました。足袋を返すのもあまりなかった気がします。ロビーで抹茶とヤマモモの実を模したお菓子をいただくのですが、さらに部屋へ入ってまず水羊羹が出され、しばらくすると栗を使ったお菓子が運ばれてきます。こちらの方は湯上りのお菓子ということのようです。 |
お風呂は大浴場が二つ、露天が四つあり、大浴場は清掃時間を除く24時間OKで、露天風呂はすべて朝6時〜夜10時までになっています。すべてのお風呂が夜中に男女交代します。大浴場は最初男性用は木の浴槽、女性用は石の浴槽でそれぞれ22室という部屋数の割にはけっこう広いと思いました。ただし、脱衣所はそれほど広くなく、旅館によっては脱衣所にお金をかけているという印象を与えるところもありますが、ここはそうでもありません。露天風呂は、天上露天風呂と呼ばれるものが男女別に二つ、庭園露天風呂と呼ばれるものが最初は女性、風穴露天風呂と呼ばれるものが最初男性になっています。天上露天風呂は見晴らしがきき、開放感は抜群なのですが、いかんせん狭いというのが最大の難点です。脱衣かごは三人分あるのですが、二人でどうにかというところで、無理すれば三人は入れるかなという感じです。それぞれ桧と桶の湯船で、桧の方からは海が見えます。この狭ささえなんとかなれば、なかなか好きな露天なのですが・・ 風穴露天風呂は大浴場の外の脇の階段を下りていくもので、木が頭上をうっそうとおおっていて暗い感じですが、人によっては雰囲気があると感じるかもしれません。庭園露天風呂は空と木とのバランスがとれているのですが、それだけ、そんなにインパクトはないかもしれません。露天のいくつかが、夜の10時以降は有料の家族風呂になります。この点に関しては疑問ですね。それぞれ部屋のお風呂が温泉なのですから、有料の家族風呂にするより、露天も普通に24時間開放して欲しいと思います。お風呂は、循環、流しきりかどうかはよく分かりませんでしたが、塩素臭はまったくしません。湯の花はなく、無味、無臭で、全体的に適温だったと思います。湯上りどころに、冷水機があり、また、時間によっては人がいてお茶をいれてくれます。ここは無料エステと称して、女性客に大浴場の脱衣所で無料でエステを施してくれるらしいのですが、ただほど・・ということでどうも目的は美容液などの販売らしいのです。しかもそれを大浴場の脱衣所の洗面の椅子のところでするらしく、それでなくても数の少ない洗面台がそれで占領されてしまい、女房は、髪を洗ってもドライヤーで座って乾かすところがなく、露天に行って乾かしてきたと言っていました。仲居さんにこの点が高級旅館にはふさわしくないと言うと、仲居さんも「私もそう思う」という内容のことを言ったということです。僕自身が体験したことではなく女房から話を聞いた聞き書きなので、もしかすると正確でない点があるかもしれませんが、この点はひどいと思いました。 |
食事は各部屋での食事でした。テーブルには白いテーブルクロスが敷かれ、白いテーブルクロスの法則を久しぶりに思い出しました。お品書きはありますが、説明はほとんどなしです。最初に前菜と先付けと食前酒で、あとは一品ずつという基本的な形です。食前酒はヤマモモ酒です。先付けは鮑とうるいと白子の梅肉あえ、前菜はサザエの器の中に辛子味噌あえのものが、蛤の貝殻には明太子あえの珍味が収められたものなのですが、前菜も先付けもいずれも和え物で、あまり変化がないという印象でした。椀盛は海老の進丈。お造りがマグロ、イカ、海老など五品ぐらいを少しずつ盛り合わせたもので、このお造りはいずれも新鮮でおいしいものです。中皿が洋皿風で、平貝や青柳、蟹を雲丹クリームソースで食べさせるものですが、クリームソース好きのぼくには献立の中で一番おいしく感じられました。テーブルで火を使うものが帆立貝や白菜、白子の鍋で、全体としてあっさりした味付けです。蓋ものとして甘鯛と桜ご飯の蒸し物が出され、さらに、遊鉢と称する三枚肉の煮物で、これは肉自体は非常に柔らかいのですが、一つの料理としてのおいしさは今ひとつで、インパクトに欠けました。最後の留鉢は若布や小ねぎの酢の物、ご飯はあさりやわらびの炊き込みご飯でした。デザートはパパイヤとイチゴに桜香ムースの組み合わせです。全体的にいいとは思いますが、特にとびぬけたものはなく、また料理だけでも食べに来たいというものではありませんでした。そういう意味では、白いテーブルクロスの法則は今回も外れたというところでした。料理を運んでくるペースはちょうどよく、快適に食事をすることができましたが、ただ、終わった後の片づけがかなり遅くなりました。最近は食後一眠りしてからお風呂に入りに行くということがなくなったので、ゆっくりと休んでいましたが、以前だったらかなりいらいらとしたと思います。 朝食も部屋で、やはり白いテーブルクロスが敷かれました。その前に、目覚めのお菓子ということで、干し柿を材料にしたお菓子とお茶が出されました。朝食は、何もつけず、そのまま食べてもおいしい豆腐。ふんわりとした卵焼き。サラダ。大根とがんもどきの煮物、しらすとほうれん草のお浸し、白身の魚の刺身とイカの塩辛、鯵の干物、ワタリガニの味噌汁、オレンジジュース、オレンジとイチゴのムースというラインナップで、デザートとジュースもしっかり出されていました。全体的にバランスのとれた大変おいしい朝食です。夕食に比べ、ほとんど言うことがなく、これは完全にテーブルクロスの法則にかなっていました。 ここは、とおりいっぺんのアンケートではなく、女将からのアンケートが細かい項目にわたっていて、宿をよくしようという姿勢は感じられます。女将自身もまたチェックアウトの時に気をつかって、それぞれの客に声を掛けては、黒豆茶とお菓子を勧めていました。ただ、書いたように女性の大浴場で無料のエステと称して、美容液などの営業をしている点、また、夜の10時以降は露天が有料の貸し切りになる点などが大きく減点となるでしょう。お菓子に関してはロビーでの迎え菓子、部屋での迎え菓子、風呂上りのお菓子、目覚めのお菓子、送りのお菓子と五種類も出るのは、素晴らしいと言えば素晴らしいのですが、何とも感じず食べない人もけっこういるかもしれません。部屋の仲居さんは最初つんとした感じでしたが、全体的に従業員の態度もよく、女性に人気の宿である条件は十分に備えています。夕食はもう一つ突き抜けたところが欲しい気がしたのですが、朝食の完成度は申し分ありません。部屋も畳が少し古かったものの、部屋風呂や隣室との境など、よく作られています。長所もあるが短所もあり、女将に対する好き嫌いも分かれそうなど、その人の趣味や考え方によって、良い悪いの評価が大きく分かれる宿ではないかという気がします。ただ、ぼくにとっては何故か気になる宿ですね。 |
坐漁荘の連泊に振られてしまったぼくは、はたと困りましたが、日本の宿キャンペーン旅館の中に、日経の「新日本100名湯」?の「熱海」編で取り上げられていた旅館があるのに気づき、念のためHPで調べてみると、そこはけっこう多くの雑誌の取材を受けている旅館であることがわかりました。熱海というと少し二の足を踏んでしまうのですが、一応そこに行ってみることにしました。名前を古屋旅館という、熱海では一番の老舗の旅館のようです。駅で電話して場所を聞くと、一度行ったことのある大月ホテルの近くということでした。まあ分かるだろうとしばらく歩いて、そろそろ海岸の方へ降りようかと、海岸への近道という表示のところを入っていくと、その道の途中に古屋旅館の看板が見えました。現在の古屋旅館のシンボルは大きくて立派な門なのですが、この門は歴史的に由緒のある門という訳ではなく、黒澤明の映画、「影武者」のセットとして使われた門だそうです。セットとはいえ立派なもので、見るからにこの宿に幸運をもたらしそうな印象を与える堂々とした門です。宿に荷物を預け、一度昼食に出て、戻ってきたのは正規のチェックイン時間である二時の少し前でしたが、すぐに案内してくれました。泊まった部屋は313号室ですが、この部屋はフロントに一番近い部屋で、宿の玄関を入った正面の、大きな花が活けられた柱のすぐ後ろにある部屋なのでした。ふつうは、ご案内しますと言われて、宿の廊下を歩きながらどんな部屋だろうと胸をふくらませるのも旅館に泊まる醍醐味の一つだと思うのですが、それが全くなく、「ご案内します」、「こちらです」、「は」?という感じで終わってしまいました。ドアを開け、広目の入り口から一畳半の踏み込みに上がり、すぐ正面がトイレで、シャワートイレです。踏み込みの左側が洗面所で広めに取られていて、さらに洗面の先の突き当たりが風呂で、ごくふつうのタイプの浴室です。ここは温泉ではないそうです。トイレの隣の襖を開けると、12.5畳の和室に入ります。ぱっと見た目はがらんとして殺風景という印象です。広い空間なのですが、部屋の造作がごくごく当たり前で、工夫というものがまったく感じられず、従って、趣、風情というものが出てきません。襖を開けた左側にインターホンなどを置く棚があり、L字型に曲がって、部屋の左側が床の間と、さらに仕切られてテレビのための棚になっています。物を置く空間はたっぷり取られていて、ゆとりがあるのですが、ゆとりというよりも、ガランとした印象になってしまいます。部屋の正面に5畳大の広縁があり、椅子が二脚と大き目のテーブルが置かれています。窓の障子を開けるとちょっとした庭をはさんで正面には廃墟のようなコンクリートのビルや新しい高層のマンションなどが立ち並び、すべて背中をこちらに向けているので、メインの大きな窓というのはないのですが、覗こうと思えば覗かれ放題という感じです。ビルとビルの隙間から、ほんの少しだけ海が覗けるというだけです。窓は大きく明るいのですが、そういった状況ですのでほとんど障子は閉めた状態でした。案内時のお茶出しや、浴衣の気づかいはあり、迎え菓子は最中の一種というようなものでした |
お風呂は男女別に大浴場と併設の露天風呂があり、男女の交代はなく、清掃時間をのぞいて24時間入ることができます。大浴場も脱衣所も特にお金をかけているという感じもせず、ごくごく普通の感じでした。大浴場は木の浴槽で落ち着ける感じがしました。湯船の縁からお湯が流れ出していて、流しきりです。部屋の案内にこの温泉のしくみについての案内が書かれたものがあり、このお湯は清左衛門の湯と呼ばれる、熱海の源泉の中でも古いもののようです。なめてみるとややしょっぱい感じで、その他にはとくに特徴は感じられませんでしたが、そんないわれを聞いていたせいか、温度もちょうどよく、ゆっくりとあたたまることができたこともあり、なかなかいいお湯のように感じました。露天は大浴場から出る形の岩風呂です。周りをぐるりと高い塀で囲まれているのですが、まだそれでも覗かれ放題という感じです。大浴場よりやや熱めで、大浴場がゆっくりできるので、あまり露天にいる意味が感じられないというタイプのものでした。脱衣所に冷水機がありました。 |
ここも朝夕とも食事は部屋でした。夕食はお品書きがありましたが、説明はありませんでした。食前酒はいちご酒で、まず食前酒と先付け、前菜、酢の物が並べられ、あとから一品ずつ運ばれる形です。先付けは、豆乳湯葉豆腐という茶碗蒸しのような感じのもので、前菜は姫さざえを中心としたものと生ハム寿司を中心にしたもの、そして、木の芽和えというように三種の器で構成されています。生ハム寿司はそうと言われなければ分からないほど、寿司としてなじんでいておいしいものでした。続いてお造りは雲丹、マグロ、甘海老など五種の盛り合わせ、さらに煮物として運ばれてきたアナゴの茄子巻が絶品でした。続いての中皿がすき焼きで、何牛かは仲居さんに聞いても分からなかったのですが、いい肉であることは確かでとてもおいしいものです。お凌ぎのかき玉うどんも言うことなしで、さらに海老真丈包み揚げも絶品です。最後のご飯は筍の炊き込みご飯でした。デザートは苺ババロアにホイップクリームをかけたもので、これはごく普通と言ったところで、いつもながら和食のデザートに一工夫欲しいと思ってしまいます。この宿はHPで特に料理に自信があるようなことを書いていた記憶があるのですが、確かに夕食の評価は高いものでした。 朝食の魚は鰆の照り焼きでした。蛍烏賊の刺身もあり、それに海苔の佃煮、山葵漬け、かまぼこ、卵焼き、などちょっとしたおかずの八点盛りが夕食の前菜のように並べられていて、その中にデザート用でしょうか、小さな和菓子もありました。その他、茶碗蒸し、お麩と野菜と練り物の鍋、海藻のお浸し、海苔、という組み合わせでした。完成度としては夕食の方がより高いものでしたが、それでもこの朝食のレベルも高いといえます。日経の記事の中では朝食は三本の指に入るという内容のことが書かれていたと記憶していますが、この時のぼくの印象では、それはちょっと大げさかなと思いました。前日の坐漁荘と比べても朝食は坐漁荘の方が勝っていた気がします。それでもレベルの高いおいしいものであることは確かです。 ここは前日の坐漁荘と比べて、非常に対照的な宿という印象を受けました。坐漁荘が「気配り、女性好みの宿」であるなら、ここは「そっけない、女性に好かれそうもない宿」というところでしょうか。映画の「影武者」に使われた立派な門をくぐって、熱海の中でも最も古い旅館に到着となるわけですが、特に昔ながらの木造の立派な構えというわけでもなく、少し古びた鉄筋の建物だし、玄関から入った第一印象はごく中くらいの旅館という感じです。派手なところもなくおもてなしの宿という感じもしません。部屋もただ広いだけで、部屋に対する感激もなく、窓の外は廃屋のような旅館の背面なので眺めに癒されるというところもありません。お湯が熱海のもともとの源泉であること、食事がおいしいことの二点だけが売りの旅館と言っていいでしょう。ただ、フロントの人に聞くと、常連が非常に多くて熱海の観光客が減っているということもこの旅館には全く関係なく、同じように客が来ているとのことでした。確かに、女性に人気の細やかな気配りの宿ということはまったくないので、逆に泊まる方も全然気を遣わず、単に温泉と食事を楽しみにくるにはいい宿かもしれないという気もします。ただし、それにしては料金は高めですから、このぐらいの料金でも全然気にならないという客層に限っての話ですが。 |
第三次「日本の宿」の旅ということで、今回は「運龍」に行ってきました。「運龍」は前から行きたかった宿なのですが、なかなかいい機会がなく今回のキャンペーン企画を千載一遇の好機とばかりに行くことにしました。 伊豆急の河津駅に送迎の車が来てくれ、そこから20分位で宿に着くことができます。チェックインの時間が一時というかなり早い設定になっていて、我々が宿に着いたのも大体そのくらいの時間でした。すぐに部屋に案内してくれた案内係はにこやかな感じの女性でした。案内された部屋は216号室の「萱草弐(かんぞうに)」という部屋で、萱草というブロックの弐番目の部屋という意味です。運龍は全部で22室あり、中庭の庭園を囲む形にぐるりと建物が配されています。案内された「萱草弐」の廊下の外の裏庭には作業場があり、自家製の塩や炭を作っているという、また、さらにその背後の山全体がこの宿のもので、頂上までの道が歩きやすく整備されているというスケールの大きな旅館です。さて、引き戸を開けて部屋に入ると、まず踏み込みが広目の板張りのスペースになっており、玄関に沿った形で隣にトイレがあります。これは壁に操作パネルが埋め込まれた型の乾燥つきシャワートイレという立派なものでした。踏み込みの板の間を上がってまっすぐ行くと洗面室に入ります。ただし洗面台は狭目で、その先が部屋風呂になっています。この部屋風呂も狭目ですが、壁や浴槽などがすべて伊豆石で作られていて、しかもお湯は温泉という見逃せないものでした。風呂場の窓からはこの旅館の向こうの建物の屋根が見え、洗面室のドアを開け放せば、入り口から風呂場まで見通せる造りです。板の間に上がって右の襖を開けると四畳半の次の間があり、その先の襖を開けると十畳の主室があります。次の間と主室はつながっていて、主室の窓に向かって右側に床の間があり、もちろん花は活けられていました。ただ、床の間にはランプと蚊取り線香が乗っていたのが残念でした。しかも、この二つは結局使わないものでした。反対の左側がテレビや小物が乗る棚になっていました。金庫は暗証番号式の小さなものが四つあるしっかりしたタイプのものです。この部屋には広縁はないのですが、窓を開けるとコンクリートのベランダが一段低く造られていて、その上に部屋からそのまま出られるように木でできた舞台のようなものが張り出した形で作られています。色のあせた籐の安楽椅子が一脚置かれ、くつろげるように配慮されているのですが、一つなので、二人で会話を楽しみながらくつろぐことはできないのが残念です。池を中心とした中庭には多くの小鳥がやってきて、さえずりを聞かせてくれ、その向こうにはなだらかな山の景色が広がります。窓の方に来ると、回廊からの覗き込みがありますが、このタイプの部屋としては覗き込みは少ない方かもしれません。申し分のない部屋なのですが、ここも先日の坐漁荘同様、やや畳が古びていたのが唯一の難点といえます。浴衣と作務衣の両方が用意され、サイズの気づかいもあるのですが、翌日ぼくの方のサイズの申し送りはあったものの、妻のはサイズが変わっていました。迎え菓子は初日が塩羊羹、二日目は何という和菓子かよく分からないのですが、小豆を使ったものでいずれもおいしいと思います。部屋のタオルは新しいもののようですが、むき出しで置かれているため、持ち帰っていいのものかどうかが分かりません。また、部屋には夏みかんサワー(と言っても、アルコール分はありません)という瓶入りの飲み物が一本ずつ無料で冷蔵庫に用意されていて、湯上りに飲むとさっぱりしておいしいものでした。 |
お風呂は内湯が二つに、内湯に併設された露天がそれぞれにあり、さらにその一つの内湯から河原に下ったところに河原の湯という露天があります。また、それとは別に渡り廊下を渡ったところに「動の湯」と「静の湯」という露天が設けられています。基本的に24時間OKで、夜の9時に男女の交代があり、すべてのお風呂に入ることができます。ただ、渡り廊下を渡った露天は夜の8時以降は貸し切り専用の家族風呂になるようです。この家族風呂は坐漁荘とちがって無料です。お風呂は全体的にやや熱めだと思いますが熱すぎるということはありません。唯一の例外は「動の湯」にある釜風呂でここは温めでした。どのお風呂にもバスタオル・フェイスタオルの両方とも備えてあり、何も持たずにお風呂に入りに行くことができます。最初の男性用は桧風呂です。ここは内湯も外の露天も4・5人という程度で、小さ目でぱっとしませんが、最初女性用の伊豆石を使った石風呂は内湯も露天も広々としていていい感じです。桧風呂も石風呂もつぶ塩、炭シャンプー、オレンジシャンプーが揃っていました。露天は最初男性用の方は内湯の外に張り出した感じで特に特徴はないのですが、最初女性用はまず内湯の外に湯船が二つあり、さらにそこからしばらく下りた川のそばに河原の湯という非常に雰囲気のある露天があります。この露天は小屋形式で天井や壁に囲まれ、露天としての開放感はないのですが、暗いところに光の差し込む感じが何とも言えず、小屋のしっかりした造りとも相まって、かなり気に入りました。ただ、仲居さんに言わせると男性には非常に評判はいいものの、女性にはあまりよくないということでした。多分、暗い感じが不気味さに通じることと、開放的でないために、どこかにだれかが隠れているのではないかという不安感を覚えるからではないでしょうか。また、この河原の湯に下りるためには、裸でしばらく歩かなければならないということもあるかもしれません。仲居さんはタオルを巻いて行くようにと言っていましたが、確かに、気づいてみるとこの道は、静の湯・動の湯に行く渡り廊下から覗けるのでした。 その渡り廊下を渡っていく静の湯は初めは女性、動の湯は初め男性に割り当てられています。それぞれ木に囲まれ、寺院のような太い柱と高い屋根を持つ立派なお風呂です。動の湯には釜風呂という薄暗い風呂も作られ、中に打たせ湯が一本落ちていました。ただ、動の湯も静の湯も木々に囲まれ、決して悪くない雰囲気なのですが、河原の湯に比べてゆっくりできる感じはあまりしませんでした。また、それぞれの脱衣所から別の入り口に入ると混浴のジャグジーにも通じるという面白い造りになっています。 部屋の案内にはすべてのお湯が源泉100%とあります。ただ、温泉の分析表はどこにもなかったように記憶しています。流しきりかどうかは不明ですが、塩素臭はしません。最初女性用の石の湯は湯船からお湯があふれており、河原の湯もお湯が流れ出していました。桧の湯と石の湯のそれぞれの脱衣所にウオータークーラーがあり、のどの渇きをいやすことができますが、やはり脱衣所にあることと、足踏み式のウオータークーラーであることは評価できません。 |
二階の部屋はすべて部屋出しの食事になるそうです。テーブルにはグレーがかった白いテーブルクロスがかけられましたが、最近、テーブルクロスの法則もちょっとあてになりません。仲居さんに聞くと、今晩が一般的なメニューとのことで、宛名と今日の日付入りのお品書きが置かれました。ただ、説明はなく、淡々と置いていく感じでした。最初に置かれた食前酒の梅酒は、今までにないかなり濃厚な味で、これはご主人が作っているとのことでした。その他に、付き出しの蚕豆と胡桃の白和え。それから、エスカルゴ、あまごのみそ焼き、大柱もずく、地鶏わさび、姫人参と蕗味噌という前菜の五種盛り合わせ。白魚の椀物に小ぶりな山葵がそれぞれ一本ずつ添えられた鮪、海老、帆立など五点盛りのお造り。以上がすでに最初からテーブルに並べられ、その後で一品ずつという流れになっていました。それぞれがおいしいものですが、その後に出た、蓋物の雲丹と海老進丈のポテトケースふかひれ餡は絶品でした。台のものは和牛の瓦焼きだったのですが、おいしいけれど肉が小さすぎました。妻は肉が「付箋」みたいだと言っていました。凌ぎの竹炭うどんはいくらおろしとのマッチングがとてもいいおいしいものでした。最後に鮑の酒蒸しが出ましたが、これはあまり印象に残りませんでした。品数が少なく、あと二品はほしい感じでした。ただ、最後のご飯が山菜おこわなので、ご飯で満腹になる感じはあります。また、ご飯と一緒に出された味噌汁の具が胡麻豆腐というのは珍しい組み合わせでした。デザートはスイカとアイスクリームで、アイスクリームは塩か竹炭かを選べます。妻と半分ずつ食べてみましたが、塩はからくて甘さも強い感じがするのに対して。炭はまろやかです。ぼくは炭をお勧めします。 二日目の夕食も同じ部屋食です。二日目は連泊用のメニューなのですが、二日目もやはり宛名と日付が入ったお品書きが付きました。昨日と同様、テーブルクロスがかかり、係りの仲居さんも同じ人でした。食前酒の濃厚な梅酒は昨日と変わらずで、テーブルには、大皿に雲丹、伊勢海老、鯵など、お造りの五点が盛られ、同じ五点盛りでもこれは昨日よりはボリュームがある感じがします。さらに突き出しののれそれ(あなごの稚魚)の酢の物、吸い物の鱧の吉野打ちが最初に並べられています。いわゆる前菜というものがないことと、懐石盆に載せられず、食器のままテーブルに置かれているのが昨日と違う点で、のれそれの容器もお椀も小さなものなので、刺身皿が大きいとはいえ、見た目が非常に淋しい感じです。次に運ばれるまで間があったので、しばらくこの淋しい感じは続きました。やっと、蓋物として百合根の五色饅頭と言ういろどりの華やかなものが運ばれてきました。食べてみても非常においしく、これは気に入りました。また、間があり、台の物として、タラバガニの足、伊勢海老、サザエ、海老芋、しし唐に蕗味噌をつけたもの、米茄子の木の芽田楽、これらのものを運龍自家製の塩をひいた焙烙に並べて焼いたものが運ばれてきました。これは全体的にかなりボリュームのあるもので、最初お品書きを見たときは、品数がすくなそうだなと感じていたのですが、ここがポイントだったのかと納得できました。味もそれぞれの素材の風味が生きたおいしいものでした。続いては青柳が三枚形よく並んだ酢の物で、ちょっと印象が薄いものです。そして最後に雲丹の茶碗蒸し。これは茶碗蒸しの底の方に雲丹が入っているもので、茶碗蒸し自体の味と雲丹の甘さが渾然一体となった絶品でした。ご飯は昨日と同様炊き込みのおこわで、具は昨日とは違い、桜海老でした。この日は焙烙焼きでかなりお腹がいっぱいになったので、ボリュームの面での不満はなかったのですが、やはり品数としてはもう少し欲しかった気がしました。デザートはマンゴスチンとパイナップルで、久々にマンゴスチンを食べましたが、やはりマンゴスチンはおいしいですね。この日はアイスクリームがなかったのが残念でした。結局、今回もテーブルクロスの法則は完璧な当たりとは言えないようです。 朝食も一日目・二日目とも部屋でした。朝食はテーブルクロスは敷かれませんでした。一日目は焼き魚の金目鯛の切り身と、浅利の味噌汁。生ハムサラダ、出汁巻き卵、イカの刺身。このイカの刺身はおいしいものでした。茶碗蒸しのような感じの豆腐、海苔、山葵の茎の酢漬けはさっぱりしています。その他、写真を見ても思い出せないものが一品、デザートはマーコットというみかんのようなものでした。全体的にバランスのとれているとてもおいしい朝食だったと言えます。二日目の朝食は、カサゴの開きの焼き魚で、これはおいしいのですが、焼きすぎたせいか、少しぱさついている感じになってしまいました。でも、カサゴはやはり揚げ物が一番かなという気がします。鮪の中落ちがアイスクリームのように丸くなって器に盛られていて、もちろん、これはおいしいものでした。サラダはスモークサーモンのサラダに変わって、味噌汁は伊勢海老です。その他に、出汁巻き卵(これは前日のものと変わらない気がしました)、海苔の佃煮、湯豆腐、こごみの入った蒸し物、海苔、デザートは皮の部分を切り取ってあるオレンジ。前日同様にかなりおいしい朝食でした。刺身が鮪の中落ちになった分、昨日よりレベルアップしていると思うのですが、焼き魚は昨日の方がよかった気がしました。 この運龍のある大滝温泉は近くに七滝があり、自然にめぐまれています。庭や露天の近くに鳥がよく来るのもうれしいものです。のどかな山容や陽光うららかな感じは、黒川の中心街ではない方、たとえば黒川荘や方向はまったく逆ですが山みず木あたりの感じによく似ている気がしました。だから、地域全体の取り組み次第ではかなり人気が出る温泉地なのではないかと思います。また、運龍に関しては、1時チェックインというのは、ぼくのようにとにかく早く宿に着いてゆっくりしたいと考える者にとっては非常にいいと思います。お風呂も充実しているし、男性の従業員の教育はしっかりできているように感じました。また、布団はかなりいいものを使っていて、ちゃんと布団カバーごと代えてくれ、部屋の花も、床の間だけでなく、トイレの前の飾り棚の小さな花も二日目は代えられるなど、全体的に満足度は高いと思います。ただ、それは今回のキャンペーン企画の料金に対してで、通常のもっと高い料金ではどうでしょうか。たとえば、最初着ようとした部屋の作務衣に左右とも紐がついていなかったり、アメニティポーチはフロントで渡されるのですが、二日目は洗面台の上の籐のかごに中身が入っているだけでポーチがなかったり(たとえば、黒川荘は一日目と二日目とではポーチ自体が違います)、書いたように、食事の一日目はちょっと物足りず、二日目はおなか一杯にはなるが、品数が少ないのが難点だったり、脱衣所のウオータークーラーに気配りが感じられなかったりと、気にかかるところもけっこうありました。これらの欠点が少なくなるように努力することと、黒川荘とは一万円程度の開きがある、普段の料金をもっと近づけることができたら、黒川荘並みの人気旅館になることと思います。とにかく、裏山を所有し、その登山道を整備して花を育て、自前で炭を焼き、塩を作るというスケールの大きな宿です。また、ここのご主人は自分で作業服を着て作業をするのが好きということで、この点も黒川荘のご主人と似ているようです。よりいい旅館にするための一段の努力を期待したいと思います。ということで、やはり中伊豆の旅館としては外せない宿です。 |
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